第1章 胸部X線を見逃しなく読む!
3 胸膜 〜胸膜肥厚・胸水・肺過膨張はあるか?〜
中島 啓
胸膜・横隔膜の読影では,表に示すように左右の胸膜を右から順番に読んでいきます.胸膜の線を見て胸膜肥厚があるかを確認し,肋骨横隔膜角(costopherenic angle:CP-angle)の読影から胸水の有無を判断します.横隔膜の高さから,肺過膨張の有無を確認できます.

1胸膜の読影手順
まず,正常像で胸膜の読影手順を覚えましょう.
図1のように右胸膜を肺尖部から追っていき,肥厚がないかを確認します(図1①).胸膜は1本の線で構成されますが,肥厚すると線が厚くなります.そして,右CP-angleが鋭角(sharp)であること(図1②)を確認した後に,右横隔膜がドーム状であること(図1③)を確認します.右横隔膜の高さは第10〜11後肋骨と重なる高さが標準です〔肋骨の数え方は,後述の確認問題Q2で解説します〕.
次に左胸膜を肺尖部から下方に追っていきます(図1④).左CP-angleがsharpであること(図1⑤)を確認のうえ,左横隔膜がドーム状であること(図1⑥)を確認します.左横隔膜の高さは右横隔膜より半肋間下に位置するのが標準です.

2胸膜の異常所見の見分け方
胸膜を見るときの胸膜肥厚の判断については,左右の胸膜を比較して読影することがポイントです.正常では左右胸膜の線は対称性に写りますが,胸膜が肥厚すると,胸膜の線の厚さに左右差が出ます.
胸水の有無を見ることも重要です.CP-angleが鈍角(dull)の場合は胸水が疑われます.横隔膜が標準の高さより低い場合や,横隔膜が平定化(=ドーム状ではなく平らになる)している場合は,肺の過膨張が疑われます.
では,次の確認問題で,胸膜肥厚や胸水,肺過膨張(肋骨の数え方,横隔膜の高さの判断)の診断を練習してみましょう.

〈解説〉 右胸膜,右CP-angle,右横隔膜の異常はないと思われます.左胸膜を追跡すると,肺尖部から左胸膜の肥厚を認めます(図2→).胸膜は基本的に左右対称となりますので,右胸膜と左胸膜を比較すると,左胸膜が明らかに肥厚していることがわかります.また,左下肺野の透過性(=X線が物にさえぎられず黒く写ること)が低下しており(=白くなっており),左CP-angleはdullで胸水貯留も疑われます(図2◯).
本症例は,胸部CTで,全周性の胸膜肥厚(図3→)を認め,左胸水貯留(図4→)を認めたため,悪性胸膜中皮腫が疑われました.生検で確定診断後,化学療法を開始しました.




ご覧ください