改訂第7版がん化学療法レジメンハンドブック〜治療現場で活かせる知識・注意点から服薬指導・副作用対策まで

改訂第7版がん化学療法レジメンハンドブック

治療現場で活かせる知識・注意点から服薬指導・副作用対策まで

  • 日本臨床腫瘍薬学会/監,遠藤一司,加藤裕芳,松井礼子/編
  • 2022年03月17日発行
  • B6変型判
  • 1176ページ
  • ISBN 978-4-7581-2387-7
  • 定価:5,280円(本体4,800円+税)
  • 在庫:あり
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1.肺がん 1)小細胞肺がん

PI(CDDP+CPT-11)療法

川澄賢司
(国立がん研究センター東病院薬剤部)

【投与前】

1,000~2,000 mLの輸液

【制吐対策】

① 5-HT3受容体拮抗薬(Day 1)② アプレピタント125 mg(Day 1),80 mg(Day 2〜3)③ デキサメタゾン 9.9 mg IV(Day 1),8 mg PO(Day 2~4),④オランザピン 5 mg(Day 1〜4)(糖尿病患者には禁忌)

アプレピタント内服からホスアプレピタントへ変更する場合
【制吐対策】

① ホスアプレピタント150 mg(Day 1),② 5-HT3受容体拮抗薬(Day 1),③ デキサメタゾン 9.9 mg IV(Day 1),8 mg PO(Day 2~4)④ オランザピン 5 mg(Day 1〜4)(糖尿病患者には禁忌)

【投与例】

(Day1)

① ホスアプレピタント 150 mg+生理食塩液 100~250 mL 点滴静注(30分)(抗がん剤開始1時間前)

② 5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン 9.9 mg+生理食塩液 100 mL 点滴静注(30分)(抗がん剤開始30分前)

③ 抗がん剤投与開始

【投与後】

① 1,000~2,000 mLの輸液 ② 20%マンニトール200~300 mL,フロセミド注10 mg(必要に応じ投与)

基本事項

【適 応】

小細胞肺がん

  • 遠隔転移を伴う小細胞肺がん
  • ED(extensive disease)症例
【奏効率1)
【副作用1)

レジメンチェックポイント

  1. 投与前の確認:輸液の前負荷,制吐薬
  2. 投与量の確認
    <CDDP:腎障害時の減量基準>

    または

    <CPT-114)(投与当日)>
    • 白血球数 3,000 /mm3未満または血小板数 10万/mm3未満
    • 白血球数 3,000 /mm3以上かつ血小板数 10万/mm3以上であっても,白血球数または血小板数が急激な減少傾向にあるなど,骨髄抑制が疑われる場合

    上記の場合は,中止または延期.

  3. 点滴速度の確認

    CDDP:2時間以上かけて点滴静注.

    CPT-11:90分以上かけて点滴静注.

  4. 相互作用4)
    <CPT-11>

    併用禁忌:アタザナビル(UGT阻害作用によるCPT-11の代謝遅延により,副作用増強の恐れがある)

    CYP3A4阻害薬:骨髄抑制,下痢などの副作用が増強するおそれがある.患者の状態を観察しながらCPT-11の投与量を減量するか,または投与間隔を延長する.

    CYP3A4誘導薬:活性代謝物(SN-38)の血中濃度が低下し,作用が減弱するおそれがある.CPT-11投与期間中は対象となる薬剤・食品との併用を避けることが望ましい.

    <CDDP>

    アミノグリコシド系抗菌薬,バンコマイシン,注射用アムホテリシンB,フロセミドとの併用で腎障害リスク増大.

    アミノグリコシド系抗菌薬,バンコマイシン,フロセミドとの併用で聴器障害リスク増大.

    フェニトインとの併用でフェニトインの血漿中濃度が低下したとの報告がある.

副作用対策と服薬指導のポイント

  1. 悪心・嘔吐:CDDPは90%に急性,30~50%に遅発性の悪心・嘔吐の発現があり得る.CDDP,CPT-11では患者の症状に留意し必要に応じて制吐薬の追加を行う.
  2. 腎障害:CDDPでは予防として水分の摂取を心がけるように伝える(目安:1.5~2 L/日程度).アミノグリコシド系抗菌薬との併用で増強されることがある.尿量の確保,体重測定を行い,適宜,利尿薬を併用する.
  3. 神経障害:CDDPでは手足のしびれなどの末梢神経障害と4,000~8,000 Hz付近の高音域聴力障害が問題とされている.一般的にCDDPの総投与量が300~500 mg/m2以上になると聴器障害の頻度が高くなると報告されており,軽度なものは投与中止により軽減することもあるが,不可逆的な場合も少なくない.
  4. 下痢5)
    早発型:CPT-11の投与中あるいは投与直後に発現.コリン作動性と考えられ,多くは一過性であり,副交感神経遮断薬の投与により緩和することがある.
    遅発型:CPT-11の投与後24時間以降に発現.主にCPT-11の活性代謝物(SN-38)による腸管粘膜傷害に基づくものと考えられ,持続することがある.
    高度な下痢の持続により,脱水および電解質異常などをきたし,特に重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には,致命的な経過をたどることがある.
    • ロペラミド(2 mg/回,下痢が止まるまで2~4時間ごと),そのほか止瀉薬の投与を行う(ロペラミドなどの予防的投与や漫然とした投与は行わない).
    • 脱水を認めた場合には,輸液,電解質補充を行う.
    • 重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には,適切な抗菌薬の投与を考慮する.

文献

  • Noda K, et al:Irinotecan plus cisplatin compared with etoposide plus cisplatin for extensive small-cell lung cancer. N Engl J Med, 346:85-91, 2002
  • 「Drug Prescribing in Renal Failure」(Aronoff GR, et al, eds), American College of Physicians, 2007
  • 「改訂第2版ハイリスクがん患者の化学療法ナビゲーター」(高野利実,尾崎由記範/編),メジカルビュー社,2017
  • カンプト®点滴静注 医薬品インタビューフォーム
  • 「がん診療レジデントマニュアル 第8版」(国立がん研究センター内科レジデント/編),医学書院,2019
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  • 日本臨床腫瘍薬学会/監,遠藤一司,加藤裕芳,松井礼子/編
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  • 在庫:あり
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