PT・OT 臨床につながる物理学

PT・OT 臨床につながる物理学

  • 望月 久,棚橋信雄/著
  • 2022年07月21日発行
  • B5判
  • 264ページ
  • ISBN 978-4-7581-0260-5
  • 定価:3,300円(本体3,000円+税)
  • 在庫:あり
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学習内容
  • 臨床における位置・変位・速度・加速度の測定
  • 関節の運動と極座標による運動の表し方

身体運動における位置・変位・速度・加速度の測定

臨床における身体の位置や運動の表し方

身体の位置や運動も座標を用いて表す.身体は大きさをもっており,頭部,頸部,体幹,上肢,下肢などの身体部位(体節)に分けられる.身体の運動を表すときは,身体の特定の点※1を決め,その特定の点が空間座標の中でどのように運動するかという視点と,身体部位の相対的な位置関係が時間とともにどのように変化していくかという2つの視点がある.

身体部位の運動は, 前額 ぜんがく 面, 矢状 しじょう 面,水平面の互いに垂直に交わる3つの平面の運動に分けて表すことが多い.前額面は鉛直方向に身体を前後に分ける面で,前または後から身体を観察する.矢状面は鉛直方向に身体を左右に分ける面で,横方向から身体を観察する.水平面は鉛直方向と垂直に身体を上下に分ける面で,上方向から身体を観察する(図12).

臨床における変位の測定

臨床における変位の測定例として,立位姿勢のアライメント,ファンクショナルリーチテスト,歩行時の歩幅や歩隔,6分間歩行テストなどがある.

立位姿勢アライメントの測定では,鉛直線を基準として,前額面では後頭隆起・ 椎骨棘突起 ついこつきょくとっき 殿裂 でんれつ ・両 しつ 関節の内側の中点・両 内果 ないか 間の中点との距離,矢状面では 耳垂 じすい 肩峰 けんぽう ・大転子・膝関節中心のやや前方・ 外果 がいか の前方との距離を測定する(図13).

ファンクショナルリーチテストは,肩幅の立位姿勢で上肢を ちゅう 関節伸展位で水平に保った姿勢から,なるべく前方に手を伸ばし,その移動距離を測定する(図14).バランス能力をみる検査として,臨床では多く用いられている.

歩行に関連する測定値として,1歩分の距離である歩幅(ステップ長),2歩分の距離である重複歩距離,左右の かかと の中央間の距離である歩隔などがある(図15).高齢になると歩幅は短くなり,運動失調症ではワイドベース歩行という歩隔の広い歩行がみられる.6分間歩行テストは運動耐容能のテストで,6分間に何m歩行できるかを測定する.このように,距離(変位)の測定を通して,その変位が表す身体機能について評価することができる.

臨床における速度・加速度の測定

速度に関して,臨床において最も頻繁に用いられるのは歩行速度の測定である.10 m歩行テストがその代表である.10 m歩行テストは,10 mの直線路とその前後に3 mずつの加速と減速用のスペースを設け,中央の10 mを歩行するのに要する時間を測定する.時間を測るのと同時に,最初に10 mの開始ラインを超えたときを1歩として,終了ラインを超えるまでに何歩を要したかも測定する(図16).歩行速度は,10 mを10 m歩行に要した時間(秒)で割って計算する.10 mを10秒で歩くと歩行速度は1 m/s※2となり,健常ではゆっくりとした歩行速度になる.歩幅は10 mを歩数で割って計算する.また,歩数を時間(分または秒)で割ると,単位時間あたりの歩数である歩行率ケイデンス)が計算できる.

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