抗真菌薬
55.『クレナフィン』と『ルコナック』,同じ爪白癬(爪水虫)治療の外用薬の違いは?
効果と限界,爪白癬治療における外用薬の使いどころ
Answer
高い効果を期待できる『クレナフィン』,
より安価に治療できる『ルコナック』
『クレナフィン(一般名:エフィナコナゾール)』と『ルコナック(一般名:ルリコナゾール)』は,どちらも爪の水虫(爪白癬)に使う「抗真菌薬」の塗り薬です.
「エフィナコナゾール」は,爪への浸透率に優れ,より高い効果が期待できる薬です.
「ルリコナゾール」は,値段が安く,より安価に治療できる薬です.
そのため,より重症なものには「エフィナコナゾール」,経済的負担を抑えたい場合には「ルリコナゾール」を選ぶのが一般的です.
症状が進行したものにも高い効果を期待できる「エフィナコナゾール」
~爪全体への高い浸透率
「エフィナコナゾール」と「ルリコナゾール」はどちらも爪白癬に効果的な外用薬です.
爪白癬は,より確実な効果を得られる内服薬での治療(☞p.270)が基本ですが,肝機能や相互作用などの問題で内服薬を使えない場合や,症状が軽い場合には外用薬も選択肢になります1).
- 爪白癬に対するガイドラインの推奨度1)
エフィナコナゾール :【B】
ルリコナゾール(5%):【B】
※内服の抗真菌薬は,より推奨度の高い【A】
効果を直接比較したデータは少ないですが,「エフィナコナゾール」は「ルリコナゾール」よりも治癒率がやや高めで,特に重症度が進んだものに対して高い効果を期待できる可能性が示唆されています2).これは,「エフィナコナゾール」の方が,爪の主成分「ケラチン」との親和性が低く,より爪の奥深くまで浸透しやすい3)ことが関係していると考えられています.
こぼれ話
爪白癬に対する外用薬治療では,「罹患期間が短い(1年未満)」,「爪の病変面積が25%未満」,といった条件に当てはまると,治療が成功しやすい傾向にあります(Expert Opin Pharmacother, 25:1983-1998, 2024[PMID 39394930]).
使いやすい「エフィナコナゾール」製剤の設計
「エフィナコナゾール」製剤は,容器の先端に「刷毛(はけ)」がついています4).
そのため,身体の硬い人や身体が不自由な高齢者でも,足の爪へ塗布しやすい設計になっています.また,薬液を出し過ぎて薬を無駄にしてしまうようなケースも避けることができるため,外用液の扱いが苦手な人にも適した薬と言えます.
安価な「ルリコナゾール」~足白癬の薬と同じ成分である強み
「ルリコナゾール」は,従来から足の水虫に使われている『ルリコン』(☞p.276)と同じ成分で,その濃度を5倍にすることによって,薬が浸透しづらい爪でも効果が得られるように改良された製剤です5).
爪白癬を完全に治癒させるには,薬を年単位で塗布し続ける必要がありますが,その間にかかる薬代が治療を挫折する原因となるケースも少なくありません6).足白癬の薬と同じ成分で,薬の値段が「エフィナコナゾール」のおよそ半額と安価な「ルリコナゾール」は,こうした経済的負担を抑えたい場合によい選択肢になります.
- 先発医薬品の薬価の比較(2026年改定時)
エフィナコナゾール :1312.50/g
ルリコナゾール(5%): 593.70/g
advice 塗り薬で治療できるのは“軽症”の爪白癬
通常の水虫の塗り薬を爪に塗っても,爪白癬の治療には全くなり得ません7).「エフィナコナゾール」や「ルリコナゾール」といった爪白癬のための薬であっても,1年間の塗布で完全治癒するのは20%に満たない4,5)など,その効果には限界があります.
そのため,より確実な完治をめざす場合や,爪全体が濁ってしまっているような重症例の場合には,『ラミシール(一般名:テルビナフィン)』や『イトリゾール(一般名:イトラコナゾール)』といった内服の抗真菌薬(☞p.270)を使う必要があります.
しかし,これら内服の抗真菌薬も肝機能に影響を与えやすい,他の薬と相互作用を起こしやすいといった弱点があり,あまり気軽に使えるものではありません.
そのため,外用薬で簡単に完治させられる足白癬(足の水虫)の段階でしっかりと治療を行い,爪にまで感染を広げないこと,また,もし爪白癬に進行してしまっても,外用薬での治療が選択肢になる軽症の間に治療をはじめることが非常に重要になります.
こぼれ話
「エフィナコナゾール」の「ケラチン」への親和性は85.7%と,他の抗真菌薬(98.1~99.5%)よりも低くなっています(参考文献4).
Point
❶『クレナフィン(エフィナコナゾール)』は,治療効果がやや高めな傾向にある.
❷『ルコナック(ルリコナゾール)』は,薬価がおよそ半額と安価で経済的.
❸ 爪白癬が重症化すると,外用薬での治療は難しくなる.
薬のカタログスペックの比較
| エフィナコナゾール | ルリコナゾール | |
|---|---|---|
| 先発医薬品名 | クレナフィン | ルコナック |
| 抗真菌薬の系統 | トリアゾール系 | イミダゾール系 |
| 適応症 | 爪白癬 | 爪白癬 |
| 用法 | 1日1回 | 1日1回 |
| ガイドラインの推奨 | 【B】内服薬での治療ができない中等症以下の症例に,使用を推奨する | 【B】内服薬での治療ができない中等症以下の症例に,使用を推奨する |
| 使い方 | 刷毛を使って爪に塗布する | 先端(フェルト)に液をにじませて爪に塗布する |
| 治験段階での治癒率4,5) | 52週で17.8% | 48週で14.9% |
| 国際誕生年 | 2014年 | 2016年 |
| 世界での販売状況 | アメリカ,カナダ,韓国,香港,マカオ | (日本のみ) |
| 先発医薬品の剤形の規格 | 爪外用液(10%) | 爪外用液(5%) |
| 同成分の別剤 | - | 『ルリコン』(☞p.276) |
| 先発医薬品の製造販売元 | 科研製薬 | 佐藤製薬 |
| 同成分のOTC医薬品 | (なし) | (なし) |
こぼれ話
1年間の外用薬治療で顕著に治癒する人は,半年後の時点でも6~7割ほどの改善がみられているため,この時点で治りが悪い場合は内服治療に切り替えるべき,とする意見があります(J Dermatol, 48:1923-1925, 2021[PMID 34472111]).
重症の爪白癬に対する外用薬の効果
爪白癬のなかでも,「遠位側縁部爪甲下爪真菌症(DLSO)」や「表在性白色爪真菌症(SWO)」といったタイプのものであれば,爪の混濁が進んだ重症例であっても,1年半~2年間以上という長期間に渡って「エフィナコナゾール」を塗布し続けることで,特に副作用を増やすことなく,50%以上の治癒率を得られた,とする報告があります8,9).
重症例でも内服薬での治療が難しい場合,爪白癬のタイプが合致し,なおかつ,根気よく治療を続けられる人であれば,塗り薬での治療も選択肢として考えられることがあります.
- 爪白癬のタイプ
遠位側縁部爪甲下爪真菌症(DLSO):足白癬から進行し,爪の先端や側縁部から感染していくもの
表在性白色爪真菌症(SWO):爪の表面に感染し,爪にチョークのような白変が生じるもの
全異栄養性爪真菌症(TDO):長年の感染で,爪が完全に濁って崩壊しているもの
近位爪甲下爪真菌症(PSO):爪の根元から感染が広がるもの
こぼれ話
爪白癬の治療を自己判断で中断した人の47.8%が,その判断を「後悔」している,とされています(参考文献6).
参考文献
1) 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン改訂委員会:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019.日皮会誌:2639-2673,2019
2) Shimoyama H, et al:Retrospective Survey of Treatment Outcomes of Efinaconazole 10% Solution and Luliconazole 5% Solution for Onychomycosis in Our Facility. Med Mycol J, 60:95-100, 2019[PMID 31787733]
3) Masumoto A, et al:A novel method for predicting the efficacy of topical drugs on onychomycosis:A comparison of efinaconazole and luliconazole. J Mycol Med, 32:101259, 2022[PMID 35255449]
4) クレナフィン爪外用液 インタビューフォーム
5) ルコナック爪外用液 インタビューフォーム
6) 佐藤友隆,原田和俊:レセプト調査および患者アンケート調査に基づく爪白癬治療の実態把握.日臨皮医誌,34:742-752,2017
7) Elewski BE, et al:Efficacy, safety and tolerability of topical terbinafine nail solution in patients with mild-to-moderate toenail onychomycosis:results from three randomized studies using double-blind vehicle-controlled and open-label active-controlled designs. J Eur Acad Dermatol Venereol, 27:287-294, 2013[PMID 22181693]
8) Iozumi K, et al:Efficacy of long-term treatment with efinaconazole 10% solution in patients with onychomycosis, including severe cases:A multicenter, single-arm study. J Dermatol, 46:641-651, 2019[PMID 31206779]
9) 久保田由美子,他:重症爪白癬に対するエフィナコナゾール爪外用液の長期使用効果~病型別の検討も含めて~.日皮会誌,131:63-73,2021
- 改訂のポイント
新たに報告された論文情報をもとに,「潜在的な効果」と「薬価」の差で比較する内容に改訂しています.
