バーチャルスライド 口腔組織学

バーチャルスライド 口腔組織学

  • 田畑 純,杉浦真琴/著
  • 2021年11月19日発行
  • B5判
  • 208ページ
  • ISBN 978-4-7581-2116-3
  • 13,200(本体12,000円+税)
  • 在庫:あり
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第3部 口腔組織・発生学

第14章 歯周組織

歯周組織としては,歯冠部に歯肉,歯根部にセメント質,歯根膜,歯槽骨がある.セメント質は歯にも歯周組織にも含まれる.

1)歯肉

歯肉gum/gingivaは咀嚼粘膜であり,口腔粘膜上皮と粘膜固有層からなる.上皮には,角化層,淡明層,顆粒層,有棘層,基底層が観察されるが,歯肉縁(歯肉頂)から内側(内縁上皮)では角化がなく,細胞の階層もなくなる.これを歯肉 こう 上皮といい,互いの細胞間接着が弱く,歯肉溝滲出液の滲出を可能にしている.さらに下降すると付着上皮となり,歯面に内側基底板を介して接着している(図14-1).

付着歯肉の深部には歯肉血管叢リンパ 浸潤 しんじゅん があり,歯肉溝上皮から血漿成分に白血球系の細胞が加わった組織液が 滲出 しんしゅつ する.これが歯の防御系の要ともいえる歯肉溝滲出液である(図14-1).また付着上皮には基底層が2枚あり,エナメル質側を内側基底板(または内基底板),歯肉固有層側を外側基底板(または外基底板)という(図14-1).歯槽骨からは歯肉上皮へと歯肉線維が多数走っているが,これらは組織支帯であり,歯肉のかたちを支持している.

歯肉縁から外側(外縁上皮)の歯肉は,歯槽骨頂よりもやや低いあたりまでで,そこから下は歯槽粘膜に切り替わる.この境界を歯槽歯肉境といい,粘膜上皮が被覆粘膜になり,脂肪が徐々に現れてきて粘膜下層が明瞭になる(図14-1).

2)歯根膜

歯根膜periodontal membraneは歯と歯槽骨の間にある結合組織である.歯根のセメント質と固有歯槽骨の間をつなぐ歯周靱帯periodontal ligamentsとその間隙にある脈管神経隙,歯根セメント質側に網状に広がるマラッセの上皮遺残などからなる.歯周靱帯は歯根膜線維ともいい,両端はセメント質と固有歯槽骨に埋め込まれている.この埋め込まれた部分をシャーピー線維Sharpey’s fibersといい,そうでない部分(大半の部分)を歯根膜主線維という.

3)歯槽骨

歯槽骨alveolar boneは歯根を支えるように顎骨から隆起した骨で,歯根膜主線維の一端をシャーピー線維として埋め込んでいる.また,歯根に向いた部分を固有歯槽骨,それ以外の部分を支持歯槽骨という.骨としての構造は,通常の骨と同様であり,ハヴァース系が見られ(図14-2A),さかんに骨代謝も行われている.

骨を形成するのは,骨芽細胞osteoblastと骨細胞osteocyteである.骨芽細胞は骨表面にあって添加的石灰化で骨を形成する.類骨(石灰化前の状態)を細胞直下につくるため,骨表面から細胞が浮いているように見える.一方,骨細胞は骨の内部で骨を形成する細胞で,細胞突起を全方向に伸ばしているのが観察される(図14-2B).

14-1上顎前歯部・脱灰縦断[HE染色]

歯肉は典型的な咀嚼粘膜で,角化層,淡明層,顆粒層,有棘層,基底層がよく観察される(A).ただし,内縁上皮(歯肉溝上皮)は咀嚼粘膜でありながら,角化がなく,細胞の階層も不明瞭となる(B).また,加齢による 挺出 ていしゅつ のため,歯肉が相対的に下がり,付着上皮部はエナメル質ではなくセメント質に付着している(C).

外縁上皮は歯槽歯肉境までが歯肉で,そこから下が歯槽粘膜である.角化がない被覆粘膜となり,脂肪が多い粘膜下層が明瞭になってくる(D).

歯根膜では多数の線維が走行しており,その両端がシャーピー線維となっている様子やマラッセの上皮遺残が並ぶ様子が確認できる(EF).

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