脳卒中の栄養療法〜急性期・回復期・維持期の栄養管理がこの一冊で実践できる!

脳卒中の栄養療法

急性期・回復期・維持期の栄養管理がこの一冊で実践できる!

  • 山本拓史/編
  • 2020年02月21日発行
  • A5判
  • 221ページ
  • ISBN 978-4-7581-1865-1
  • 定価:3,800円+税
  • 在庫:あり
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第1章 栄養療法の基本

山本拓史
(順天堂大学医学部附属静岡病院脳神経外科)

1 脳卒中診療における栄養療法の重要性

Point

  • 栄養療法を治療手段の柱としてとらえ実践しよう
  • 絶食期間の短縮を念頭に,誤嚥を回避しつつ経腸栄養を開始する
  • 急性期の栄養状態が回復期でのリハビリテーションの効果に影響する
  • 急性期から回復期,維持期にむけシームレスな栄養療法を心掛ける

“栄養管理”ではなく“栄養療法”の必要性 ~なぜ栄養療法が必要なのか?~

1)脳卒中治療と栄養管理の変遷

脳卒中は,古くは“卒(突)然に邪気,邪風に中る(あたる)病”とされ,現代では脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血の総称として脳血管障害とも呼ばれる.疾患の特徴上,多くの症例は動脈硬化性病変をはじめとする心・大血管病変や脳動脈瘤に関連するものであり,若年者よりも成人,特に中高年から老年期に発症する疾患群である.その症状はさまざまで,中枢神経系(脳)の障害により,一過性の神経症状から永続的な運動麻痺,症例によっては重度の意識障害まできたすこともあり,その重症度も一律ではなく,治療法もさまざまである.脳虚血性疾患には主に抗血栓薬が使用され,脳内出血には薬物治療を中心に血圧管理を行い,時に血腫除去を目的とする外科的治療を行うこともある.くも膜下出血における急性期治療はさらに複雑であり,従来の開頭術や血管内治療による破裂動脈瘤への根治術に加え,脳血管攣縮を主とする遅発性脳虚血神経症状(delayed ischemic neurological deficits:DIND)への対策が多様化,高度化している.それ故,個々の病態に応じた適切な患者管理,治療が求められる時代にあり,より高度な医療の提供が期待されている.

従来,脳卒中患者における栄養管理は急性期における全身管理の一環として行われており,エネルギーを投与するという処置そのものを“栄養管理”として,それを実践することに重きが置かれ,その方法や投与量,あるいは栄養成分などに言及されることは少なかった.脳卒中の栄養管理について書かれた成書もほとんど存在せず,また栄養管理の弊害について議論されることも少なかった.従来の多くの成書では,脳卒中急性期にみられる頭蓋内圧亢進や嚥下障害に伴う嘔吐や吐物による誤嚥性肺炎の弊害が強調され,経口摂取,経腸栄養の早期開始には慎重な記述が多い.特にくも膜下出血術後急性期には厳重な水分出納管理が求められることもあり,多くの施設で中心静脈からの高カロリー輸液にて栄養管理を行うことも経腸栄養の開始が遅延する一因となっていた.

近年,多くの医療機関で栄養サポートチーム(NST)活動が盛んになり,入院患者における栄養管理が注目されているが,脳卒中も例外ではない.急性期の病態に応じた栄養管理を行うこと(=栄養療法)により,単なる全身管理にとどまらず薬物治療や外科的治療による治療効果が高まることから,機能予後改善に向けた積極的な栄養管理を行うことが注目されている.また,脳卒中患者の多くは,急性期から回復期,維持期と数カ月,数年におよぶ治療期間を要することも少なくない.そのため,単に急性期の全身管理の一環ではなく,回復期,維持期における栄養状態を見越した栄養療法を実践することで,回復期におけるリハビリテーションの効果を高め,維持期におけるフレイルサイクルからのサルコペニア離脱を図ることなどが必要になる.これらの健康寿命延伸を見据えた包括的な栄養管理が“脳卒中栄養療法”であり,他の治療同様に確立した治療の1つとして実践することが重要である.

2)ガイドラインにおける栄養療法の推奨


「脳卒中治療ガイドライン2015」 1)における栄養面の推奨では,栄養状態の評価,低栄養患者や褥瘡リスクのある症例に対してのたんぱく質補給などはグレードBで推奨されているものの,その内容は,栄養療法としては十分とは言えない.いくつかの理由が考えられるが,脳卒中患者を対象とした栄養療法に関しては,質の高いランダム化比較試験(RCT)が少なく,確立されたエビデンスが少ないことが挙げられる.嚥下障害を有する症例に対して行われた栄養療法について,投与方法,投与期間などを評価した研究2,3)は散見されるものの,一般的な脳卒中患者を対象とした研究はほとんどない.

一方,重症患者を多く扱う救急領域や急性期管理を行う集中治療室(ICU)管理の領域では栄養療法に関するさまざまなエビデンスが構築されており,ICUや脳卒中ケアユニット(SCU)での治療を行うわれわれにとっても大いに参考になるガイドラインがある.その一例として,SCCM(Society of Critical Care Medicine)/ASPEN(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition)やESPEN(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism)などのガイドライン4〜6)では,消化管が機能しているすべての症例に対して経腸栄養が推奨され,経腸栄養の早期開始により感染症発症率や死亡率が減じるとされている7).また,経腸栄養の開始時期として24~48時間以内の投与開始が推奨される.

また,ESPENにおける手術療法に関するガイドラインでは,「外科診療では,1~2日以内に通常食の経口摂取が可能となるような強化回復プログラム(enhanced recovery after surgery:ERAS)により患者を管理することが望ましい」とされ,積極的な経腸栄養管理が推奨される.このERASプロトコールの主要項目は,ほとんどの外科領域の周術期管理に応用可能で,特に⑬〜⑯の項目は脳卒中術後症例にも適応すべきと考えられる(図18,9)

3)栄養障害の予後への影響

脳卒中では,発症時の栄養不良が予後不良因子となることは広く知られており,発症時の栄養評価と速やかな栄養障害の改善はガイドラインでも推奨されている事項である1,10).しかしながら,前述のごとく脳卒中急性期には多くの症例で栄養療法の導入が遅れがちであり,実際にわが国において回復期に移行する多くの脳卒中症例が栄養障害を有していると報告されている11).急性期治療中の栄養障害と予後に関するエビデンスは多くはないが,栄養障害が死亡率・在宅復帰率に影響するとした報告12)や,脳卒中患者急性期における血清アルブミン値3.5 g/dL未満の症例はそれ以上の症例と比較し死亡率が高いといった報告13)があり,発症時の栄養不良のみならず急性期治療中の栄養障害も予後に影響する因子であり回避すべきである.

一方,回復期における栄養障害と機能予後に関するエビデンスはわが国を中心に多く報告されている11,14,15).西岡らは回復期リハビリテーション病院における入院時の調査11)にて,脳梗塞の55.3%,脳出血の55.6%,くも膜下出血の100%が栄養障害の状態でありリハビリテーションが必要な患者の半数以上が栄養障害の状態であるとし,リハビリテーション病棟退院時のFIMスコアに影響を与える独立因子として,入院時FIMスコアと入院時の栄養障害を挙げ,栄養障害のある群は栄養状態が良好な群と比較し在宅復帰率も有意に低いと報告している.言い換えれば,脳卒中の急性期治療における栄養障害が,回復期治療終了時の長期予後に影響を与えると言える.吉村は,リハビリテーション期間中の積極的な栄養療法がADL改善に寄与すると報告14)しており,リハビリテーションによる活動量の増加とエネルギー消費に見合う栄養を摂取することや,リハビリテーション効果に直結する骨格筋量を維持,増強するために分枝鎖アミノ酸などを高配合することなど,栄養成分にも配慮した栄養療法が有効であると報告している.

4)早期の経腸栄養導入の重要性

わが国では,脳卒中急性期における栄養療法の重要性が十分に認知されているとは言えない一方で,回復期における栄養療法の重要性,必要性は徐々に注目されている.脳卒中診療におけるリハビリテーションはいまやなくてはならない治療オプションの1つであるが,その効果をさらに高める要因として急性期の栄養状態がある.冒頭で述べたごとく,脳卒中は突然に発症する疾患であり,病前には生活習慣病などで肥満患者の割合は多いものの,栄養不良の症例は少なく腸管機能も保たれていることが多い.さらには,侵襲性ストレスの強い急性期であるからこそ,他疾患同様に経腸栄養を第一に選択すべきと考えると,脳卒中急性期にあっても可能な限り早期に経腸栄養を導入すべきであると言える.栄養状態が良好な症例では発症時の状態を維持し,発症時の栄養状態が不良な症例においては,速やかに栄養状態を改善するために,栄養療法が重要と思われる.そのためには,入院後ただちに栄養状態の評価を行い,薬物治療,外科的治療と同様,タイミングを逃すことなく速やかに栄養療法を導入することが重要である.

Neuro-NSTの必要性 ~脳卒中と他疾患との栄養管理の違い~

脳卒中患者に対して適切な栄養療法を実施するためには,その特殊性を理解し適切な栄養管理を行うことが重要である.脳卒中では個々の症例によって病態が異なり,それぞれに応じた栄養療法を実践することが肝要である.われわれの施設では,病院全体を包括する病院NSTチームと並行して,TNT(total nutrition therapy)研修を修了した複数の脳神経外科医を中心に看護師,作業療法士,管理栄養士などの多職種とともに“Neuro-NSTチーム”を構成し活動している.特別な栄養サポート回診ではなく,神経疾患の特殊性を理解したメンバーによる日常の病棟回診のなかで,個々の症例の栄養状態に目を配り病態,病状さらには治療ステージに応じた栄養療法を提供している.その詳細は第2,3章に譲るが,本稿では栄養療法を実践するうえで重要となる脳卒中特有の問題点を中心に述べる.

1)脳卒中の栄養療法の問題点

脳卒中の栄養療法における代表的な問題点として,次のような点が挙げられる.まず,多くの症例で遭遇する嚥下困難,嚥下障害(①)である.脳障害の部位にもよるが,脳卒中の多くの症例で経験する嚥下障害は,経腸栄養を第一に優先する栄養療法を実践するうえで大きな問題点となる.次に神経系特有の問題点として意識障害(②)が挙げられる.軽症の脳卒中に嚥下障害のみの場合もあれば,神経学的に嚥下機能は保たれていても意識障害によって経口摂取が困難となる症例もある.また,高次脳機能障害を併発する症例では,食べものの認識ができず摂食障害をきたす症例(③)や,運動麻痺により箸がうまく使えない症例や視力,視野異常のために摂取量が不十分になるなど長期的な後遺症にもつながる問題(④)も少なからず存在する.

<代表的な問題点>

  1. ①嚥下困難,嚥下障害
  2. ②意識障害による経口摂取困難
  3. ③食べものの失認による摂食障害
  4. ④運動麻痺や視力・視野異常による摂取不十分

2)脳卒中特有の栄養療法のポイント

①絶食期間の短縮

<優先度順・脳卒中の栄養療法のポイント>

  1. ①絶食期間の短縮
  2. ②経口摂取の評価・実施
  3. ③経鼻胃管による経腸栄養の実施
  4. ④静脈栄養の実施

脳卒中の栄養療法を実践するうえで,われわれが最も優先することは,絶食期間の短縮である.脳卒中患者の多くは,発症直前まで日常的な食事を摂取していることが多く,栄養に偏りはあるにせよ腸管機能はほぼ正常に保たれていたはずである.もちろん,脳卒中発症による腸管機能への影響を考慮する必要はあるが,このような症例に対して,いかに腸管機能を低下させることなく栄養療法を導入するかが重要な課題となる.そこで効果的な手段の1つが,絶食期間の短縮である.「脳卒中治療ガイドライン」では速やかな経腸栄養開始が推奨されているものの,経腸栄養開始の時期は明確には示されてはいないが,海外5),国内16)いずれもICU管理の必要な重症患者に対して24~48時間以内の早期経腸栄養導入が推奨されていることを鑑みると,脳卒中症例においても48時間以内には何らかの経腸栄養の投与を開始するべきであろう.その際,投与方法,投与量,投与成分は症例に応じて決定されるが,必ずしも理論上の必要エネルギー量を補う必要はなく,むしろ必要量を超えないエネルギー量に抑え,エネルギー過剰となるover feedingを回避することが推奨される17,18)

②経口摂取の評価・実施

絶食期間の次に優先すべきは経口摂取である.当然,意識障害の患者では経口摂取は困難であるが,意識レベルの保たれている症例ではまずは経口摂取の可否を評価する.調理された食物を咀嚼,摂取することで嚥下機能の改善,維持,さらには一定の消化管への負荷となり良好な腸管機能の維持に貢献する.嚥下機能の評価については,発語,発声に際して構音障害もなく,通常会話も可能な症例では簡易的な飲水テストのみで経口摂取を開始するが,高齢者や構音障害,嚥下障害のある症例では,ST(speech therapist)などの監視の下で水飲みテスト(modified water swallowing test)などで評価を行い経口摂取の可否を判定すべきである.その際の注意点として,発症直後の急性期では,経口摂取が可能であっても多くの症例では食思も不十分で十分な摂取量は確保できないため,脱水にならないよう末梢輸液ルートからの等張輸液により水分バランスを整えるようにしている.

高次脳機能障害による認知機能低下による摂食障害や上肢機能障害による摂食低下の際には,嚥下機能を評価したうえで経口摂取を試みるが,その際,人による介助,介護が不可欠となる.薬物療法や作業療法と合わせて多職種でのアプローチが必要となるが,十分なエネルギー量や水分量が摂取できない場合は,やむをえず経管栄養管理が必要なこともある.施設によっては,嚥下機能訓練を含め観血的な経管栄養管理で良好な治療成績を得た報告19)もある.

③経鼻胃管による経腸栄養の実施

次に,意識障害のある患者や経口摂取が困難な症例では経腸栄養を試みる.一般的には,まず経鼻胃管による経腸栄養製剤の投与を開始する.また,薬物による鎮静状態も経口摂取困難状態として経腸栄養の適応とし絶食期間短縮に努めている.経腸栄養の導入初期の主目的は絶食期間の短縮による腸管機能維持であるため,導入当初より必要エネルギー量を投与する必要はなく,発症より1週間程度は1日あたり500~800 kcal(permissive underfeeding)を目標にしている.脳卒中の患者では糖尿病や耐糖能異常を有することが多いが,血糖管理の面からもpermissive underfeedingでの栄養管理は有利である.投与する経腸栄養製剤は症例の重症度や合併症の有無によって選択するが,急性期には侵襲性ストレスにより異化亢進状態にもあるため,低糖質,高たんぱく質比率の高い製剤が好ましい.

経鼻胃管経腸栄養では,常に嘔吐や誤嚥の問題は避けられない.経腸栄養投与後の胃内残留量が多ければ誤嚥のリスクも高まるため,腸管運動は誤嚥予防の重要な要因となりうるが,従来経腸栄養投与の指標とされていた胃蠕動や腸管蠕動の腸音聴取は必ずしも適切ではない.絶食期間中は腸管運動が低下しているため,腸音も減寂しているが,多くの症例で,経腸栄養開始とともに蠕動運動も活発化する.また,ASPENガイドラインでは,胃内残留量は経腸栄養の中止の指標とすべきではないとされており,胃内残留量が多い場合は,腸管蠕動亢進薬の投与や投与スピードを緩めるなどの対応が求められる.

経腸栄養における最も有効な誤嚥予防は,胃管先端を空腸に留置する空腸栄養である.この場合,投与した経腸栄養製剤は幽門で逆流が防止されるため誤嚥性肺炎を起こしにくい.一方で,空腸への直接投与では,胃切除の際に認められるダンピング症候群を併発しやすいため,空腸栄養には持続投与を行う施設が多い.また,炭水化物含有量の少ない低GI(glycemic index)製剤を用いることでダンピング症候群の発症を軽減できる.ただし,一般的な脳卒中医にとって空腸内への胃管留置は煩雑で患者への負担も大きいため,われわれの施設では繰り返し誤嚥を起こす症例にのみ実施している.また持続経腸栄養を行う場合,経腸ポンプは使用するが,多くの症例では胃内留置のままでも問題なく実施可能である.

④静脈栄養の実施

重度の麻痺性イレウスや感染性腸炎などで経腸栄養が実施不可能な症例に限って,静脈栄養を行うことにしている.ただし,早期経腸栄養を行う症例では,イレウスや腸炎を併発するリスクは低く,長期間におよぶ絶食こそが腸管合併症の要因となることを理解すべきである.静脈栄養では,糖質由来のエネルギーが中心となるため,十分な血糖管理のもとで投与すべきである.

3)リハビリテーション

さらなる脳卒中治療の特長として,ほぼ全例でリハビリテーションを実施する点が挙げられる.リハビリテーションは薬物治療,外科的治療と並ぶ重要な治療手段であり,特に運動障害,廃用症候群の症例では重視される.そのため,日中のリハビリテーションの時間をいかに確保するかも重要なポイントとなる.経腸栄養を行うばかりに体位変換やリハビリテーションが実施できず運動器の廃用が増悪しないよう注意すべきである.そのためには,経管栄養の時間を効率的に使用する必要があるが,その観点からも比較的少量の製剤を短時間で投与したり,濃縮タイプの製剤を投与することで効率性は改善する.一方,濃縮タイプや急速投与では,血糖値の吸収速度上昇に伴い血糖値も上昇しやすいため,合わせて注意が必要である.

4)院内および他施設との連携

脳卒中患者の全身状態は,治療期間中に刻々と変化する.急性期治療であってもICU,SCU管理が必要な期間と一般病棟での治療期間でその病状は異なり,また回復期リハビリテーション病棟(病院)や維持期病院に転院する際には,病状のみならず治療環境も異なるため,それぞれのステージに応じた栄養療法が実施されるべきである.これらの観点からも,多職種からなるNeuro-NSTチームの日常回診は,おのおのの専門性に応じた判断とタイムリーな治療方針の決定が可能であり,脳卒中診療においても有用な活動である.

前述のごとく,急性期からの回復期へ移行する際の栄養状態は予後に起因する重要な因子である.近年,多くの地域で他施設との連携強化が進んでいるが,脳卒中地域連携パスの活用はその一例である.そのような連携事項に栄養療法に関する情報を共有し切れ目のない栄養療法を実施することも重要な課題である.

まとめ

脳卒中の栄養療法は,意識障害や嚥下障害などにより経管栄養主体の栄養療法となることが多く,誤嚥のリスクより経腸栄養の開始が遅くなるなど,脳卒中ゆえの特殊性をもつ.それらを理解したうえで栄養療法の導入と管理を行い回復期に向け良好な栄養状態で濃密なリハビリテーションへの準備を整えることは急性期治療を担う医療者の責務であり,回復期ではリハビリテーションでの消費量増加に見合うエネルギー量を投与し,病態に適した栄養成分を補給する栄養療法に努めるべきである.維持期,慢性期においてもフレイル,サルコペニアなどの消耗状態回避に向けた栄養療法を実施するなど,高齢者への対応も求められる.一方で,早期経腸栄養を主体とし,腸管機能を維持しつつ全身の栄養管理を行うことは他疾患と共通することであり,腸脳相関の観点からも脳卒中患者における積極的な栄養管理への介入と栄養療法は重要である.

文献

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  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 医療検討委員会:間歇的口腔食道経管栄養法の標準的手順.日摂食嚥下リハ会誌,19:234-238,2015
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