ひと目でわかるビジュアル人体発生学

ひと目でわかるビジュアル人体発生学

  • 山田重人,山口 豊/著
  • 2022年10月28日発行
  • A5判
  • 189ページ
  • ISBN 978-4-7581-2109-5
  • 定価:3,960円(本体3,600円+税)
  • 在庫:あり
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第2章 受精卵から胎児ができるまで

3 受精卵の成長(第1週)

卵割図2-6

受精後,透明帯の中で細胞分裂が始まる.初期の細胞分裂は,透明帯の内部で容積を変えずに分裂していくため,一般の体細胞分裂と区別して卵割といい,母細胞の卵割により生じた娘細胞を割球という.受精卵は卵割を行いつつ,卵管から子宮へと移動していく(図2-7).受精卵の割球が16細胞を超えると胚の外観が桑の実のようになり,桑実胚と呼ばれるようになる.桑実胚は個々の細胞同士がタイト結合ギャップ結合などの細胞間結合により密に結合し,細胞同士の境界が不明瞭になる.この現象をコンパクションという.

桑実胚から胚盤胞への変化図2-7

桑実胚が子宮腔に入る頃,子宮腔から透明帯を通って液が入り込み,細胞間隙が生じる.これらの間隙は融合して1つの大きな胚盤胞腔を作り,この胚盤胞腔をもつ胚を胚盤胞という.このとき,はじめて細胞の分化が生じ,内部の胚結節(内細胞塊)とその周囲の栄養膜(外細胞塊)の2つの細胞群ができる.胚盤胞は胚結節の偏在により極性をもち,胚結節側を胚子極,反対側を対胚子極という(図2-8).

着床図2-8

第4日(CS3)には胚盤胞が透明帯から抜け出て(“hatching”)着床可能な状態となる.子宮内膜も分泌期となって厚くなり,子宮側も着床の準備が整う.第6日(CS4)頃になると,胚盤胞は子宮内膜まで到達して表面に接着する.胚子極側の栄養膜細胞が子宮内膜に侵入し,胚盤胞は子宮内膜に固定されて母体との間で相互作用を開始する.これを着床という.着床後,子宮内膜はさらに肥大・増殖して脱落膜となる.受精卵が着床した脱落膜の基底部を脱落膜基底部または基底(床)脱落膜という.

タイト結合(密着結合):細胞間結合の一種.隣接する細胞の細胞膜を強く結合分子やイオンが細胞間隙を通過することを防ぐ.外側の割球(将来の栄養膜)がこの結合で繋がる.
ギャップ結合:細胞間結合の一種.隣接する細胞間の分子通路となり,物質の交換に重要な役割を果たす.内側の細胞(将来の胚結節)がこの結合で繋がる.
脱落膜:子宮内膜の組織の一部であり着床に伴い変化する.この変化を脱落膜化といい,胎盤形成に重要な役割を果たす.脱落膜は最終的に胎盤とともに剥脱する.
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