第3章 植込んだ後に気をつけるべき合併症
4 下限アラームが鳴る
━━(フィクション)ペースメーカ植込み翌日の朝一病棟
新人Ns
先輩,昨日ペースメーカ植込んだ人がいるんですけど,さっきからモニターアラームがとまらなくて.何か小さい波形と大きい波形がいろいろ出てて.小さい波形は規則的に出てますけど,モニターのアラームが止まらないんです.
━━ モニター確認
髙嶋Ns
今すぐにドクターコールして,心電図と除細動器とルートの準備も.CEさんにもプログラマ確認してもらおう.あっ,たぶんX線もとることになると思うから準備しといて.
━━ パタパタ…(医師二人到着,モニター確認)
研修医
心室ペーシングフェラーでしょうかね.心室ペーシングスパイクにQRSが追従していないので,徐脈アラートが鳴ったようです.
藤澤Dr
リードの脱落によるものかな.意識と血圧はまあ大丈夫.動かないでくださいねー.エコーとX線とろうか.カテ室に連絡してくれる?ああ,除細動器のパッド貼っといてください.
━━ その後,リードの脱落を確認,カテーテル室で再挿入を行った
藤澤Dr
ひやりとしますね.完全房室ブロックの患者では時に致命的になりかねません.この方はもともと完全房室ブロックではあれど,心室からの補充調律によって最低限の心拍数が維持されている人でした.でも,ペーシングが入るとその自己脈が出なくなりました.これは時々あることです.
研修医
えっと…ペーシングが入ると,心臓が補充を出すことをさぼってしまう,みたいな感じですか.
藤澤Dr
その通りです.リードの脱落はまだ心臓に癒着していない植込み直後に多いですので,特に注意してください.
新人Ns
小さい波形(▷)は出てたのに,ダメなんですか?
髙嶋Ns
これはP波が見えているだけですね.P波の後にペーシングスパイク(〇)がありますが,それに追従するQRS波が出ていません.なので心房センシングはできていますが,心室のペーシングができていない状態でした.心室波がなければ,血液の循環が維持できませんので非常に危険です.ペーシングできているときもある(⇨)ので,少なくともリードは心室内にはあるのでしょうが,不安定な状態であったことには変わりありません.
研修医
他に心拍数の下限アラームが鳴ってしまうような原因はありますか?
藤澤Dr
そもそも脱落や穿孔のようにペーシングフェラーを起こせば,徐脈が顕在化する可能性はあります.あとはナイトモードやヒステレシスといった特殊な設定が入ったときに,設定されている下限レートよりも心拍数が低くなることがあります.設定によって-10回/分程度の心拍の低下はありえるかもしれませんが,極端な徐脈はおそらく異常ですので,早急に対応が必要です.4章-5もご参照ください.
まとめ
下限アラームの原因
- 正常:下限設定をさらに下げる特殊な設定(ナイトモード,ヒステレシス)
- 異常:ペーシングフェラー,オーバーセンシング
