プラスαの服薬指導に活かす!食事と栄養〜疾患別132の疑問に答えます

プラスαの服薬指導に活かす!食事と栄養

疾患別132の疑問に答えます

  • 日本調剤株式会社/編
  • 2023年03月24日発行
  • A5判
  • 280ページ
  • ISBN 978-4-7581-0947-5
  • 定価:3,740円(本体3,400円+税)
  • 在庫:あり
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第2部 疾患別 食事と栄養 Q&A

痛風・高尿酸血症

痛風・高尿酸血症患者は,アルコール摂取を控えた方が良いの?

適正量であれば摂取しても構いませんが,多量摂取は控えましょう.

アルコールは,痛風の原因となる血清尿酸値を上昇させるため,アルコール摂取量が多いほど痛風のリスクが高まります.そのため,適切なアルコール量に抑えることが重要です1)

〔内因性プリン体〕

肝臓でのアルコールの代謝の際にATP分解が促進され,最終的に尿酸へと変化します.つまり,アルコールの過剰摂取では内因性プリン体の分解も亢進するため,血清尿酸値を上昇させてしまいます1)

〔外因性プリン体〕

アルコールのなかでも特にビールの飲みすぎには注意が必要です.ビールには酵母や麦芽由来のプリン体が多く含まれているため,血清尿酸値が上昇しやすくなります.

つまり,痛風治療中であるならば,アルコールの制限はとても重要です.適量に留めましょう.具体的には1日あたり純アルコール量で男性は20 g程度,女性はその半分程度の量が望ましいとされています2)

血清尿酸値への影響を最低限に保つ1日あたりのアルコール摂取量の目安は以下のとおりで,ワインは148 mLまでは血清尿酸値を上げないとされています1).患者の現状のアルコール摂取量を確認し,“目安よりどのくらい多いのか?”をお伝えできると,行動変容につなげやすくなります.また,アルコールを飲む理由やシチュエーションを確認することで,生活背景が見えてきて,より具体的な提案ができるでしょう.

血清尿酸値への影響を最低限に保つ摂取量の目安(1日あたり)1)
  • 日本酒:1合(180 mL)
  • ビールロング缶・中瓶1本(500 mL)
  • ウイスキーダブル:1杯(60 mL)

※ビールは銘柄によってプリン体含有量が異なるので注意が必要です.

〈参考文献〉

痛風・高尿酸血症

プリン体0と書かれているビールなら,いくら飲んでも大丈夫?

「プリン体0」と記載があっても,アルコールは適正量に抑えましょう.

尿酸値を上げる原因は,プリン体だけではなく,アルコールにもあることを忘れてはいけません.

先の「63 痛風・高尿酸血症患者は,アルコール摂取を控えた方が良いの?」でも述べたように,アルコールは体内のエネルギー源であるATPの分解を促進させます.その結果プリン体が増え,そのプリン体が尿酸として体内に溜まってしまいます(内因性プリン体).

つまり,アルコール自体に尿酸値を上げる働きがあるため,プリン体の有無にかかわらず,アルコールは適正量に抑える必要があります.また,お酒を飲みすぎるとエネルギー過多になる可能性もあるので,その点でもアルコールは適正量に留めましょう.

アルコールの適正量は,1日あたり純アルコール量で男性は20 g程度,女性はその半分程度の量が望ましいとされています.

〔純アルコールの計算方法1)

酒の量(mL)×アルコール度数または%/100×0.8(比重)=純アルコール量(g)

例)ビール350 mL(アルコール度数 5%)の純アルコール量
350 mL×5%/100×0.8=14(g)

もし,「プリン体0」と書かれているビールを選んでいた場合は,治療意欲があることを認めましょう.そのうえで,アルコール自体が尿酸値上昇に影響があることを伝え,行動変容につなげましょう.お酒の種類によってもアルコール含有量が異なるため,アルコール度数の高いお酒を選んでいる方には,度数の低いお酒に変える,飲む頻度を減らす,などを提案しましょう.

〈参考文献〉

痛風・高尿酸血症

痛風・高尿酸血症患者の場合,水分はどのくらい摂るのが望ましいの?

水やお茶で1日2 L以上を摂るように指導しましょう.

痛風の原因となる尿酸を排泄しやすくするためにも,普段から水分を多く摂る必要があります.

尿酸は1日に約700~800 mg排泄されます.そのうち約3分の2は尿から,残りの約3分の1は便や汗から排泄されます1).つまり,摂取する水分量を増やし,尿量が増えると尿酸が体から排泄されやすくなり,体内に溜まりにくくなるため,痛風リスクを下げることができます.

高尿酸血症の場合,尿量として1日2 L以上排泄することが望ましいと考えられています.痛風合併症である尿路結石予防の観点から,水分は1日2~2.5 L摂るように促しましょう1).また,酸性尿では尿酸の結晶が析出しやすくなるため,尿のアルカリ化も非常に重要です.クエン酸などの有機酸を含む野菜や海藻類を摂取するように提案しましょう1)

指導時は,最初に普段摂取している水分量を聞き取り,不足量を確認しましょう.そして,足りない分を“どのタイミングなら飲めそうなのか”一緒に考えることで行動に移しやすくなります.

1日2 L以上水分を補給するのは難しいように思われるかもしれませんが,起床後,食後,就寝前など飲むタイミングを決めてこまめに飲むと水分補給しやすいので提案してみましょう.

なお,腎疾患・心疾患などで水分制限がある場合は,医師の指示を確認しましょう.

ジュースや清涼飲料水に注意

果糖は代謝の際にATPを消費し,プリン体の分解を促進させるため,尿酸値の上昇につながります1).水分摂取の際は,果物ジュースや,果糖を構成成分とするショ糖を多く含むジュースやコーラなどの清涼飲料水は控えましょう.また,糖分の摂りすぎは,肥満につながり,痛風のリスクが高まります.水や無糖の炭酸水など,砂糖が含まれていない飲料を選択しましょう.

〈参考文献〉

  • 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版ダイジェスト・ポケット版」(日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会/編),p35,p59,診断と治療社,2018
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