第3章 パルスシーケンス
学習の目標
- TR/TEの違いでのコントラストの変化を理解する
- PSD(pulse sequence diagram)を理解する
- k空間について理解する
- 各撮像法の基本原理を理解する
- 各撮像法のバリエーションやそれぞれの信号特性・コントラストを理解する
- その他,各撮像法の応用技術について理解する
1 SE(spin echo)法
1)SEの基礎
RFパルス(90°パルス)を1つ印加することでFID信号が発生する。このFID信号を2つ目のRFパルス(180°パルス)で再収束させ,形成される信号をスピンエコー(SE)信号とよぶ(第1章 1)。このSE信号を収集し,画像化するシーケンスをSE法とよぶ。
2)TR/TEとコントラストの関係
第1章 1で説明したようにMR信号は,「原子核密度」+「T1成分」+「T2成分」+「プロトン密度成分」+「拡散」+「灌流」+「磁場の不均一性」…など複数の要素で成り立っている。そのため,T1強調画像を撮像する場合には,T1コントラストが高くなるようにする必要がある。また,T2強調画像を撮像する場合には,T2コントラストが高くなるように,プロトン密度強調画像を撮像する場合には,T1・T2コントラストの両方が低くなるように撮像条件を設定する必要がある。
緩和曲線の横軸の“時間”は,T1緩和曲線では“TR”が,T2緩和曲線では“TE”が関連する。また,縦軸の縦磁化と横磁化は“画像の信号強度”と同等として考えることができる。
例えば,図3-1-1に示すように2つの組織がある場合,T1コントラストが高くなる(強調される)のはTRが比較的短い設定のときであり,T2コントラストが高くなる(強調される)のはTEが比較的長い設定のときである。したがって,T1強調画像を撮像する場合には,TRもTEも短く設定する必要がある。
次に,T2強調画像を撮像する場合には,T1コントラストが低く,T2コントラストが高い方がよいので,TRもTEも長く設定する必要がある。
最後に,プロトン密度強調画像を撮像する場合には,T1・T2コントラストの両方が低くなるように撮像条件を設定する必要がある。そのため,T1コントラストもT2コントラストも低くするために,TRは長く,TEは短く設定する必要がある。また,TRが長いほど,TEは短いほど,画像の信号強度は高くなる。
GRE法を使用する場合にはフリップ角もコントラストや信号強度に関係するため注意が必要である(本章3 GRE法)。
90°パルス印加終了後に縦緩和と横緩和は同時に発生するが,縦緩和に関連するT1値は横緩和に関連するT2値より必ず長くなる(図3-1-2)。
シーケンスにより異なるが,TR・TEについて長いまたは短いとされる設定時間の目安を表3-1-1に示す。
赤線は各TR,TE の場合でのT1 またはT2 コントラスト(信号強度の差)を示す
90°パルス印加終了後に縦緩和と横緩和は同時に起こるが,縦緩和(T1 値:実線)は横緩和(T2 値:破線)より必ず長くなる
3)PSDとk空間へのMR信号充填方法
MRI撮像はRFの照射と傾斜磁場のスイッチングなどのタイミングをうまく組み合わせることで画像が取得される。この進行を表に示したものをPSD(pulse sequence diagram)とよぶ。
k空間(p27)は家にある“タンス”をイメージしてほしい(図3-1-3)。タンスにある引き出し1つずつが,1つのスライス断面に相当する(図3-1-4)。このタンスの引き出しのすべてにMR信号が満たされた後,フーリエ変換を実施することで,MR画像として表示可能になる。
簡略化のため,図では位相マトリックス数が10 列しかないが,臨床では128 から512 程度が選択されることが多い
最初に,図3-1-5の①に示すようにスライス選択傾斜磁場(Gs)を印加して,MR信号を充填するスライス断面を選択する。その後,図3-1-5②に示すように位相エンコード傾斜磁場(Gp)を印加して,一番上の棚からMR信号を充填する位相エンコード面(小箱)を選択する。その後,図3-1-5③に示すように周波数エンコード傾斜磁場(Gf)を印加して,MR信号を充填する。これで1段目の位相エンコードの棚にMR信号が充填されたことになる。そのため,1段目の位相エンコードにMR信号を充填する作業にかかる時間はTR時間である。
次の手順として,図3-1-5④に示すように新しい位相エンコード傾斜磁場(Gp)を印加して,奥から2つ目のMR信号を充填する位相エンコード面を選択する。その後,先ほどと同様に周波数エンコード傾斜磁場(Gf)を印加して,MR信号を充填する。これで奥から2つ目の位相エンコードの棚にMR信号が充填されたことになる。
これを位相エンコード数の分だけくり返すことで1スライス分のデータが充填される。これを全スライス枚数分実施し,k空間全体にMR信号を充填することで,MR画像として表示される。
k空間へのMR 信号充填方法(横断像を取得する場合)
また,この全体の工程を何回繰り返すのかを決定しているパラメータが加算回数〔number of excitations:NEXやnumber of sample(signals)averaged:NSA〕である。仮に上記の過程を1回だけ実施する場合は加算回数=1となり,2回繰り返すと加算回数=2となる。そのため,MRIの撮像時間はTR×位相エンコード数(マトリックス数)×NEXになる。
また,このように1番上の位相エンコードから順番にMR信号を充填する方法はlinear法とよぶ。それ以外に中心から充填するcentric法や,hybridな手法であるasymmetric法,中心から辺縁に向かって充填するradial法などさまざまなk空間充填方法がある(p32)。
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