実験医学 2007年3月号 Vol.25 No.4

再生医療への新たな挑戦

多能性幹細胞の維持と誘導

初期化の制御機構とエピジェネティクス,万能幹細胞樹立の新技術まで

  • 山中伸弥/企画
  • 2007年02月20日発行
  • B5判
  • 123ページ
  • ISBN 978-4-7581-0021-2
  • 1,980(本体1,800円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》「拒絶反応のない夢の再生医学」−サイエンス誌に掲載された黄禹錫(ファン・ウソク)元ソウル大学教授の2つの論文は,患者自身の細胞から多能性幹細胞を樹立するという夢の技術が実現する期待を,多くの研究者や患者に抱かせた.その思いが砕かれた今,あらためて基礎研究を着実に行い,夢の実現に向けて一歩一歩慎重に歩んでいく必要がある.本特集では,分化多能性の維持と誘導に関する現状と課題をまとめたい.

再生医療への応用が期待される,細胞融合・核移植・特定因子による多能性幹細胞の初期化機構や多能性生殖幹細胞の樹立メカニズムを解説.基盤技術の紹介も含め,最新知見を第一線の研究者にご紹介いただきます.

目次

特集

再生医療への新たな挑戦
多能性幹細胞の維持と誘導
初期化の制御機構とエピジェネティクス,万能幹細胞樹立の新技術まで
企画/山中伸弥
概論〜オーダーメイド万能幹細胞への挑戦〜拒絶のない細胞移植療法をめざして【山中伸弥】
「拒絶反応のない夢の再生医学」−サイエンス誌に掲載された黄禹錫(ファン・ウソク)元ソウル大学教授の2つの論文は,患者自身の細胞から多能性幹細胞を樹立するという夢の技術が実現する期待を,多くの研究者や患者に抱かせた.その思いが砕かれた今,あらためて基礎研究を着実に行い,夢の実現に向けて一歩一歩慎重に歩んでいく必要がある.本特集では,分化多能性の維持と誘導に関する現状と課題をまとめたい.
ヒトおよびマウス胚性幹細胞の分化多能性を維持するシグナル伝達経路【佐藤 昇】
近年のヒト胚性幹細胞研究は,未分化状態維持を促進する新たなシグナル伝達経路群の発見を喚起し,またマウスとの比較研究から,異種間で保存されている経路と,全く異なる機能を呈する経路とが存在することを浮き彫りにしてきている.これらの知見は,従来のマウスモデルに依存した哺乳類初期発生の基本概念の再考を促し,発生過程の分子機構をより広い角度から,より深く解析検討する大きな契機となっている.
ES細胞の多能性誘導能と融合細胞核のゲノム改変【多田 高】
すべての体細胞は同じ核DNA配列遺伝情報を受け継いでいる.一見して受精卵とは異なる各種成体細胞も基本的に同じ遺伝情報をもっている.つまり,成人体細胞に多能性幹細胞としての記憶をよび起こすことさえできれば個体ごとに幹細胞をつくり出せる.幹細胞記憶をよび起こす現象は「再プログラム化」とよばれ,体細胞の未受精卵への核移植や胚性幹(ES)細胞との細胞融合により誘導される.ES細胞には自分自身が幹細胞であるばかりでなく体細胞に多能性を誘導する能力のあることが細胞融合実験により示された.この事実を受け,ES細胞の多能性誘導活性や因子を応用した体細胞の幹細胞化が複数の独創的方法により試されている.本稿では,ES細胞との細胞融合により体細胞に多能性を誘導した後に,ES細胞ゲノムを排除することで体細胞由来のES細胞をつくり出すための基盤技術を交えて紹介する.融合細胞核から特定の染色体をまるごと除去する新技術と分子ツールは,体細胞の多能性誘導のみならず疾患モデル細胞の作製や多能性維持機構の解析などの広い分野に応用が可能である.
核移植による多能性誘導〜クローン法の新たな可能性へ向けて【阿久津英憲/梅澤明弘】
体細胞クローン動物の作出成功から分化細胞が卵細胞の力を借りれば全能性を誘導できることが明らかとなった.もっとも,クローン個体作出率がきわめて低いことからすると,不完全な全能性の獲得かもしれないが,クローン胚盤胞からのES細胞の樹立は,比較的効率がよいので十分な多能性は誘導できているといえる.核移植法で体細胞核が体細胞の記憶を捨て,胚発生型に変化させるリプログラミング機構は不明なことが多いが,理解の一助のために核移植法のステップとリプログラミングの関連性について議論する.
卵に存在する核リモデリング因子の解析【桔梗伸明】
体細胞核を未受精卵へ移植するクローニングの研究から,核を初期化させる因子が卵の中に存在することが判明しているが,その実態は依然不明のままである.これを同定する1つのアプローチとして,体細胞の核に特定の変化をもたらす原因タンパク質をカエルの卵から生化学的に精製する方法がある.この方法によりこれまでに,核から転写因子を除去するタンパク質ISWI,核小体を分解するFRGY2a/b,核全体のクロマチンを脱凝集する nucleoplasminなどが精製されてきた.このアプローチを発展させることにより,核の初期化のステップが1つずつ明らかになることが期待される.
特定因子による多能性幹細胞の誘導【高橋和利/山中伸弥】
体細胞核を初期化し分化多能性を再獲得させる方法として,卵子への核移植,およびES細胞との細胞融合という方法が開発されている.このことから,卵子やES細胞には体細胞を多能性幹細胞に変化させる因子(群)の存在が予測されていた.われわれは,ES細胞で発現する4つの転写因子を強制発現させることにより,マウス線維芽細胞培養から多能性幹細胞を誘導できることを見出した.本稿では,その可能性と課題について紹介する.
精子幹細胞の多能性〜“どうしてノックアウトマウスしかないのか”からはじまった新しい研究分野の誕生とその意外な展開【篠原隆司】
精子幹細胞は精子のみを産生する幹細胞だと考えられていたが,最近の研究によりES細胞と同等の多能性を潜在的にもっていることが明らかになってきた.精子幹細胞の研究は1994年の移植法の開発にはじまり,2003年の培養法の確立により,飛躍的に進歩した.本稿では精子幹細胞研究の歴史を紹介し,多能性の獲得メカニズムを考える.

トピックス

カレントトピックス
ERK5とE3ユビキチンリガーゼUBR1によるc-Fosの空間時間的制御とその意義【佐々木孝則/中嶋弘一】
DNAの分解異常による関節炎【川根公樹/長田重一】
線虫C. elegansにおいてインスリン様シグナル経路は神経の活性状態および記憶・学習を制御する【児玉英志/森 郁恵】
染色体凝縮因子コンデンシンの活性を抑制する新たな制御機構【竹本 愛/木村圭志/花岡文雄】
News & Hot Paper Digest
既存の説を「ひっくり返した」輸送体の構造
新釈「アポトーシス決定の分子機構」
二酸化炭素の「匂い」
グルコースは核内レセプターLXRのリガンドとして機能する
ニューロサイエンスからみた創造性とは—米国定番サイエンスコミュニケーション番組より

連載

【新連載】博士号取得とキャリア設計を考える マネジメント力 開発ガイド
第1回 博士号取得者の現状【三浦有紀子/仙石慎太郎】
Current Mini Review
ホメオドメインタンパク質による増殖のマスター制御因子DREFの抑制的制御メカニズム【瀬戸洋一/井田寛之/山口政光】
クローズアップ実験法
転写因子研究のためのChIP assay【大竹史明/加藤茂明】
疾患解明Overview
加齢黄斑変性:mechanism-based therapyの必要性【今村 裕/坪田一男】
ラボレポート−留学編−
アメリカ合衆国のど真ん中“the Heartland”カンザスシティより〜Stowers Institute for Medical Research【飯村忠浩/飯村みゆき】
第6回日本再生医療学会総会のご案内

関連情報

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  • 【本書名】実験医学:再生医療への新たな挑戦 多能性幹細胞の維持と誘導〜初期化の制御機構とエピジェネティクス,万能幹細胞樹立の新技術まで
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