工藤式 理学療法の王道 膝関節〜解剖学×運動学×臨床知による評価と介⼊

工藤式 理学療法の王道 膝関節

解剖学×運動学×臨床知による評価と介⼊

  • 工藤慎太郎/編
  • 2025年11月14日発行
  • B5判
  • 264ページ
  • ISBN 978-4-7581-1010-5
  • 6,600(本体6,000円+税)
  • 在庫:あり
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1 変形性膝関節症 膝前面部痛に対する理学療法

理学療法評価のポイント

膝蓋大腿関節症の病態運動学に基づいて5つの重要な点に対する理学療法評価のポイントを整理する.

1)膝蓋大腿関節の形態の評価

膝蓋大腿関節の低形成は膝蓋大腿関節症と関連する.そのためX線の軸写像にて大腿骨内/外側顆の大きさを評価する(図2).また膝蓋骨高位も膝蓋大腿関節症の発生に関与することが知られている.そのため,Insall-Salvati ratioを用いて膝蓋骨高位の評価を行う(図3).通常では,1.3以上を膝蓋骨高位と判断するが,膝蓋大腿関節の関節症変化の発生という観点では1.14がcut off pointになる6)

2)膝蓋大腿関節の安定化機構の評価

膝蓋大腿関節の安定化機構は内側膝蓋大腿靱帯に代表される膝蓋骨と大腿骨を結ぶ靱帯が担っている.この靱帯と呼ばれる構造の評価はMRI検査か超音波検査を用いて行う(図4).

またストレス検査として,膝蓋骨を外側に圧迫することで脱臼に対する恐怖感を訴えるかのApprehension testを行う(図5).

一方,内側膝蓋大腿靱帯は大腿四頭筋,特に中間広筋の停止腱が膝蓋骨を介して内側に広がったように観察される(Chapter 1-1参照).そのため,安定性を評価する際は靱帯を評価するだけでなく,靱帯と呼ばれる結合組織に張力を与える中間広筋や内側広筋の評価も必要になる.

膝蓋大腿関節症では内側膝蓋大腿靱帯が機能不全に陥ると,この靱帯に緊張させるためか中間広筋の筋緊張が高くなっていることが多い.これにより膝蓋骨は近位に引き上げられ,膝屈曲時の膝蓋骨の屈曲を減少させると考えられる.中間広筋の緊張を単独で評価することは難しい,かつ大腿四頭筋の中で中間広筋のみ筋緊張が亢進するとは考えにくい.そのため,臨床においては大腿四頭筋の伸張性を評価するEly testを行う(図6).

さらに,大腿四頭筋の深層かつ関節包の近位側には大腿前脂肪体と呼ばれる疎性結合組織が拡がる.この疎性結合組織の柔軟性を評価することも臨床上は重要である(図7).

文献
  • 6) Haj-Mirzaian A, et al:Association of patella alta with worsening of patellofemoral osteoarthritis-related structural damage: data from the Osteoarthritis Initiative. Osteoarthritis Cartilage, 27:278-285, 2019
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工藤式 理学療法の王道 膝関節〜解剖学×運動学×臨床知による評価と介⼊

工藤式 理学療法の王道 膝関節

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  • 6,600(本体6,000円+税)
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