小噺その3:社会科学系分野のTさんの科研費獲得への道

 私は社会科学系の学部に所属しており,4回目のチャレンジで科研費を獲得することができました.今のところ1勝3敗です.道のりは「B判定」→「A判定」→「C判定」→「採択」でした.

 理科系と違い人文・社会科学系の研究室は個人で独立しています.理科系のように教授職の先生を中心に数名の研究者がチームとなり,院生やゼミ生を活用しながら共通の研究を進めているということはありません.科研費の申請書作成をはじめ,日々の教育・研究活動を自分だけで行わなければならないため,科研費獲得に至る道は平坦ではありませんでした.

 1 回目の研究活動スタート支援への応募のときは,書き方が全くわからなかったので,K先生の「科研費獲得の方法とコツ」を熟読しながら申請書を作成しました.残念ながら結果は「B判定」.このとき,同じ研究活動スタート支援に応募した同僚は全員が採択され,数百万円の研究費を獲得していました.部署内の会議のたびに『今度,科研費で〇〇を買います』などという会話が続けられるのがとても辛かったです.捲土重来を期して,K先生が講師の「科研費獲得セミナー」と「科研費獲得道場」を受講して臨んだ2回目の応募(基盤C)は「A判定」でした(研究者になった年齢が40歳を過ぎていたので基盤Cに応募せざるを得なかった).これに気をよくした私は3回目も基盤Cに応募しました.2回目の「A判定」時の申請書を少し応用した内容としました.自分としてはかなり手応えのある申請書を作成したと思っていただけに,「C判定」での不採択はとてもショックでした.同時に,なぜ自分の申請書が不採択なのか理解できませんでした.

 どこの大学でも,9月になると科研費獲得のためのセミナー(faculty developmentの一環)が開催されます.私の勤務校では,申請書アドバイザー制度というものがあり,申請書を提出する前に必ずアドバイザー(過去に科研費を獲得した経験がある人)による添削指導を受けなければなりません.しかし,大学のセミナーやアドバイザーから指導を受けても,核心に触れるような具体的な指導がないのです.講師の方のお話は理解できるのですが,具体的に自分の申請書のどこをどのように訂正すればいいのかわかりませんでした.実は,3回目の申請のときは直属の上司に添削指導を受け,その通りに記載したら「C判定」だったのでした.

 4回目の挑戦では,K先生から,前回なぜ「C判定」だったのか,内容と文章表現を具体的にどのように記載したらよいのかなど,核心部分のご指導があり,まさに万全を尽くしての申請でした.翌年の4月1日,日本学術振興会のホームページに採択番号と採択課題が記載されていたときの嬉しかった気持ちはいまだに忘れられません.

 もちろん,科研費を獲得することが目的ではありません.現在,獲得した科研費をもとに申請した課題の研究を着実に進めています.慢心することなく,これからも日々精進していくことが重要だと思っています.

 このコラムは,科研費の採択結果がきているころに書いています.私の研究室近くの教授職の先生2人が「基盤C」で不採択でした.多くの業績がある教授職だからといって採択されるとは限らない,科研費を獲得することは甘くはないということを改めて実感しました.だからこそ挑戦する甲斐があるのだと思います.

科研費小噺 〜十人十色の体験記〜:目次

児島 将康

(久留米大学客員教授,ジーラント株式会社代表取締役)

書籍「科研費獲得の方法とコツ」「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」著者.毎年の科研費公募シーズン前後に20件近くの科研費セミナーで講演し,理系・文系を問わず申請書の添削指導を行っている.令和6年4月より研究者を支援するジーラント株式会社(https://g-rant.org/)を立ち上げ,活動している.

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