書 評
松浦江美
(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 保健学専攻看護実践科学分野 教授)
皆様は、「できる」看護師になりたいと思った経験はありませんか? 私は、新人看護師のときに心が折れそうな経験をたくさんしました。「できる看護師の頭の中のぞいてみた」は、学生や新人看護師のときに出会っていればと思わずにはいられない一冊です。
本書は、私たち人間が生まれながらに備え持っている共感脳と物語思考を使った学び方ができるようになっています。この能力を使わない手はありません。我々は2年ほど前から、「できる」看護師の頭をつくる学び方を成人看護学などの講義・演習・実習で活用しています。
本書では、これまで暗黙知とされていた「できる」看護師の思考過程・看護実践の台本が6つのシーン(リハーサル~ふりかえり)で構成されています。6つのシーンでは、シーン毎にゴールが設定してあり、各シーンで使用する知識カードが合計20枚あります。本書第4部では、看護実践スクリプトと知識カードの構造と使い方が解説してあります。我々の講義・演習では、患者物語をもとにシーン1からシーン6を繰り返し実践しています。また、学生は、シーン毎に使用する知識カードがあるため、カードを活用しながら最悪の事態とその対処法(プランB)を想定しながら看護実践へとつなげていきます。つまり、学生の時からプランBを想定して、繰り返しヘッブ学習する(同時に複数の神経細胞を発火させ、それらの結びつきを強化させる)ことで「できる」看護師の知識ライン(頭の構造)が獲得でき、直観的に看護実践ができるようになります。実習でもこの方法で行い、知識ラインの獲得・拡張を実感しています。
本書は、教育現場での活用はもちろんのこと、「できる」看護師を目指す看護学生や若手看護師が主体的に学び、看護実践能力の獲得ができるよう導いてくれるお勧めの一冊です。また、書籍特典として、看護業務や自主的な学習に使用できる特典PDFは理論の詳細や医療教授システム学に関する追加解説と貴重なものばかりで、より学びを深めることに活用できます。
