Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 新装版〜日常診療にどう活かすか?漢方薬の特徴、理解の仕方から実践まで解説。さまざまな疑問の答えがみつかる!

Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬 新装版

日常診療にどう活かすか?漢方薬の特徴、理解の仕方から実践まで解説。さまざまな疑問の答えがみつかる!

  • 浅岡俊之/著
  • 2026年04月03日発行
  • A5判
  • 197ページ
  • ISBN 978-4-7581-2451-5
  • 4,400(本体4,000円+税)
  • 在庫:予約受付中
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第4章 主要な生薬と処方

4 附子 使用条件のある強力な生薬

【生薬DATA】附子

【主治】①寒 ②疼痛

キンポウゲ科ハナトリカブトまたはオクトリカブトの塊根

薬性:熱,燥

守備範囲:四肢

附子は,寒を去り疼痛を緩和するために用いられる生薬です.附子を含む約束処方の他にも,条件付きで附子を追加使用する指示のある処方が多くみられます

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

構成生薬:麻黄,附子,細辛 [出 傷寒論]

適応:裏寒

ポイント:感染症などで裏寒という状態に陥った場合に適応となる処方です.裏寒の症例では手先足先に強い冷えを認める場合が多く,それを急速に改善するために附子が配合されます.

真武湯(しんぶとう)

構成生薬:茯苓,蒼朮,芍薬,生姜,附子 [出 傷寒論]

適応:裏寒の下痢,腹痛

ポイント:感染症後の不調や飲食,寝冷えなどにより,腹部が冷えた結果もたらされる下痢,腹痛に用いられます.茯苓,蒼朮が下痢に,芍薬は腹痛に,生姜は冷えと水の停滞に対応しています.附子は主として四肢の冷え,疼痛に用いられる生薬ですので,このような状況では四肢も冷えるから配合されると考えられます.

【症例へのアプローチ】下痢のいろいろ

考え方:夏場などには冷たいものを食べすぎて下痢をするということはあるでしょう.また,クーラーをかけっぱなしにして寝てしまったときにも同じようなことが起こります.冷えた結果の症状と考え,真武湯を用います.このようなケース,必須な所見であるとは言えないものの,多くの症例では沈脈になっています.また,冷えが原因であることを確認するため(病歴だけからは断定できないこともある),舌の色調を確認します.冷えていれば赤味は薄くなります(青白くなるときもある).もし逆に舌の色調が濃い赤味を呈していれば診断は裏熱となり,真武湯とは逆の性質をもつ処方が適応となります.

必須となる身体所見:舌の赤味が薄いこと

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

構成生薬:桂枝湯[桂枝,芍薬,生姜,大棗,甘草],蒼朮,附子 [出 本朝経験方]

適応:四肢の疼痛,冷え

ポイント:桂枝湯に四肢の疼痛を主治する蒼朮,附子を加えた処方です.桂枝湯という処方は実に多くの目的で用いられる処方ですが,その主治の1つに「四肢の疼痛」があります.その目的達成をより確実なものにするため,蒼朮と附子を加味(生薬をトッピングすること)した処方です.桂枝湯自体が温性の処方であり,そこに熱薬である附子が加えられているわけですので,当然適応者に冷えがあることが前提となります.

【症例へのアプローチ】四肢の痛み

考え方:変形性関節症などでは,冷える時期になると関節の疼痛が増悪することはよく経験されます.疼痛部位に熱感はなく,触ってみるとかえって冷えている印象を受けることさえあります.このようなケースで選択すべき生薬,処方はどのように考えればよいのでしょうか.疼痛に対して用いられる生薬としては麻黄,桂枝,附子,あるいは麻黄と薏苡仁の組み合わせが代表的なものです.熱があり腫脹もあるとなれば,麻黄と石膏の組み合わせも候補に挙がるでしょう.しかし,冷えが原因となっているケースでは,前述の桂枝加朮附湯あるいは麻杏薏甘湯薏苡仁湯に適応があると考えられます.漢方薬の適応は疾患名では表わすことができません.あくまでもそのときの状態が決定するわけですので,冷えや熱感という情報が処方を選択するうえで必要不可欠になります.

必須となる身体所見:局所の寒熱の確認

八味地黄丸(はちみじおうがん)

構成生薬:六味丸[地黄,山薬,山茱萸,茯苓,沢瀉,牡丹皮],桂枝,附子 [出 金匱要略]

適応:冷えを伴う腎虚の諸症状

ポイント:この処方は,六味丸(第5章-4参照)に桂枝と附子を加味したかたちになっています.つまり,「六味丸の適応者だが,手足に冷えもあるので桂枝,附子を加えた」ということです.地黄,山薬,山茱萸は身体に水を湛える目的で配合され,茯苓,沢瀉はめまい,ふらつきといった愁訴に対応しています.また牡丹皮は少腹不仁(下腹部の疼痛や,不快感)を去る目的で配合されています.いずれも高齢者でまま観察される愁訴に対応しています.

【臨床のヒント】附子を選択する際の決まりごと

附子の原料はトリカブトであり,いくら毒性を減じる加工がなされているとはいえ,その使用に際してはルールがあります.それは「脈が沈であること」です.附子を主要な構成生薬として用いている処方には,例外なく沈脈であることが求められています.もともと附子は症例ごとに使用量を調節する生薬で,現在でもそのために単味の附子が用意されています(例えば,桂枝加朮附湯を用いる際に不足と判断されれば,調整用の附子を加える).この場合,過剰になりすぎていないかどうかの判断も脈の浮沈で察知することができます.

かぜの考え方

かぜへの対応方法は,まず現時点で身体の状態がどのステージにあるかの把握から始めます.

(1)かぜの進み方

かぜは漢字で書けば風邪.風とは外因性,邪とは疾病という意味.すなわち,かぜは外からやってきて,われわれの身体にとりつくと考えられました.だから,かぜは表からスタートします(図4-2).

表には表寒表熱の2通りが考えられますが,現実には表寒で発症する症例が多いため,表寒向けの処方には種類が多くあり,表熱向けのものは少数に限られます.

表でとどまらない場合,次には半表半裏へと進みます.半表半裏には熱しかありません.

それでも治癒しない場合には裏熱,あるいは裏寒へと進行します.

教科書ではもう少し細かい進行が説かれていますが,現実にはそのとおりに進行しない場合も多く,ここでは簡潔に解説します.大切なことは,進み方よりも,現時点でどのステージにいるかを把握することです.なぜなら,ステージごとに対策が決められているからです.

(2)ステージにより症状は異なる

まず症状からステージを考えます(図4-3).それぞれのステージに特徴的な症状は以下のとおりです.

図4-2 かぜの進み方
かぜは身体の外からやってきて,徐々に内部に侵攻すると考えます.したがって,症状も表から裏に向かって変化していきます.表には表寒,表熱の2通りがあり,その次のステージは半表半裏の熱となります.そして治癒しなければ裏熱あるいは裏寒に至ります.また,症例によっては表寒や表熱,半表半裏の熱を経ず,いきなり裏寒に陥るものもあります.これを「直中の少陰(じきちゅうのしょういん)」と呼びます.
図4-3 ステージにより症状は異なる
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