分子生物学講義中継:分子生物学講義中継 Part2〜細胞の増殖とシグナル伝達の細胞生物学を学ぼう
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分子生物学講義中継

分子生物学講義中継 Part2

細胞の増殖とシグナル伝達の細胞生物学を学ぼう

  • 井出利憲/著
  • 2003年12月01日発行
  • B5判
  • 164ページ
  • ISBN 978-4-89706-876-3
  • 定価:4,070円(本体3,700円+税)
  • 在庫:あり
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因子を網羅してカスケードを覚えるだけでは,シグナル伝達の本当の意味はわかりません.Part2では,細胞増殖を例に,シグナルを受けてから細胞の性質が変わるまでに,細胞の中で実際には何が起こっているのかを講義します!

目次

1日目 生き物らしさを支えるシグナル伝達

I.シグナル伝達とは?

  • 1.刺激に対する応答は生物の特徴
  • 2.何が生物として特徴的なのだろう
  • 3.個体における刺激の受容とシグナル伝達
  • 4.細胞におけるシグナル伝達

II.代表的な細胞内シグナル伝達系

  • 1.チロシンキナーゼ型受容体
  • 2.7回膜貫通型受容体
  • 3.イオンチャネル型受容体
  • 4.核内受容体

III.視覚という1つの例

  • 1.桿体細胞と錐体細胞
  • 2.光受容体はロドプシン
  • 3.膜の興奮

2日目 細胞間のシグナルを伝達する因子

I.細胞間のシグナルを伝達する因子はたくさんある

II.サイトカインというもの

  • 1.リガンドとしてのサイトカイン類
  • 2.サイトカイン受容体とシグナル伝達
  • 3.増殖因子ファミリー

3日目 シグナル伝達の流れを細胞増殖を例に理解する

I.ヒト体内細胞の増殖

  • 1.生理的再生系組織(physiologically renewal system)
  • 2.条件再生系組織(conditionally renewal system)
  • 3.非再生系組織(non-renewal system)

II.増殖因子受容体からの細胞内シグナル伝達

  • 1.受容体の活性化
  • 2.Gタンパク質の活性化
  • 3.MAPKカスケード
  • 4.イノシトールリン脂質の変化
  • 5.PI3Kの活性化
  • 6.シグナルを負に制御するもの
  • 7.転写活性化
  • 8.DNA合成までに起きること

ここまでのまとめ

  • 1.一通り筋書きを追いかけたけれども
  • 2.増殖因子は同じでも下流シグナルは同じとは限らない

4日目 細胞をとりまく環境〜細胞接着と細胞骨格

I.細胞接着

  • 1.多細胞生物では増殖抑制状態が基本
  • 2.体内の組織を分類する
  • 3.支持組織の特徴は細胞間基質が多いこと
  • 4.上皮組織の特徴はタイトに接着していること
  • 5.線維芽細胞だって基質の中でふわふわ浮いているわけではない
  • 6.基質分子の受容体インテグリンファミリー
  • 7.互いによく接着している細胞は増殖に抵抗する
  • 8.基質との接着は増殖調節に重要である
  • 9.細胞接着の制御とシグナル

II.細胞骨格

  • 1.微小管
  • 2.アクチン線維
  • 3.中間径線維

5日目 細胞周期を1廻りする

I.細胞周期概論

  • 1.細胞周期とは
  • 2.細胞周期進行を司る分子群

II.細胞周期の各期で起きること

  • 1.G1期からS期への進行で起きること
  • 2.S期で起きること
  • 3.G2期からM期への進行で起きること
  • 4.M期で起きること

6日目 細胞周期の制御と監視

I.タンパク質分解の重要性

  • 1.ユビキチンとユビキチン化酵素群
  • 2.プロテアソーム

II.細胞周期の監視点

  • 1.G1期チェックポイント
  • 2.S期チェックポイント
  • 3.G2期チェックポイント
  • 4.M期(スピンドル)チェックポイント
  • 5.細胞周期はドミノ倒しではなくcheck and goだ
  • 6.G1期やG2期は必要なのだろうか

III.細胞増殖制御の全体像と研究の進め方

  • 1.細部にわたって研究が進んでいるところ
  • 2.研究が進んでいないところ

【コラム】

  • 微弱な信号を受信し変換する能力1〜音を聞き分けるということ
  • 微弱な信号を受信し変換する能力2〜サイコキネシスの可能性
  • 微弱な信号を受信し変換する能力3〜テレパシーの可能性
  • 組織まで知らなくてもいいんじゃない?
  • パーキンソン病の原因遺伝子もユビキチンリガーゼ
  • どこでどういう研究をするか
  • problem solver と problem finder 他,多数
書評・感想

この教科書を読む皆さんへ

教科書はもちろん知識を得るための手段です.でも得る知識は,たとえ同じ教科書であっても人により,また読み方によりさまざまです.分子生物学の知識は,この本を丹念に読めば得られます.でもそれ以外の知識もこの本から得られますので,これについて少し紹介しましょう.道草話として聞いてください.

すべての人の行為は,縦糸と横糸といえる関係で綴られていると言えます.個々の行為を横糸とすれば,その数々をつないだ人生の縦糸はそれぞれの人の想いであり,意思でありましょう.勉強や研究でも同様です.横糸の知識の量と質は大切ですが,これを綴る想いの縦糸は負けず劣らず大切です.井出先生の教科書は,ともすれば横糸ばかりになりがちの分子生物学の知識を強力な縦糸で綴って見せてくれると言えるでしょう.そしてこの縦糸が面白いのです.それは井出先生のまるごとの生き物に対する強い興味と深い洞察なのです.だからこの本では「なぜ」がやたらと多い.東京のご出身と聞きますが,ご幼少のみぎりの井出先生はあのメガロポリスにあっても蝉やトンボを追っかけていたに違いない.縦糸になる生き物まるごとへの思いが強いからこそ,膨大で多様な知識を網羅してこの教科書を一人でまとめられました.昨今の分子生物学の教科書のすべてが複数の著者で書かれていることからすると,ほんと,信じられないですよね.

井出先生の生き物まるごとに対する興味の背後には,人間に対する興味が見え隠れします.だから随所にヨタ話があります.それにしてもよくも掲載したものだと思わせるきわどいのもありますよね.でもこれらのすべてに井出先生の人間に対する興味と洞察が見えるので,まあ少々の品の悪さは仕方ないですよね.というわけで,井出先生の縦糸は人間まるごとの縦糸でもあります.

今日の分子生物学につながる生物学にはもちろん長い歴史があります.言わずもがなですが,生物学は19世紀にずいぶんと新しい展開があり,20世紀後半になって加速度的に発展しました.この急速な展開には,要素還元主義的手法が大いに力があり,これは今も同じです.でもこの手法の限界も議論されています.例を挙げましょう.演算機能では人間の何億倍・何兆倍の機能を持ち要素還元主義の権化とも言える専用のスーパーコンピューターでもチェスの天才カスパロフに完勝することができません.コンピューターはそれを生み出したわれわれの思考という限界を持っているからです.でも生身の人間は時としてこの限界を突破します.ましてやまるごとの生き物は突破だらけです.19世紀から20世紀前半の生物学は,学問が成熟していなかったこともあって,まるごとの生物学でした.しかもこれはほかの学問領域とも密接に関係を持っておりました.さらに自然科学も超えて,文学や芸術そして宗教とも関係した展開をしておりました.生命科学は技術以上のもののみでなく,情動と知性の間を揺れ動く存在としての人間を考える上で重要な手がかりを与えてくれます.そして今は人間の限界と可能性を深く考えることがこれまで以上に大切な時代になっております.というわけで,井出先生の教科書に見え隠れする人間への洞察,そして「ものの見方」についても十分心して読んでほしい.

最後に細かいことですが,この教科書で面白く語られているいろいろなお話のいささかチャランポランさの背後には,繊細な心使いがこめられてある点も知って下さい.教科書は本来知識を得るためなので,知識を体系化することにより効率よい伝達を図ります.教科書ではありませんが,大学院生など研究の現場に近い人々を対象にする総説雑誌では,解明されている点を強調して書かれてあることが多いようです.体系化や解明された点の強調は,利点もありますが,その一方で読む方はすべてわかってしまっているような気になりかねず,これは困った落とし穴となります.井出先生はこの危険性を十分に心得ておられ,整理された知識に加えて現段階でまだわかっていない点についても繰り返し言及しておられます.この本にたくさんある「なぜ」は井出先生の「なぜ」でありますが,同時に皆さんの「なぜ」でもあります.

書評執筆:丹羽太貫(京都大学放射線生物研究センター教授)

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