第3章 日常生活応用動作
1 スクワット
小林 匠
はじめに
スクワットは最も基本的な荷重動作の1つであり,立つ・座る・しゃがむといった日常生活動作や基本的なスポーツ動作獲得に重要である.スクワット動作の指導はリハビリテーション場面で非常に頻度が高いため,日常生活活動やスポーツ動作への早期復帰のために逸脱動作に対する適切な評価・介入が行える必要がある.
スクワット動作練習は,主に下肢関節の術後患者における起居動作の再獲得や荷重動作に問題を抱える患者の筋力トレーニングとして,またスポーツ基本動作としての正しい動作の獲得を目的とした運動学習など,さまざまなリハビリテーション場面で用いられる.また,片脚スクワットやランジなど,スクワットを基本とした応用動作も多いため,正しいスクワット動作の指導ができることは,運動器リハビリテーションに携わるセラピストにおいて重要である.
1理想的(正常)動作に必要な機能
体幹伸展位に保持した状態で十分に股関節・膝関節が屈曲,足関節が背屈し,足底全体が地面と接し,足圧分布に偏りがない状態が理想的である(図1).理想的なスクワット動作を行うために必要と考えられる主な機能は以下の通りである.
① 関節可動域
・股関節:屈曲(90°以上),内転・外転(10°以上),内旋・外旋(30°以上)
・膝関節:屈曲(60°以上)
・足関節:背屈(荷重下で40°以上)
・足部(距骨下関節・ショパール関節):外がえし
・足趾:伸展
② 筋力(MMT 段階3以上)
・股関節:大殿筋,中殿筋,外旋筋群
・膝関節:大腿四頭筋,ハムストリングス
・足関節:下腿三頭筋
・足部:内在筋群
③ 感覚
表在覚(足底),運動覚
④ 関節安定性
・膝関節:前方・後方,回旋安定性
・足部・足関節:前方,内がえし安定性

<Memo>
スクワット動作は下肢関節の屈曲角度によって,ミニスクワット,ハーフスクワット,フルスクワットなど,呼び名と動作が変化する.ミニスクワットやハーフスクワットでは膝関節の屈曲角度は30〜60°程度となり,フルスクワットでは120°以上が求められる.膝関節の屈曲に合わせて股関節や足関節の必要可動域も変化するため,目的とするスクワットの種類に応じて,必要な機能を事前にチェックすることが重要である.
2動作のチェックポイント
スクワット動作におけるチェックポイントは以下の通りである.
① 前額面(図2)
・体幹:側屈していないか
・股関節:過度な内転・外転がないか
・膝関節:内反・外反していないか
・足部・足関節:下腿内方傾斜・過度な足部外がえしがないか
② 矢状面(図3)
・体幹:過度な屈曲(後弯)・伸展(前弯)がないか
・股関節:しっかりと屈曲できているか
・膝関節:しっかりと屈曲できているか
・足部・足関節:しっかりと背屈できているか
③ 水平面(図4)
・体幹:回旋していないか
・股関節:骨盤が回旋していないか
・膝関節:過度な内旋・外旋がないか
・足部・足関節:過度な足部の内転・外転がないか
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