豊富な写真でわかる!骨折・脱臼・捻挫 基本手技バイブル

豊富な写真でわかる!骨折・脱臼・捻挫 基本手技バイブル

  • 湏藤啓広/編
  • 2020年09月30日発行
  • A4判
  • 270ページ
  • ISBN 978-4-7581-1885-9
  • 定価:5,200円+税
  • 在庫:あり
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第3章 上肢 §1 肩甲帯

1 鎖骨骨折

福田亜紀
(鈴鹿回生病院整形外科)

鎖骨骨折は,骨折全体の約5%を占める頻度の高い骨折です.中央1/3の骨幹部骨折が最も多く,多発外傷に合併することも多い骨折です.治療方針の決定には,年齢や骨折部位,転位の程度,患者背景などを考慮するとともに,遷延治癒や偽関節のリスクが高い症例には手術療法を考慮する必要があります.

どのような外傷か

鎖骨骨折は,転倒や転落時に手や肘をつく,肩を打つなどの介達外力により生じることが多いです.発生部位別に近位1/3の近位端骨折,中央1/3の骨幹部骨折,遠位1/3の遠位端骨折に分けられます.骨幹部骨折が最も多く(80%),近位骨片は胸鎖乳突筋の牽引力で上前方へ,遠位骨片は三角筋や下胸筋による牽引力で後下方へ転位します.次いで遠位端骨折(15%)であり,近位端骨折は稀(5%)です.鎖骨骨折にはいくつかの分類がありますが,Robinson分類は骨折部位,転位の程度,さらに骨片の大きさや関節内骨折の有無により細かく分類され,治療方針の決定に有用です(図11)

症状

骨折部の疼痛や腫脹に加えて,肩関節の挙上が困難な例が多いです.転位の大きい例では骨折部の突出が確認されます.

検査と診断

外傷の病歴や局所の圧痛・腫脹・変形・異常可動性などから診断が可能です.単純X線にて診断が可能な場合が多いですが,小児の不全(若木)骨折は初診時の単純X線による診断が困難な場合もあり注意が必要です.転位の方向や程度,第3骨片の有無などの評価にはCTが有用です.特に,肋骨や肺,縦隔などと重なるため診断が困難な鎖骨近位端骨折では,3D-CTが有用です.

合併症

鎖骨骨幹部骨折では,腕神経叢損傷や鎖骨下動静脈損傷の合併に注意する必要があります.また,高エネルギー外傷例では同側の肋骨骨折や肩甲骨骨折,胸部外傷などの合併損傷に注意する必要があります.近位端骨折では,気管や大血管の損傷を合併することもあります.

治療

A)鎖骨近位端骨折

鎖骨近位端は鎖骨間靭帯・胸鎖靭帯・肋鎖靭帯による強靭な支持機構を有しているため,骨片の転位が少ないRobinson分類 type 1Aでは三角巾や鎖骨バンドなどによる保存療法を行います(図2).転位を伴うRobinson分類 type 1Bでは,偽関節の発生率が高く,手術療法の適応となります(図3).鋼線締結法やプレート固定法が行われますが,近位部の骨片が小さい症例や高齢者など骨質が悪い症例では強固な固定性を得ることが困難な場合があります.また,手術による血管や神経損傷などの合併症に注意する必要があります.

B)鎖骨骨幹部骨折

小児例や短縮・転位が2cm未満の場合には,保存療法を行います.徒手整復は,椅子に座らせ両肩を後ろに引っ張るようにして転位した骨片を整復します.整復位の保持には,鎖骨バンドや8の字包帯などを装着します.固定期間は患者の年齢や骨折型により異なりますが,小児では2~3週間,成人では4~6週間程度で,仮骨形成が出現するまで固定します.

手術療法の絶対的適応は,開放骨折や神経血管損傷の合併例です.相対的適応は,粉砕骨折や著しい骨片転位など整復位保持が困難な症例(Robinson分類 type 2B)・早期機能回復を要する症例などであり,経皮的スクリュー固定法やプレート固定法が行われます(図4).

C)鎖骨遠位端骨折

鎖骨遠位端骨折では,骨折が安定型か不安定型かを見極めることが重要であり,骨折部の安定性には,円錐靭帯および菱形靭帯からなる烏口鎖骨靭帯の断裂の有無が関与します.転位の少ないRobinson分類 type 3Aに対しては三角巾や鎖骨バンドなどの保存療法を行いますが,転位を伴うRobinson分類 type 3Bでは整復位の保持と骨癒合の獲得が困難であるため,手術療法の適応となります.不安定型に対する手術法としては,鋼線締結法やプレート固定法が行われます(図5).

pitfall 鎖骨骨折は,骨折部位により治療方針が異なります.単純X線およびCTにて骨折型を正確に評価したうえで,解剖学的特徴や患者背景を十分理解して治療方針を決定することが重要です.
memo 鎖骨骨折は保存療法により骨癒合が得られることが多いですが,約10~20%に偽関節や変形癒合が生じるとされています.近年のメタアナリシスでは,転位を有する鎖骨骨幹部骨折に対するプレート固定法の偽関節率は1.9%であり,保存療法群の16.5%にくらべ有意に低く,早期の機能回復が得られると報告されています2〜4).転位を有する鎖骨骨幹部骨折では,手術療法の利点と欠点を十分理解したうえで,治療方針を決定することが重要です.

文献

  • Robinson CM: Fractures of the clavicle in the adult. Epidemiology and classification. J Bone Joint Surg Br, 80: 476-484, 1998
  • McKee RC, et al: Operative versus nonoperative care of displaced midshaft clavicular fractures: a meta-analysis of randomized clinical trials. J Bone Joint Surg Am, 94: 675-684, 2012
  • Qvist AH, et al: Plate fixation compared with nonoperative treatment of displaced midshaft clavicular fractures: a randomized clinical trial. Bone Joint J, 100-B: 1385-1391, 2018
  • Woltz S, et al: Plate Fixation Versus Nonoperative Treatment for Displaced Midshaft Clavicular Fractures: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Bone Joint Surg Am, 99: 1051-1057, 2017
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