せん妄診療実践マニュアル 改訂新版

せん妄診療実践マニュアル 改訂新版

  • 井上真一郎/著
  • 2022年09月28日発行
  • B6変型判
  • 278ページ
  • ISBN 978-4-7581-2395-2
  • 定価:3,850円(本体3,500円+税)
  • 在庫:あり
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書 評

厚坊浩史
(がん研有明病院 主任公認心理師)

お世話になってばかりの井上真一郎先生より本書の書評のご依頼を頂戴した.筆者は非医師であるため,その視点から書評を行ってみたい.

筆者は公認心理師であり,総合病院精神科勤務経験が17年,そのほとんどの期間をチーム医療の一員として業務を行ってきた.医学的教育を十分に受けていない公認心理師であっても,せん妄はチーム医療の共通語であるため,最低限以上の知識は求められる.人見知りな人や集団行動が苦手な人であっても,ある程度標準化された「せん妄対策」という職種を超えた役割意識をもつことで,チーム医療の一員として燃え尽きることなく業務を遂行できたという方は多いであろう.筆者もその一人である.「せん妄対策」を学ぶのに役に立った専門書は数多くあるが,井上先生が出版された前版もかなりの情報量であった.その知識をもとに「これはせん妄ですよ」「それはせん妄による症状ですね」と説明を尽くし,はや数年が経過した.時代は流れ,「せん妄かどうか」を尋ねられる件数は減り,「きっとせん妄だろうけど,どういった要因によるせん妄でしょうか」「せん妄への対策をご教示ください」に変わってきた.そう,「せん妄」という言葉や臨床像は非常に幅広く知れ渡ってきたのである.つまり,せん妄かどうかは,精神医療や緩和医療の専門家でなくてもアセスメントと初期対応ができるようになってきたのである.それ自体は非常に喜ばしいことである.

一方,せん妄診療に関わるわれわれの目線に立つと「これはせん妄と言うんですよ」と答えておくだけで羨望と尊敬の眼差しでみられる時代はそろそろ終わりに近づいているようだ.われわれも知識をアップデートしないといけない.そんなときに本書はうってつけである.とにかく実例に基づいた多様な色彩を示すせん妄を,さまざまな角度から記した具体例が多い.「不穏時指示は理解したけど,夜中に与薬を行いたいときは何時までにどうしたらいいの?」や「術後一定期間たったとき,お薬はどうしたらいいの?」といった,一瞬答えに窮するような質問の答えも記されている.

本書はわれわれを「せん妄マスター」ならびに「せん妄バスター」へと格上げしてくれるに違いない.せん妄患者の症状改善とQOL向上をはかることができたとき,われわれも専門職としての役割やQOLが向上するであろう.あと10年安泰でいるためにも,職種問わずぜひ本書を手にとってみて欲しい.

『日経メディカル(情報パック)』より転載

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せん妄診療実践マニュアル 改訂新版

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  • 井上真一郎/著
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