実験医学別冊 もっとよくわかる!シリーズ:もっとよくわかる!幹細胞と再生医療
実験医学別冊 もっとよくわかる!シリーズ

もっとよくわかる!幹細胞と再生医療

  • 長船健二/著
  • 2014年03月06日発行
  • B5判
  • 174ページ
  • ISBN 978-4-7581-2203-0
  • 定価:4,180円(本体3,800円+税)
  • 在庫:あり
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1章 再生医療と幹細胞―密接な両者を正しく理解する

近年,幹細胞生物学の進展により,さまざまな臓器・組織の中に含まれる幹細胞が発見されている.また,ES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)やiPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞)のように受精卵や体細胞などさまざまな細胞源からも新しい幹細胞が次々と作製されている.そして,それらの幹細胞を用いた新しい医療である再生医療とその基礎研究も世界中で盛んに行われ,実際に医療の現場で臨床応用が開始されようとしている.その導入である本章では,基本となる用語の整理と幹細胞の特徴や種類についての一般論を解説する.「幹細胞」を正しく理解するため,まずはじっくり読み進めていただきたい.

Key word
再生医療,幹細胞,前駆細胞,多能性幹細胞,組織幹細胞,ニッチ

再生医療とは

再生医療(regenerative medicine)とは,細胞や組織を補充することによって,疾患により機能不全となった臓器の機能回復を図る治療法のことである.一方,従来から行われてきた医学研究の多くは,疾患の病態形成または疾患からの臓器・組織の修復のメカニズムを解明し,それらの機構を特異的に阻害または促進する治療薬を見出すものであった.よって,再生医療は,これまでのものと全く異なる医療である.医学者が喜んだのはまさにこの点で,これまで治療法がなかった疾患への有効な手だてとなる可能性を秘めているのである.

再生医療と幹細胞が同時に述べられることが多く,密接な関係にあるのは,幹細胞は無限に増殖可能で,かつ補充すべき細胞種へ分化させることができるためである.つまり幹細胞は補充すべき細胞種を必要な数だけ供給可能であり,再生医療に適した原料となる細胞種といえるのである.

1)幹細胞と前駆細胞のちがい

ではその幹細胞とはどのようなものか.幹細胞(stem cell)とは,自己複製(self-renewal)分化(differentiation)の2つの性質を有する細胞と定義される(図1A).自己複製能はそのままの状態を保ったまま増殖する能力であり,分化能は個体を形成する特殊化された細胞種へ変化する能力である.多くの幹細胞はさらに,複数の細胞種へ分化する多分化能(multipotency)を有するが,単一の細胞種のみを産み出す幹細胞も存在する.一方,幹細胞と似たような細胞種として前駆細胞(progenitor cell)と呼ばれる細胞があるが,これらは幹細胞より産み出され,幹細胞から特殊化された体細胞や生殖細胞へ分化する途中の段階にある細胞のことである.前駆細胞は幹細胞と比較し分化能が限られ,また,幹細胞と異なり無限の自己複製能は有さずに限られた分裂・増殖しかできない細胞であると一般的に考えられている(図1B).幹細胞からの分化が完了した神経や心筋など特殊化された細胞は,最終分化細胞または終末分化細胞と呼ばれる.ヒトは約200種類の細胞をもつ,などというときは最終分化細胞を指していることが多い.

2)幹細胞研究と再生医療の歴史

造血幹細胞研究から始まった

幹細胞研究の歴史は造血幹細胞に始まる.幹細胞の概念が確立されたのは,1961年にカナダの放射線学者であるティル(James Till)とマカロック(Ernest McCulloch)によるCFU-Sの研究による1).彼らは放射線照射し骨髄細胞を死滅させたマウスに,再度骨髄細胞を移植する実験を行った.すると驚くべきことに,10日後に脾臓内に複数種の血液細胞からなるコロニー(細胞集団)が形成された.この大元となった細胞をCFU(colony-forming unit)と呼んだ(CFU-SのSはSpleenのS).すなわち,一種類の細胞であるCFUが赤血球や白血球など多様な細胞に分化すること,この脾コロニーのなかにCFUが含まれ自己複製することの2点を証明した.その後の研究で,CFU-Sは造血幹細胞ではなく造血前駆細胞であることが明らかとなったが,ここで自己複製能と分化能を有する幹細胞という概念が確立された.

次に米ワシントン大学のトーマス(Edward Thomas)らが,’60年代後半に白血病の患者さんに対して骨髄移植の治療を開始し,’70年代にその手法を確立した.これは幹細胞を用いた世界で最初の細胞療法(再生医療)の臨床応用例である.ただし市民権を得たのは骨髄移植という治療法であって,再生医療という概念は現実的とは認識されていなかった.

ターニングポイントとなったES・iPS細胞の登場

その後,造血幹細胞以外の,異なる供給源,臓器,組織からも幹細胞の存在が次々と報告されるようになった.そして,1998年に米ウィスコンシン大学のトムソン(James Thomson)らによって,不妊治療(体外受精)で余った受精卵を用いてヒト胚性幹細胞(ES細胞)が樹立された.無限の増殖能と理論上全身のすべての細胞種に分化することができるヒト幹細胞が誕生したことにより,再生医療が現実のこととして認識されるようになった.そして,これが歴史の転換期となり,社会全体が幹細胞研究に対して特別な関心を寄せるようになり,現在の幹細胞研究ブームが始まった.

さらに,2007年に京都大学の山中伸弥らによって,患者さん自身の体細胞から樹立できるため,ヒトES細胞にかかわる移植後の拒絶反応とヒト胚の使用という倫理的問題の両者を解決可能とするヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)が開発され,再生医学研究が臨床応用に向けてますます注目を集め,盛んに研究されるようになった.

Column

私の研究の歩みと現在のテーマ

私は,1996年に京都大学医学部を卒業後4年間,腎臓内科医・透析医として内科診療に従事し,その後今日に至るまで,腎臓再生医療の開発をめざした研究を行っている.

まず,東京大学の大学院生時代に,マウス胎仔腎臓に糸球体や尿細管など数種類の腎上皮細胞に分化しうる多能性の腎前駆細胞が存在することを初めて示した(Osafune, K. 2006).その後,ヒトES細胞から臓器や組織の細胞を分化誘導する技術と戦略を学ぶためにハーバード大学に留学し,糖尿病に対する再生医療開発をめざしたヒトES細胞から膵β細胞への分化誘導研究を行った.そして,増殖因子処理を用いたヒトES細胞の分化誘導(Osafune, K. 2008)に加え,低分子化合物の高速スクリーニングによって同定された誘導化合物を用いた新規の分化誘導法の開発(Chen, S. et al. 2009),低分子化合物を用いたヒトiPS細胞の樹立(Huangfu, D. et al. 2008)などを研究した.2008年に留学より帰国後は,京都大学iPS細胞研究所にて,腎臓・膵臓・肝臓の再生医療を開発する研究室を主宰し,ヒトiPS細胞やES細胞から腎臓を派生させる胎生組織である中間中胚葉を経て,腎細胞や腎組織を作製することに成功した(Mae, S. et al. 2013).

現在,膵臓・肝臓の再生研究と並行して,腎臓再生の次のステップとしてヒトiPS/ES細胞から胎児期や成体の腎細胞への分化誘導法の開発とそれを用いた再生医療や治療薬開発をめざした研究を展開している.

幹細胞システムの特徴

幹細胞を幹細胞たらしめる特徴は何であろう.4つの特徴があるが,思い浮かべられるだろうか.

1)非対称分裂

幹細胞は,非対称分裂と呼ばれる細胞分裂を行い,未分化の幹細胞状態のままの細胞と,それより分化した状態の細胞の2つを産み出す(図2A).これが1つ目の特徴である.多くの臓器・組織に幹細胞システムが存在し,維持と再生にかかわっていることが明らかとなっている.

2)幹細胞の階層性

幹細胞システムは,幹細胞とTA細胞,分化細胞の3つから構成される.幹細胞より産み出されたある程度分化したTA細胞(transit-amplifying cellまたはtransient amplifying cell)と呼ばれる前駆細胞と,TA細胞からさらに分化の進んだ分化細胞である.幹細胞は無限の自己複製能を有するが,一般に増殖は遅い.一方,TA細胞は増殖を盛んに行い,さらにそれより分化した細胞種を大量に供給し,再生や組織修復に寄与する.造血幹細胞が典型であるが,このように幹細胞を頂点として,それより下流にある前駆細胞や分化細胞が枝分かれを繰り返しており,幹細胞の階層性(hierarchy)がつくられている(図2B).

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からだの中の幹細胞は静止状態で活性化を待っている

幹細胞は,発生期を含む一生涯にわたる組織の維持と再生にかかわっている.周期性,組織損傷時,増殖刺激シグナル下で分裂する無限の自己複製能を有する.器官形成・再生が終了し,組織ができあがると休眠状態に入り,基本的にほとんど分裂しなくなる.活発に増殖をするTA細胞と対照的に,幹細胞は定常状態の組織内では静止(quiescent)状態か細胞周期のG0/G1期にあるが,活性化されると盛んに増殖する能力も有する.静止状態の幹細胞は,BrdU(bromodeoxyuridine:臭素化デオキシウリジン)による核染色を長く保持するためLRC(label-retaining cell:ラベル保持細胞)と呼ばれる(第2章で解説).ラベル実験の結果によると,造血幹細胞の自己複製は,マウスでは60日に1回で,ヒト以外の霊長類では1年に1回と推測されている.

3)分化における系列決定図2C

多種類の細胞種へ分化することができる幹細胞や前駆細胞が,1種類の細胞種に向かって運命決定することを系列決定または拘束(lineage commitment)と呼ぶ.これが幹細胞3つ目の特徴である.系列あるいは系譜(lineage)とは,ある臓器や組織など特定の性質をもつ細胞集団のことであり,ある系列の中にはさらに細分化された系列が存在する.例えば,膵臓を構成する大多数の細胞は内胚葉という大きな系列の1つである膵細胞系列に属している.そしてその中に内分泌,外分泌,膵管という系列があり,さらに内分泌系列の中にもα細胞,β細胞,γ細胞,δ細胞などの系列が含まれている.

系列決定は特化(specification)決定(determination)という2段階からなる.特化した状態(specified)では,分化の方向性はおおむね決定されているが,まだ不完全な状態であり,別な系列への強い誘導が起こった場合,別の系列へも分化しうる状態である.これに対し,決定された状態(determined)とは,いかなる誘導が起こっても決定された系列以外の細胞種には分化できなくなった状態である.

系列決定は,発生期には全身の臓器で起こっているが,発生が完成してから限られた臓器のみに起こる.その中でも造血系は,出生後でも成体でも造血幹細胞から赤血球,血小板,顆粒球(好中球,好酸球,好塩基球),マクロファージ,T細胞,B細胞など多種類の細胞への系列決定が恒常的に起こっており,系列決定の分子機構の解明研究に非常によく使用されている.

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系列決定には2種類ある

幹細胞や前駆細胞がいくつかの細胞種の中から特定の細胞種へ系列決定する形式には,指令的(instructive)自律的(autonomous)と呼ばれる2種類がある.前者は,周囲の環境からのシグナルを受けてそれに従って決定される場合を指し,後者は細胞自身が自律的に決定し周囲からのシグナルがそれを支持する場合である.シグナルの作用の仕方という観点でみた場合,前者は同じく指令的であるが,後者は選択的(selective, permissive)と表される.

4)ステムネス(幹細胞性)

幹細胞の特徴の1つとして,可逆的細胞周期停止と呼ばれ,代謝状態や細胞周期的に静止状態にあることも考えられている.理化学研究所の西川伸一らは,色素幹細胞(メラノサイト幹細胞)の遺伝子発現プロファイルを解析したところ,GAPDH(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase:グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素),Actinなどのハウスキーピング遺伝子の発現低下を見出した.また,その機序の1つとしてRNAポリメラーゼIIの活性化の欠如によるmRNA転写の低下があり,この現象は,ケラチノサイト,骨格筋,精子,造血幹細胞など他の複数の幹細胞でも認められた.西川らは,幹細胞の性質の1つとして,mRNA転写の低下により代謝速度を落とし,その結果として細胞や遺伝学的な障害から自己を防御していると推測した.

幹細胞の種類

再生医療に用いる幹細胞という側面からみてみよう.大きく分けて多能性幹細胞(pluripotent stem cell)組織幹細胞(tissue stem cell)の2つのカテゴリーに分類される.

1)多能性幹細胞表1

多能性幹細胞は高い増殖能と個体を形成するすべての細胞種へ分化可能な多分化能を有する幹細胞であり,ES細胞,iPS細胞,胚性がん細胞(embryonal carcinoma cell:EC細胞),胚性生殖幹細胞(embryonic germ cell:EG細胞),mGS細胞(multipotent germ stem cell)などがこのカテゴリーに属する.ES細胞は受精卵の内部細胞塊という部分から,そして,iPS細胞はさまざまな体細胞から樹立されるが,それぞれ第4章第5章で詳細に解説する.また,mGS細胞は,精子幹細胞の一部に同定されるES細胞とほぼ同等の幹細胞であり,第3章で紹介するので,ここでは残るEC細胞とEG細胞につき解説する.

EC細胞は歴史的に初めて体外で培養された多能性幹細胞であり,奇形がん腫(teratocarcinoma:テラトカルシノーマ)と呼ばれる三胚葉の成分が混在する腫瘍から単離された幹細胞株である.EC細胞はマウスに移植することにより再び奇形がん腫を形成することや,初期胚への移植により正常な発生過程に寄与し三胚葉に分化することにより,多能性が確認された.一方,EG細胞は,将来,精子や卵に分化する胎児期の始原生殖細胞(primordial germ cell:PGC)より樹立される幹細胞のことで,ES細胞とほぼ同等の増殖能とさまざまな細胞種に分化可能な多分化能を有する.しかし,EG細胞は中絶胎児のPGCから樹立されるため,特にヒトではその樹立や使用に倫理的問題が生じる.

2)組織幹細胞

現在までに,発生期および成体の非常に多くの臓器に組織幹細胞または組織前駆細胞の存在が証明されており,それぞれの組織の形成・維持と損傷時の修復・再生に働いている.第2章第3章で解説するが,これまでに報告されている主な組織幹細胞として図3のようなものがある.発生期でも成体内でもほぼ同じ組織幹細胞が存在する臓器と,発生期と成体とで異なる組織幹細胞が存在する臓器がある.例えば骨髄の造血幹細胞や神経幹細胞は,胎児にも成体にも存在しているが,われわれが同定した胎児期の腎臓の前駆細胞は,成体では同じものは存在していないと考えられている.

3)多能性幹細胞と組織幹細胞の比較

一般的に多能性幹細胞は,培養皿上で無限の増殖能と全身の細胞種への多分化能を有している.一方,例外はあるかもしれないが,一般的に組織幹細胞はそれが属している臓器の構成細胞種への限られた分化能しか示さない.例えば,多能性幹細胞である胚性幹細胞(ES細胞)は全身のすべての細胞種へ分化すると考えられているが(図4A),組織幹細胞である造血幹細胞は,造血系を構成する赤血球と血小板および各種の白血球などの血液細胞にしか分化しない(図4B).

しかし,未分化状態の多能性幹細胞は,生体に移植後に奇形腫(teratoma:テラトーマ)という腫瘍を形成する性質がある.多能性幹細胞から作製した細胞種を移植医療に用いる場合,混入した未分化状態の多能性幹細胞による腫瘍発生の危険性がつきまとう.一方,組織幹細胞は腫瘍発生の危険性は少なく,臨床応用を考えた場合,安全性という点では多能性幹細胞より優れている.以上のように,多能性幹細胞と組織幹細胞には,それぞれ長所と短所がある(表2).なお,幹細胞を含む用語には体性幹細胞(somatic stem cell)がん幹細胞(cancer stem cell)もある.生殖細胞を除く体細胞の組織幹細胞のことを特に体性幹細胞と呼ぶ.また近年研究が盛んに行われ,その存在が提唱されているがん幹細胞と呼ばれるがんを発生させる幹細胞もあるが,これは本書では扱わない.

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医療という面から両者を比較する

組織幹細胞は,一般に培養皿上で増殖はするが,多能性幹細胞ほど旺盛な増殖力は有していない.よって,無限に増殖しすべての細胞種に分化する多能性幹細胞の方が,目的とする細胞種への分化誘導法さえ確立できれば,無限にその細胞種を供給できるため再生医療に適した幹細胞であるといえる.また,遺伝病の患者さんに細胞移植療法を行う場合に,患者さん自身の細胞を用いて遺伝子治療が必要となるが,相同組換えなどの遺伝子操作は増殖能が高い細胞でなければ行えず,多能性幹細胞がより適している.

一方,患者さん自身の組織から採取できる組織幹細胞は,倫理的な問題も少なく,拒絶反応の心配も少ない.受精卵や中絶胎児から作製される多能性幹細胞であるES細胞やEG細胞には倫理的問題が生じる.また,患者さん自身の細胞から樹立できるiPS細胞を除く多能性幹細胞では,移植後の拒絶反応の問題があり,それを防ぐために免疫抑制剤を使用すれば,感染症などの重篤な副作用の危険性が生じる.

Column

なぜ再生研究を始めたか?

私は,幼少の頃,予防接種や病院や診療所に行くのが大嫌いで,医者などの人の血を見るような仕事は絶対やりたくないと思っていた.高校生のときも大学受験直前まで工学部に入って飛行機かロケットがつくりたいと考えていた.しかし,大学入試の直前になって,「将来,人生の半分くらいの時間を費やして取り組むべきことって一体何なのだろうか?」ともう一度よく考えてみたときに,「やはり人の命を救うことではないか」と考え直し,医学部に入った.

そして,平成8年に医学部を卒業したが,当時は今と臨床研修制度が違い,ほとんどの医師が卒業するときに自分の進む専門(外科,内科,眼科,産婦人科などの診療科)を決めてから研修医を始める時代であった.私は親族に医師は1人もいないので,実家が開業医で家を継がなければならないなどの理由で自分の専門が限定されるわけではなかったので,逆に何科の先生になるのか本当に迷った.

しかし,私には1つだけ生物学的に大変興味があることがあった.それは,皮膚や腸や血液のように盛んに再生を行って細胞が入れ替わる臓器がある一方で,神経と腎臓は病気で壊れてしまうと元に戻らないことだった(当時は不勉強で再生しない臓器はその2つだけだと思っていた).再生する臓器としない臓器がなぜ存在するのか? その違いは何なのか? そして,当時は,多くの医学研究者が神経の研究に向かっていた時代であったので,私は人がやっていそうにない腎臓を選んだ.また医学的にも腎臓病はほとんど治療法がないようであった.よって,私は病気で一度壊れると元に戻らない腎臓を再生させて患者さんを助けてあげたい,それをモチベーションに腎臓内科医になることに決めた.

当時は今のように発生や再生がそれほど注目されていなかった時代であったが,将来は,腎臓を再生させる研究をする研究者になるつもりだった.しかしやはり腎臓病の患者さんが実際にどんなことで苦しまれておられるのかをよくわかっていないといけないと思い,医学部卒業後4年間は京都と兵庫の病院で腎臓内科医・透析医の臨床に従事し,その後,2000年に大学院に入学してから今日まで再生研究を行っている.

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