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第1章 心臓の仕組みと電気の流れ
3 心臓の刺激伝導系
1正常な電気活動
- 心臓はいわば筋肉の袋ですが,この筋肉(心筋)は,ほかの筋肉と異なり,特殊な働きをもっています.つまり,外部からの刺激がなくても,自分自身で興奮(収縮)をくり返す働きです
- 自分自身で興奮するには,歩調すなわちペースメーカとしての役割を担う組織が必要になります.それが右房の上方にある洞結節です
- 洞結節で起きた電気的興奮(刺激)が左右の心房筋を伝わって房室結節へ入り,ヒス(His)束,左・右脚,そしてプルキンエ(Purkinje)線維を介して左右の心室筋へ規則正しく伝えられます.このような電気の伝わる仕組みのことを刺激伝導系と呼びます(図1)
- 心房筋と心室筋では0.1秒以内の非常に速いスピードで興奮が伝わりますが,房室結節からヒス束までは約0.2秒と伝達時間が長いのが特徴です
- 一連の刺激伝導系による電気の流れに何らかの異常が生じ,心拍(脈)が乱れる病気のことを不整脈と言います
2異所性自動能
- 心臓内には,洞結節が正しく歩調をとれなくなった場合や,途中で伝導が途絶した場合に,洞結節より下位の部位(下位中枢)が自動的に電気を流し,洞結節のような働きをすることがあります.この性質のことを異所性自動能と呼びます
- 異所性自動能には,期外収縮のように洞結節調律(50〜100/分)よりも速く(>100/分)出現するものもあれば,補充収縮のように心拍を補うためにゆっくり(<50/分)出現するものもあります(期外収縮,補充収縮については第3章-3参照)
- 異所性自動能は自律神経活動,特に交感神経活動の過緊張で生じやすく,またそれ以外にも,高血圧の上昇,貧血,冠動脈病変,心筋収縮障害,循環血液量の急激な減少,体液電解質(カリウム,カルシウム)の変動,アシドーシスによる血液pHの上昇などでも生じます
3撃発活動(トリガード・アクティビティ)
- 洞結節からの正常調律において,何らかの原因が引き金となり,異常興奮(脱分極)がくり返し起き,頻脈性不整脈が誘発されることがあります.この現象を撃発活動(トリガード・アクティビティ)と呼びます(分極,脱分極については第3章-5参照)
- 撃発活動は,正常な脱分極直後の再分極の過程で生じ,その時相によって早期後脱分極と遅延後脱分極に分けられます
- 引き金の原因として,心筋虚血再灌流や薬物中毒などがあります
(One-point Advice)刺激伝導系のキーパスウェイは洞結節と房室接合部!
心臓に電気が流れる仕組みでどの地点がもっとも重要かは,図1をみるとよくわかります.1つは発電所としての役割を担う洞結節であり,もう1つは中継地点としての役割を担う房室接合部(房室結節とヒス束)です.これら以外のパスウェイ(伝導路)は単一でなく複数あるため,1つが障害されてもバックアップ体制をしくことができ,伝導する時間は長くなるものの,終点(心室筋の末端)まで電気はしっかり流れます.心房筋と心室筋では,一部の心筋が障害されても,全体的な刺激伝導系への影響は少なくなっています.
