エキスパートが教える輸液・栄養剤選択の考え方 第2版〜メディカルスタッフが知りたかった『なぜ?』

エキスパートが教える輸液・栄養剤選択の考え方 第2版

メディカルスタッフが知りたかった『なぜ?』

  • 佐々木雅也/監
  • 2026年02月17日発行
  • B6変型判
  • 280ページ
  • ISBN 978-4-7581-0914-7
  • 3,300(本体3,000円+税)
  • 在庫:あり
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第2部 病態別での選び方と使い方

11.脳血管障害

[point]

  急性期(脳浮腫治療) 亜急性期(リハビリテーション) 慢性期(臥床)
エネルギー 22〜25 kcal/kg/日 30~35 kcal/kg/日 25〜30 kcal/kg/日
たんぱく質 - 1.0~1.2 g/kg 0.9~1.1 g/kg
脂質エネルギー比 - 10~30 % 脂肪乳剤の静脈投与 25~35 %
その他 十分な水分を投与する 食事摂取基準に準ずる 食事摂取基準に準ずる

 

1.病態

脳血管障害は,出血性病変のくも膜下出血と脳出血,虚血性病変の脳梗塞の3つに大別される.脳梗塞は,発症機序から脳血栓と脳塞栓に分けられ,臨床病型からは,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳梗塞,ラクナ梗塞に分けられる.

意識障害や嚥下障害,片麻痺,失語,同名半盲,高次脳機能障害などの神経症状によって,適切な栄養管理の選択が必要となる.

 

2.栄養管理におけるポイント

脳血管障害は,基本的に消化管機能は障害されていないので,経口摂取または経腸栄養(EN)が選択される.高齢者ではサルコペニアを有するものが多く,早期の栄養評価とリハビリテーションを支える十分な栄養管理が必要になる.

特に,嚥下障害は独立した予後不良因子とされており,嚥下機能評価は必須である.また,意識障害や嚥下障害などによって口腔機能の低下が起こるため,口腔ケアも重要である.

 

3.栄養切替・経路切替のポイント

  • 急性期(脳浮腫治療)
    • 脳圧亢進がある症例では脳浮腫治療を優先しながら静脈栄養(PN)を行う
    • 脳血管攣縮予防のため,十分な水分投与が必要である
    • 軽症例では経口摂取を開始するが,開始前に必ず意識障害の有無や嚥下機能を評価する
    • 経口摂取が困難な場合は早期から経腸栄養を開始する
       
  • 亜急性期(リハビリテーション)
    • 重度の意識障害や脳圧亢進による嘔吐の危険性が高い場合は,発症1週間ぐらいから経腸栄養を開始する
    • 積極的なリハビリテーションのために十分なカロリーを投与する
    • 嚥下リハビリテーションの状況に応じて,できるだけ経口摂取に移行していく
    • 嘔吐や誤嚥,消化器合併症が続く場合,中心静脈栄養(TPN)が長期にわたることもある
       
  • 慢性期(リハビリテーション,臥床)
    • 1カ月以上経腸栄養が必要な場合には胃瘻造設が推奨される
    • 嚥下リハビリテーションを積極的に進めるためにも,胃瘻を造設して経腸栄養と経口摂取の併用をめざす
       

4.静脈栄養の実際

1)重症例で発症後1週間,中心静脈栄養(TPN)の場合

●処方例

体重70 kgの場合:2,200 kcal/日,60 g/日のアミノ酸投与を目標とすると

Rp.1

エルネオパ®NF2号輸液 2,000 mL/袋1袋

中心静脈カテーテル本管より80 mL/時で24時間投与

(合計2,000 mLのうち,1,920 mL分を投与)

Rp.2

イントラリポス®輸液20% 100 mL/袋2袋

中心静脈カテーテル側管より30 mL/時で全量投与

Rp.3

グリセオール®注 200 mL/袋2袋

中心静脈カテーテル側管より100 mL/時で9時・21時に投与

処方パラメータ
エネルギー量 2,208 kcal
投与輸液量 2,520 mL
糖※ 336 g
アミノ酸 58 g
脂肪※ 40 g
NPC/N比※ 193
※グリセオール製剤を除く
  • 脳浮腫治療に用いられるグリセオール®注はグリセリンと果糖の配合製剤で,116.8 kcal/200 mLである
     

2)軽症例で経口摂取開始時

●処方例

体重60 kgの場合:1,500 kcal/日,60 g/日のアミノ酸投与を目標とすると

Rp.1

エネフリード®輸液 1,100 mL/袋1袋

末梢静脈カテーテル本管より80 mL/時で全量投与

Rp.2

イントラリポス®輸液20% 100 mL/袋1袋

末梢静脈カテーテル側管より30 mL/時で全量投与

+嚥下訓練食200 kcal×3回
処方パラメータ
エネルギー量 820 kcal +経口摂取量
投与輸液量 1,200 mL +経口摂取量
75 g
アミノ酸 30 g
脂肪 40 g
NPC/N比 147
  • 経口摂取量が増えれば末梢静脈栄養の内容を減らしていく
     

5.経腸栄養の実際

1)発症1カ月以内の経口摂取不可能例の場合

●処方例 栄養経路:経鼻胃管

  液体標準組成濃厚流動食
製剤名 MA-ラクフィア1.0アセプバッグ
容量(mL) 400
熱量(kcal/容器) 400
水分(mL/容器) 339
   
  400 kcal×3回(100~200 mL/時)
合計水分量1,600 mL,1,200 kcal,たんぱく質48 g

適量の水分を追加する

  • 水分は,濃厚流動食投与の30分前に投与する
  • バソプレシン分泌過剰症(SIADH)や中枢性尿崩症などによってNa濃度の異常をきたすことが多い
     

2)発症1カ月後,嚥下障害あり,経口摂取・経腸栄養併用例,体幹・嚥下リハビリテーション中の場合

●処方例 栄養経路:胃瘻カテーテル

  半固形状流動食
製剤名 カームソリッド300
容量(mL) 400
熱量(kcal/容器) 300
水分(mL/容器) 349
   
 

300 kcal×3回,ボーラス投与

+嚥下訓練食200 kcal×2回(昼・夕),

朝は覚醒状態が悪いので注入のみ

合計水分量1,750 mL,1,300 kcal,たんぱく質34+α g

適量の水分を追加する

  • 半固形状流動食の短時間投与によって,食事やリハビリテーションの時間が確保できる
  • 水分→経口摂取→半固形状流動食の順に投与する
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メディカルスタッフが知りたかった『なぜ?』

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