実験医学増刊 Vol.21 No.11

発生・細胞分化を決定する

エピジェネティクスと遺伝子発現機構

クロマチン構造の変化,転写制御から疾患とのかかわりまで

  • 押村光雄,伊藤 敬/編
  • 2003年07月18日発行
  • B5判
  • 201ページ
  • ISBN 978-4-89706-098-9
  • 定価:5,940円(本体5,400円+税)
  • 在庫:なし
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エピジェネティクスは,同一のゲノムをもった細胞が,遺伝子配列の変化を伴わずに個々の異なる遺伝子発現を行うための機構です.発生・分化過程に必須であり,再生医療への応用も期待されている本分野を,2部構成で基礎研究から生体での働きまでわかりやすく解説します.

目次

第1部 クロマチン制御とエピジェネティクス

概論:タンパク質複合体によるクロマチン構造変換【伊藤 敬】

  • クロマチン形成因子と遺伝子発現のチューニング
  • ヒストンの翻訳後修飾とクロマチン構造変換,ヘテロクロマチン化の分子機構
  • 転写因子によるクロマチン構造変換と制御機構
  • DNAメチル化とヒストンの翻訳後修飾による遺伝子発現制御機構の接点

第1章 ヒストン修飾とクロマチン構造の変化

1. クロマチンの形成と再構築【安井 潔,伊藤 敬】

  • クロマチン形成
  • クロマチンの再構築
  • ヒストンのアセチル化とクロマチンの流動化

2. DNA複製期のヌクレオソームアセンブリー【久保知大,柴原慶一】

  • de novoヌクレオソームアセンブリーに関与する2つのヒストン結合タンパク質
  • de novoヌクレオソームアセンブリーの機構
  • de novo H3.H4のアセチル化の生物学的意義
  • de novoヌクレオソームアセンブリーの生物学的意義

3. リンカーヒストンによるクロマチンリモデリングの制御【浦 聖惠,柏木克信,金田安史】

  • リンカーヒストンとクロマチン構造
  • リンカーヒストンH1バリアント
  • リンカーヒストンのリン酸化によるクロマチンダイナミクス
  • リンカーヒストンのクロマチンへの結合に影響する因子

4. ヒストンのアセチル化と転写制御機構【井倉 毅,神谷研二】

  • クロマチン構造
  • ヒストンアセチル化酵素(HAT)
  • ヒストンアセチル化酵素(HAT)複合体
  • ヒストンコードとしてのアセチル化
  • ヒストンコード以外の制御

5. 細胞分裂期におけるヒストンのリン酸化とリン酸化酵素【安田秀世】

  • 分裂期におけるヒストンのリン酸化
  • ヒストンをリン酸化する酵素

6. ヒストンのメチル化修飾と転写制御【眞貝洋一】

  • ヒストンのメチル化修飾とクロマチンの機能制御
  • RNAiとメチル化修飾,転写制御,ヘテロクロマチン形成の関係
  • ヒストンのメチル化とDNAメチル化との関係
  • それ以外のメチル化修飾を介した転写制御の分子メカニズム
  • リジンあるいはアルギニン脱メチル化酵素の存在の可能性

7. 核内受容体によるクロマチン構造変換の分子機構【加藤茂明,藤木亮次,北川浩史】

  • 核内受容体構造と機能
  • 核内受容体によるクロマチン構造修飾機能

第2章 エピジェネティクスと遺伝子発現制御機構

1. DNAメチル化と遺伝子発現制御機構【木住野達也,新川詔夫】

  • メチルシトシンの分布とCpGアイランド
  • DNAメチル化の調節機構
  • DNAメチル化と遺伝子発現制御

2. メチル化DNA結合タンパク質を基盤としたエピジェネティクス【中尾光善,市村隆也,水流添 周,渡邉すぎ子】

  • DNAメチル化とCpGアイランド
  • メチル化DNA結合タンパク質
  • ユークロマチン領域での遺伝子サイレンシング

3. ポリコーム遺伝子群 そのベーシックとトピックス【東中川 徹】

  • PcGベーシック
  • PcGトピックス

4. クロマチンリモデリング因子による転写制御【太田 力】

  • 遺伝子からみたクロマチン構造
  • 活性化クロマチン
  • クロマチンリモデリング因子
  • クロマチンリモデリング因子とヒストンアセチル化酵素
  • SWI/SNF複合体と癌

5. グロビン遺伝子の発現制御機構【五十嵐和彦,田邉 修】

  • LCRによるグロビン遺伝子座の制御
  • βグロビンスイッチングのメカニズム

6. へテロクロマチン化の分子機構【定家真人,中山潤一】

  • ヘテロクロマチン化,遺伝子発現不活性化にかかわる因子
  • へテロクロマチンの確立と維持

7. クロマチンループを介した新しい遺伝子発現制御機構【堀家慎一,Terumi Kohwi-Shigematsu】

  • BURsとBURs結合タンパク質SATB1
  • SATB1による遺伝子発現の分子機構

第2部 生命現象のエピジェネティックな制御機構

概論:生命現象とエピジェネティクス【押村光雄】

  • 発生・分化におけるエピジェネティクス
  • エピジェネティクスと疾患

第1章 発生・分化におけるエピジェネティクス

1. DNAメチル化による発生プログラム【西野光一郎,塩田邦郎】

  • DNAのメチル化とCpGアイランド
  • DNAメチル化による遺伝子発現調節
  • CpGアイランドをもたない組織特異的遺伝子のDNAメチル化による発現制御
  • CpGアイランドをもつ組織特異的遺伝子
  • 細胞・組織特異的なDNAメチル化パターン
  • DNAメチル化による発生と分化のメカニズム

2. 発生過程におけるゲノム・リプログラミング【若山照彦】

  • 発生異常と核の初期化
  • 体細胞由来ES細胞(ntES細胞)の樹立と初期化

3. X染色体不活性化を制御するnon-coding RNA【佐渡 敬】

  • インプリント型とランダムなX染色体不活性化
  • 生殖細胞におけるX染色体の活性
  • X染色体不活性化センター(Xic)
  • Xistノックアウトマウス
  • Tsixノックアウトマウス
  • クローンマウスにおけるX染色体不活性化
  • X染色体不活性化の維持
  • X染色体不活性化とヒストンのメチル化

4. 生殖系列におけるエピジェネティクスのプログラム【関 由行,松居靖久】

  • 生殖細胞と全能性
  • 始原生殖細胞の形成,移動期にDNAおよびヒストンH3K9の低メチル化状態が誘導,維持される
  • 胚発生過程におけるリプログラミング
  • 他の動物種における生殖系列のエピジェネティクス

5. 核移植とゲノムの初期化【角田幸雄】

  • 核が初期化される機構は,受精卵クローンと体細胞クローンで異なる
  • クローン動物の作出効率と異常個体の出現頻度は動物種によって異なる
  • 異常個体の出現頻度は,細胞の由来や核移植方法によって異なる
  • 発生異常と核の初期化

6. 細胞分化シグナルとしてのエピジェネティクス【白吉安昭,押村光雄】

  • DNAメチル化と新規転写活性化との関係
  • 組織特異的メチル化は,細胞分化の原因かあるいは結果か
  • クロマチン構造を介した制御機構

第2章 エピジェネティクスと疾患

1. 発癌とDNAメチル化異常【牛島俊和,大河内江里子,八木由紀子】

  • 多段階発癌とDNAメチル化異常
  • 遺伝子発現変化の原因と考えられるDNAメチル化変化
  • 遺伝子発現変化の結果と考えられるメチル化変化
  • その他のDNAメチル化変化と癌との関連
  • DNAメチル化の安定性とその異常
  • 癌での「DNAメチル化異常」の意義づけ
  • DNAメチル化異常の原因

2. 癌の診断と治療にむけたメチル化研究の新たな展開【豊田 実,佐藤亜由美,秋野公臣,今井浩三】

  • 癌においてメチル化により不活化される遺伝子
  • 癌において異常メチル化が起きるプロセスと癌化における役割
  • 異常メチル化の診断と予後予測への応用
  • メチル化の治療への応用

3. ゲノム刷り込み異常と疾患【目黒牧子,押村光雄】

  • ゲノム刷り込みと先天性疾患
  • ゲノム刷り込みと癌

4. クロマチン修飾因子の機能異常と白血病【北林一生】

  • 白血病における染色体転座
  • 白血病に関与するクロマチン制御因子

5. 細胞老化とエピジェネティクス【齋藤基輝,石川冬木】

  • テロメア構造の制御
  • テロメアのキャッピング機能
  • TRF2機能喪失による細胞老化
  • ストレスによる細胞老化
  • テロメアのエピジェネティック変化

6. 統合失調症とエピジェネティクス【栃木 衛,日比野浩之,佐々木 司】

  • 統合失調症とエピジェネティクス
  • エピジェネティックモデル=統合的な理論

7. Rett症候群とエピジェネティクス【近藤郁子,山縣英久】

  • MECP2の構造と機能
  • RTT患者におけるMECP2変異と臨床症状
  • MECP2の不活性化の偏りと臨床症状の相関
  • 遺伝子発現とMECP2ノックアウトマウス
  • 男性のMECP2変異と疾患
  • MECP2の遺伝子多型

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  • 【本書名】実験医学増刊:発生・細胞分化を決定する エピジェネティクスと遺伝子発現機構〜クロマチン構造の変化,転写制御から疾患とのかかわりまで
  • 【出版社名】羊土社

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