やさしくわかる心エコーの当て方・見かた

やさしくわかる心エコーの当て方・見かた

  • 野間 充/著
  • 2021年02月26日発行
  • A5判
  • 200ページ
  • ISBN 978-4-7581-0762-4
  • 定価:4,620円(本体4,200円+税)
  • 在庫:あり
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第3章 心エコーで心臓を観察・計測してみよう

5 心窩部断面での観察・評価

心窩部は下大静脈の描出が主体ですが,右室肥大の有無を評価するために右室壁厚の計測をする場合もあります.また,大動脈弁逆流症の重症度評価として腹部大動脈の血流速度を評価する場合や,肺気腫のように胸骨左縁から描出できない場合にも役立ちます.

また,救急の場合に仰臥位で急いで検査するときも心窩部からの観察が役立つことがあります.

下大静脈長軸断面

  • 下大静脈(IVC)の径と(図1)呼吸性変動から右房圧を推定します().
    • 呼吸のしかたとしては,口を閉じて鼻を鳴らすように息を吸うと胸腔内圧が下がって下大静脈への還流が増加して拡大します(図1C).
    • 逆に鼻から吐き出していくと小さくなります(図1D).
  • 人工呼吸管理下にあり計測できないときは,「下大静脈が小さい(右房圧が低い)のか?」「逆に大きい(右房圧が高い)のか?」を鑑別する程度にとどめておくとよいでしょう.
  • 下大静脈径が12~21 mmで吸気時に50%以上小さくなる場合に右房圧を3 mmHgと推定し正常と判定します.しかし,高齢者では8mm程度であることも少なくありません.径が正常でも呼吸性変動が少ない場合や,>21 mmで呼吸性変動が小さい場合にはおのおの8および15 mmHgと推測します().

下大静脈短軸断面

  • 下大静脈の径が小さい場合や観察しにくいときは短軸断面を描出して計測することも可能です(図2).
  • 第2章-2の描出で説明しましたが,短軸断面で下大静脈が円形,かつ呼吸性変動が少ないときも右房圧が高いことが疑われるので,短軸断面でも確認しましょう.

心窩部短軸断面

  • 正常な場合に心窩部で短軸断面を描出することは通常困難です.しかし,肺気腫などで胸骨左縁からの描出が困難な場合には心窩部からの描出を試みてください.
  • 肺気腫の患者の一例を図3に提示します.心窩部の正中部よりやや右の肋骨弓に近いところ(図3A)で,プローブを右肩と反対側にティルティングすると大動脈弁短軸断面が描出され(図3B),プローブを立てるようにすると左室短軸断面が描出されます(図3C).

心窩部4腔断面

  • 下大静脈の長軸断面からプローブを時計方向に回転させながら頭側にスライドさせると4腔断面(図4)が描出できることがあります.
  • 右室側壁の壁厚を拡張期に計測します.正常では5 mm未満です.右室肥大の診断には必須ですので必ず計測できるようになっておきましょう.
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