実験医学別冊 無敵のバイオテクニカルシリーズ:改訂 マウス・ラット実験ノート〜はじめての取り扱い、倫理・法的規制から、飼育法・投与・麻酔・解剖、分子生物学的手法とゲノム編集まで
実験医学別冊 無敵のバイオテクニカルシリーズ

改訂 マウス・ラット実験ノート

はじめての取り扱い、倫理・法的規制から、飼育法・投与・麻酔・解剖、分子生物学的手法とゲノム編集まで

  • 中釜 斉/監,北田一博,庫本高志,真下知士/編
  • 2023年03月02日発行
  • A4判
  • 204ページ
  • ISBN 978-4-7581-2262-7
  • 定価:4,950円(本体4,500円+税)
  • 在庫:あり
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第3章 研究のための飼育・管理の仕方

Ⅱ.ケージ交換の基本とコツ

庫本高志
(東京農業大学農学部動物科学科)

Ⅱ-1 注意点と手順

マウス(以下,ラットも同様)はケージとよばれる容器で飼育される(図6A).マウスが逃げ出さないように金網状のふたをする.このふたは,餌を入れるために凹みが作られており,さらに,給水のためのノズルを差し込むために,金網の一部が少し広がっている(図6B,C).

マウスはケージ内で糞尿をするので,ケージが汚れるのを防ぐために,床敷きとよばれるチップ状の木くず・紙をケージ内に入れておく.それでも,1週間もすれば床敷きが汚れてくる.ケージ内には臭気(主にアンモニア)が充満し,湿度も上がる.このようなケージ内の環境の変化は,マウスの健康に影響を与え,結果として,実験の結果がばらついたり,再現性が損なわれる可能性が出てくる.

少なくとも1週間に一度はケージ交換を行い,ケージ,金網ふた,床敷きを新しいものに交換する.同時に,餌の補充,給水びんの交換も行う.ケージ,金網ふたはオートクレーブ滅菌しなければならない.

また,ケージ交換は,マウスを直接触って観察できるよい機会である.やみくもにケージ交換するのではなく,マウスの動き,毛づや,汚れ(口,眼,肛門周囲)など,表1にまとめた観察ポイントにも注意を払う.

SPF領域外でのケージ交換についても,基本的には,ここに示した方法で行うことが望ましい.

ケージ交換の目的は,主に以下の3点に要約される.

① 飼育環境を一定に保ち科学的に適正な動物実験を行う

② マウスの健康を保つ

③ 汚物,臭気,アレルゲンなどにより引き起こされる人への影響を防ぐ

備するもの

1)器具
  • ケージ

    オートクレーブ滅菌済み,あらかじめ床敷きが敷かれている(日本クレア社のプラスチックケージ,CL-0104-3など)

  • 金網ふた

    オートクレーブ滅菌済み(日本クレア社のプラスチックケージ,CL-0104-3など)

  • 給水びん

    オートクレーブ滅菌済み(日本クレア社の給水びんセット,CM-200Sなど)

  • 給水びんのノズル

    オートクレーブ滅菌済み(日本クレア社の給水びんセット,CM-200Sなど)

  • 実験動物用床敷

    日本エスエルシー社のソフトチップやペパークリーンなど

  • 清潔で紙粉が出ないペーパータオル〔キムタオル(日本製紙クレシア社)〕
  • 作業台

    図7のように,必要なものがすべて乗る大きさが使いやすい

2)試薬
  • 消毒薬

    ラックや作業台の消毒に用いる〔エタノール,住友ファーマ社の5%ヒビテン液,日本クレア社のマイクロカット(CL-4120)やマイクロクリーン(CL-4123)など〕

  • 補充用として開封し,専用のケースもしくはバケツなどに入れておく.使用期限は製造業社の指定に従うこと.開封したものは,できるだけ早く使い切ることが望ましい(日本クレア社のCE-2,オリエンタル酵母工業社のMFやNMFなど)

  • 飲料水

    一般的には免疫不全動物でなければ水の滅菌は不要である.新鮮な水道水を用いる

ロトコール準備15分,ケージ交換1分/ケージ,後片づけ15分

1)準備
  • ❶ 必要数のケージ,金網ふたを動物飼育室に搬入する
  • ❷ 給水びんに水道水を入れノズルを装着する
  • ❸ ケージ,金網ふた,給水びん,餌を作業台に配置する(図7図8A
2)ケージ交換
  • ❶ 飼育ラックからマウスの入ったケージを取り出し,作業台に乗せる(図8B
  • ❷ 古い給水びんを取り外し,洗浄用のケースに入れる
  • ❸ 古いケージに貼られたラベルを新しいケージに貼りかえる(図8C
  • ❹ 金網ふたを開け,マウスの尻尾を持ち,マウスを取り出す(図8D
  • ❺ マウスを新しいケージに移す
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はじめての取り扱い、倫理・法的規制から、飼育法・投与・麻酔・解剖、分子生物学的手法とゲノム編集まで

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