第2部 病態別での選び方と使い方
11.脳血管障害
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| 急性期(脳浮腫治療) | 亜急性期(リハビリテーション) | 慢性期(臥床) | |
|---|---|---|---|
| エネルギー | 22〜25 kcal/kg/日 | 30~35 kcal/kg/日 | 25〜30 kcal/kg/日 |
| たんぱく質 | - | 1.0~1.2 g/kg | 0.9~1.1 g/kg |
| 脂質エネルギー比 | - | 10~30 % 脂肪乳剤の静脈投与 | 25~35 % |
| その他 | 十分な水分を投与する | 食事摂取基準に準ずる | 食事摂取基準に準ずる |
1.病態
脳血管障害は,出血性病変のくも膜下出血と脳出血,虚血性病変の脳梗塞の3つに大別される.脳梗塞は,発症機序から脳血栓と脳塞栓に分けられ,臨床病型からは,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳梗塞,ラクナ梗塞に分けられる.
意識障害や嚥下障害,片麻痺,失語,同名半盲,高次脳機能障害などの神経症状によって,適切な栄養管理の選択が必要となる.
2.栄養管理におけるポイント
脳血管障害は,基本的に消化管機能は障害されていないので,経口摂取または経腸栄養(EN)が選択される.高齢者ではサルコペニアを有するものが多く,早期の栄養評価とリハビリテーションを支える十分な栄養管理が必要になる.
特に,嚥下障害は独立した予後不良因子とされており,嚥下機能評価は必須である.また,意識障害や嚥下障害などによって口腔機能の低下が起こるため,口腔ケアも重要である.
3.栄養切替・経路切替のポイント
- 急性期(脳浮腫治療)
- 脳圧亢進がある症例では脳浮腫治療を優先しながら静脈栄養(PN)を行う
- 脳血管攣縮予防のため,十分な水分投与が必要である
- 軽症例では経口摂取を開始するが,開始前に必ず意識障害の有無や嚥下機能を評価する
- 経口摂取が困難な場合は早期から経腸栄養を開始する
- 亜急性期(リハビリテーション)
- 重度の意識障害や脳圧亢進による嘔吐の危険性が高い場合は,発症1週間ぐらいから経腸栄養を開始する
- 積極的なリハビリテーションのために十分なカロリーを投与する
- 嚥下リハビリテーションの状況に応じて,できるだけ経口摂取に移行していく
- 嘔吐や誤嚥,消化器合併症が続く場合,中心静脈栄養(TPN)が長期にわたることもある
- 慢性期(リハビリテーション,臥床)
- 1カ月以上経腸栄養が必要な場合には胃瘻造設が推奨される
- 嚥下リハビリテーションを積極的に進めるためにも,胃瘻を造設して経腸栄養と経口摂取の併用をめざす
4.静脈栄養の実際
1)重症例で発症後1週間,中心静脈栄養(TPN)の場合
●処方例
体重70 kgの場合:2,200 kcal/日,60 g/日のアミノ酸投与を目標とすると
|
Rp.1 エルネオパ®NF2号輸液 2,000 mL/袋1袋 → 中心静脈カテーテル本管より80 mL/時で24時間投与 (合計2,000 mLのうち,1,920 mL分を投与) |
|
Rp.2 イントラリポス®輸液20% 100 mL/袋2袋 → 中心静脈カテーテル側管より30 mL/時で全量投与 |
|
Rp.3 グリセオール®注 200 mL/袋2袋 → 中心静脈カテーテル側管より100 mL/時で9時・21時に投与 |
| 処方パラメータ | |
|---|---|
| エネルギー量 | 2,208 kcal |
| 投与輸液量 | 2,520 mL |
| 糖※ | 336 g |
| アミノ酸 | 58 g |
| 脂肪※ | 40 g |
| NPC/N比※ | 193 |
- 脳浮腫治療に用いられるグリセオール®注はグリセリンと果糖の配合製剤で,116.8 kcal/200 mLである
2)軽症例で経口摂取開始時
●処方例
体重60 kgの場合:1,500 kcal/日,60 g/日のアミノ酸投与を目標とすると
|
Rp.1 エネフリード®輸液 1,100 mL/袋1袋 → 末梢静脈カテーテル本管より80 mL/時で全量投与 |
|
Rp.2 イントラリポス®輸液20% 100 mL/袋1袋 → 末梢静脈カテーテル側管より30 mL/時で全量投与 |
| +嚥下訓練食200 kcal×3回 |
| 処方パラメータ | |
|---|---|
| エネルギー量 | 820 kcal +経口摂取量 |
| 投与輸液量 | 1,200 mL +経口摂取量 |
| 糖 | 75 g |
| アミノ酸 | 30 g |
| 脂肪 | 40 g |
| NPC/N比 | 147 |
- 経口摂取量が増えれば末梢静脈栄養の内容を減らしていく
5.経腸栄養の実際
1)発症1カ月以内の経口摂取不可能例の場合
●処方例 栄養経路:経鼻胃管
| 液体標準組成濃厚流動食 | |
|---|---|
| 製剤名 | MA-ラクフィア1.0アセプバッグ |
| 容量(mL) | 400 |
| 熱量(kcal/容器) | 400 |
| 水分(mL/容器) | 339 |
| 400 kcal×3回(100~200 mL/時) |
適量の水分を追加する
- 水分は,濃厚流動食投与の30分前に投与する
- バソプレシン分泌過剰症(SIADH)や中枢性尿崩症などによってNa濃度の異常をきたすことが多い
2)発症1カ月後,嚥下障害あり,経口摂取・経腸栄養併用例,体幹・嚥下リハビリテーション中の場合
●処方例 栄養経路:胃瘻カテーテル
| 半固形状流動食 | |
|---|---|
| 製剤名 | カームソリッド300 |
| 容量(mL) | 400 |
| 熱量(kcal/容器) | 300 |
| 水分(mL/容器) | 349 |
|
300 kcal×3回,ボーラス投与 +嚥下訓練食200 kcal×2回(昼・夕), 朝は覚醒状態が悪いので注入のみ |
適量の水分を追加する
- 半固形状流動食の短時間投与によって,食事やリハビリテーションの時間が確保できる
- 水分→経口摂取→半固形状流動食の順に投与する
