できる看護師の頭の中のぞいてみた〜看護実践と成長のアプリを頭に入れて、今日から直観的に行動できる!

できる看護師の頭の中のぞいてみた

看護実践と成長のアプリを頭に入れて、今日から直観的に行動できる!

  • 池上敬一/著
  • 2025年05月27日発行
  • B5判
  • 296ページ
  • ISBN 978-4-7581-0978-9
  • 3,300(本体3,000円+税)
  • 在庫:あり
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第1部 「できる」看護師の心と頭、そして「できる」看護師アプリ

1 「できる」看護師の心の構造

私たちは覚醒しているときはいつも何かを感じたり、考えたり、こうしようと決心したり、会話したり、他者と互いに共感し合ったりしながら過ごしています。このような活動の中で私たちは心の声を出しながら感じたり、考えたり、決心したり、会話したり、共感し合ったりしながら過ごしています。

「できる」看護師も朝起きてから夜眠りにつくまで、頭の中で心の声を出しながら生活しています。朝起きたときは1人の「わたし」として心の声を出し、看護の仕事中は「看護師」として心の声を出しながら活動しています。

以下、まず「できる」看護師がどのような心の声を出しながら1日を過ごしているのかを見てみましょう。

「できる」看護師の1日の過ごし方

「できる」看護師の1日、すなわち朝起きてから仕事に出かけるまで、看護の仕事をしている時間、そして仕事を終え帰宅し寝るまでにどのような心の声を出しているのかを見てみましょう(図1)。

a.ある1日の流れ

「できる」看護師は朝起きてから看護の仕事を始めるまでに図1の左上にあるような「わたし」の心を使っています。

  • ベッドの中で:「もう起きる時間だ」「今日も頑張るか」
  • 朝食をとりながら:「今日はどんな予定だっけ?」「そうそう、久しぶりの食事会だ」
  • 出勤しながら:「今日はお昼前に会議があって、午後は1時間の研修会があるな」

「できる」看護師は、自宅を出てナースステーションに入るまでのどこかの時点で心を「わたし」の心から「看護師」の心に切り替えます。この切り替えは意識的ではなく、ほとんど習慣として自動的に行われます。「看護師」の心のはたらきは図1の右に示しました。

「できる」看護師は患者さんのこれまでの人生から、今の生活や病気のことを物語としてとらえ、今・ここで最適な看護を患者物語の中で実行します。また退院後の患者さんの生活は患者物語の延長としてごく自然にイメージし、その物語の中で退院後の看護をリハーサルしています。

  • ナースステーションで:「さて、今日の受け持ち患者さんはどんな患者さんだろう」「カルテから情報を拾って、情報を膨らませて患者さんの物語にしておこう」「お話にしておけば継続性もあるし覚えやすいしね」「さて、リハーサルができたから患者さんのところに行こう」
  • 患者さんのところに行って:山田和子さん(82歳女性、腎盂腎炎で入院、週末に退院予定、基礎疾患は高血圧症)を見て「ちょっと元気がない感じだな」「何か起きたのかな?」「リハーサルで想定した疾患がなければいいけど…」、「山田さん、お変わりありませんか?」「えぇ、元気よ」、「そう? 何だか元気がないように見えましたけど」「そうなの、じつはちょっとね」、「顔色はいいし、息づかいも姿勢もいいみたいだけど」「ちょっと脈をみましょうね」、山田さんの橈骨動脈を触れると今まではなかった脈の不整があることに気づく、「不整脈だ、心房細動かな、心電図をとらなきゃ」

仕事を終え予定を消化し帰宅します。

  • お風呂に入りながら:「やれやれ、今日も仕事が終わった」「今日は山田さんの不整脈をいいタイミングでとらえることができたな」「偉いぞ、自分」、「今日も楽しかったな、仕事も食事会も」「心不全ステージA※1の山田さんの心房細動発作(心不全ステージB)を発見できたのはよかったな」「リハーサルの賜物だ」「やったね」「いい気持ちで眠りにつくことにしよう」

翌朝目覚めて

  • 「よく眠れたな」「いい気持ち」、昨晩、寝る前に勉強した心房細動の知識を思い出しながら、「そうそう、心房細動の臨床、頭に入ったな、よしよし」「また知識ラインが拡張したぞ」
  • b.「できる」看護師の特徴

    「できる」看護師の心の声の出し方を1日の時系列で見てみると、次のような特徴が浮かび上がってきます。

    • ①「できる」看護師は1日の中で「わたし」の心と「看護師」の心を使い分けています。「できる」看護師はそうすることで心の平静を保っています。
    • ②「できる」看護師は心を使って「速い思考」※2で看護実践を行っています。「速い思考」が使えない場面では思考モードを「遅い思考」※3に切り替えて、その場の状況に応じた看護実践を編み出しています。
    • ③「できる」看護師は看護実践を振り返ることで自分の成長を確認しています。また1日の看護を総括し、印象に残った看護や自分に足りない知識を得るために勉強したことをまとめ、寝る前に何度も唱えることで長期記憶をつくる※4ことを習慣にしています。
  • ※1 心不全ステージA、心不全ステージB:第4部3知識カードの③トレンド判断カード参照。
  • ※2 速い思考:ほとんど努力を必要としない、または必要であってもわずかな思考で、無意識のうちに(自動的に)はたらく。例:車のクラクションが聞こえたのでそちらを振り向き状況を察する、きれいな風景写真を見てうっとりする、2+2の計算、空いた道路で車を運転するなど〔「ファスト&スロー 上下巻 あなたの意思はどのように決まるか?」(Kahneman D/著、村井章子/訳)、早川書房、2014〕。
  • ※3 遅い思考:努力と時間を要する思考。論理的で、意図的で、複雑な計算をするなど、意識的にはたらく。この思考は注意力を要し、注意が逸れてしまうとうまくいかない。例:学校の試験問題を解く、17×24の計算、教科書を初めて読み内容を理解するなど〔「ファスト&スロー 上下巻 あなたの意思はどのように決まるか?」(Kahneman D/著、村井章子/訳)、早川書房、2014〕。
  • ※ 4 長期記憶をつくる:学習とは長期記憶をつくること(心理学)。長期記憶は意味記憶、エピソード記憶と手続き的知識がある。長期記憶をつくる、 とは新しい神経回路網をヘッブ学習により構築すること(認知脳科学)。ここでは長期記憶をつくるための手続きを記述している。
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