あらゆる診療科で役立つ皮膚科の薬 症状からの治療パターン60+3 改訂版〜診断と治療の型が身につく!

あらゆる診療科で役立つ皮膚科の薬 症状からの治療パターン60+3 改訂版

診断と治療の型が身につく!

  • 梅林芳弘/著
  • 2021年05月06日発行
  • A5判
  • 176ページ
  • ISBN 978-4-7581-2372-3
  • 定価:4,290円(本体3,900円+税)
  • 在庫:あり
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第1章 痒みのある疾患

❶ 繰り返す痒い皮疹

26歳男性.ものごころついた頃から,痒い皮疹を繰り返している.最近,また悪化したので受診した.父と兄が同症.喘息の既往あり.

適切な外用薬は?

  1. ヒルドイド®ソフト
  2. プロトピック®
  3. キンダベート®
  4. アンテベート®
  5. デルモベート®
  1. アンテベート®

診断のパターン

  • 幼小児期より慢性の経過
  • (アレルギー疾患の)家族歴・既往歴
  • 左右対称な皮疹
  • 瘙痒(掻破痕)
アトピー性皮膚炎

治療のコツ

アトピー性皮膚炎をはじめとする湿疹の治療の基本はステロイド外用薬である.これを使いこなすためには,そのランク(上からstrongest,very strong,strong,mildの4つ)1)と,各ランクに属する商品を最低1つは記憶する必要がある.「~ベート」の商品で統一すると表1のようになる.体幹・四肢(大雑把には首から下)にはvery strongのアンテベート®(選択肢D)を使用する.

ベトネベート®は,リンデロン®-Vと同成分(ベタメタゾン吉草酸エステル)で,選択肢にこれがあれば選んでも間違いではない.キンダベート®(選択肢C)のランクはmildで,その名は恐らくKinder(子供)に由来する2).デルモベート®(選択肢E)をごく短期間使用してアンテベート®に切り替えたり,逆にアンテベート®で寛解させてからプロトピック®(選択肢B)を長期使用することもあるが,薬剤変更のタイミングを判断する専門的技倆を要する.ヒルドイド®ソフト(選択肢A)などの保湿剤は,乾燥のみの皮疹に用いる.写真のように炎症を有する皮疹に使っても効果は得られない3)

落とし穴・専門医へ送った方がいい場合

アトピー性皮膚炎の恐らく最大の落とし穴は,合併しやすいKaposi水痘様発疹症である.ステロイドの使用は危険であり,発熱があれば,それを疑った方がよい.

体幹の湿疹(アトピー性皮膚炎を含む)
strong~very strongのステロイド外用薬

註記・文献

  • キンダベート®が属するランクは,ガイドライン1では“medium”,「今日の治療薬 2021」(南江堂)では“mild”,と表記されているが,本書では“mild”に統一している(表8).
  • 従来,小児に対するステロイド外用薬は成人よりワンランク下げる,という考え方であった.しかし,最近の考え方は「特に乳幼児,小児において,年齢によってランクを下げる必要はないが,短期間で効果が表れやすいので使用期間に注意する」である(ガイドライン1).よって,「キンダー(Kinder:子供)にはキンダベート」と言いにくくなった.
  • 譬えて言えば,火事の現場で火の用心を唱え,齲歯に対して懸命に歯磨きするようなもの.
    ガイドライン
    • 1 加藤則人ほか:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018.日皮会誌,128:2431 - 2502,2018
    参考文献
    • 「アトピー性皮膚炎診療が楽しくなる!」(竹原和彦/著),南江堂,2011(医学書としては破格に面白い本)
    • 梅林芳弘:「アトピー性皮膚炎」と思うが?「Common disease から入る皮膚疾患」(土田哲也/編),pp104 - 111,文光堂,2012
    • 梅林芳弘:アトピー性皮膚炎の診断と鑑別疾患.Mebio,32:44 - 50,2015
      ②③は,アトピー性皮膚炎の鑑別疾患について)
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