Gノート:「薬を飲めない、飲まない」問題〜処方して終わり、じゃありません!
Gノート 2018年2月号 Vol.5 No.1

「薬を飲めない、飲まない」問題

処方して終わり、じゃありません!

  • 矢吹 拓/編
  • 2018年02月01日発行
  • B5判
  • 158ページ
  • ISBN 978-4-7581-2327-3
  • 定価:2,500円+税
  • 在庫:予約受付中
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特集にあたって

特集にあたって

矢吹 拓
(国立病院機構 栃木医療センター 内科医長)



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 残薬,それは「飲まれなかった薬」ということ

医師になってしばらくの間,処方した薬は当然すべて飲まれているものと思っていました.そもそも,飲まれていないという事態を想定できていなかったということかもしれません.このお花畑のような幻想が打ち砕かれたのは訪問診療に携わるようになってからでした.ご自宅のタンスの奥から出てきた薬の山を見たとき,ああ,飲まれてなかったんだなあ…と脱力したのを今でもよく覚えています.よく考えれば,自分の祖母もタンスの中に大量の湿布薬を抱え込んでいましたしね.とはいえ,「飲んでいるはず」幻想には今でも時々とりつかれてしまいますし,医師にはなかなか理解されにくいという多職種の意見はよく聞きます.

―処方された薬が,患者さんの体に入るということ―

今回の特集のテーマはまさにここです.ポリファーマシー問題も含めて,昨今処方の最適化が叫ばれていますが,たとえエビデンスに基づいてその患者さんにとっての最適処方を提案したとしても,患者さんの体の中に入らなければ期待された効果は得られません.そもそも薬剤の効果検証のために実施されたランダム化比較試験では,薬剤の服薬アドヒアランスは高く,適切に薬が飲めた人に対する介入効果をみているわけです.でも実際の診療現場では飲まれていないことも多いわけで,きちんと飲めないときにどうなるのか? 飲まれなくても最適処方なのか?といったことはあまりよくわかっていないのかもしれません.

実際のところ,「処方された薬が患者さんの体に入る」ということは,結構大変なことだったりします.いかに大変か?ということを考えるのにわかりやすいのは残薬問題でしょうか.年間500億円分ともいわれる残薬は,すなわち「患者さんの体に入らなかった薬」ということになります.

「飲んでほしい薬」 - 「(実際に)飲まれた薬」 = 「残薬」

というわけです.このすれ違いを思うととても切ない気持ちになりますね.片思いみたいな….

 患者さんが薬を「飲まない」「飲めない」理由とは

「薬が体に入ってこない」理由はたくさんあると思いますが,大きく分けて「飲まない」「飲めない」の2つに分類できるのではないかと思います.最終的に,この双方の要因が解決されないと,処方された薬は患者さんの体には入っていかないわけです.

「飲まない」理由は主に患者さんやご家族の思いであり,自らの意思で飲まないということです.そもそも「飲まない」ならば,もらわなくてもよいのでは?と考えがちですが,現在の処方をめぐる関係性を考えると,処方する医師に対して「飲みたくない」とか「必要ない」とはいえないのだと思います.一方で,医師も本当は必要ないかもと思いながらも,患者さんの希望で処方するという流れもあるのがこの問題の難しいところです.お互いに本音が出し切れないのは,診療時間の短さや患者さん自身の健康理解度が低いこと,父権的な関係性などが関係しているのではないかと思います.また,某週刊誌で「医者に出されても飲み続けてはいけない薬」といった特集記事が飛ぶように売れた事実を考えると,処方された薬を飲みたくないと思っている患者さんたちは存外に多いかもしれないという構図も見えてきます.

「飲めない」についてはどうでしょうか.本当は飲みたいのだけれど,身体的問題や環境問題などが飲むことを許さないといった状況が想定されるかもしれません.そういった場合には,医師・薬剤師のみならず,各要因に合わせた多職種での取り組みが解決の糸口になることがあるかもしれません.

今回はこの「飲まない」「飲めない」双方の視点から,「薬が体に入ってくること」の全体像をもう一度考えてみたいと思っています.特集にあたって,現場で実際の診療に携わっている医師・薬剤師にそれぞれの観点から大いに語っていただきました.特に,各論的に高齢者,がん患者,生活習慣病患者,循環器疾患患者,小児などの「飲めない」「飲まない」問題について,その領域の実践家の視点からより具体的に解説してもらっています.本特集を通して「薬を飲む」ということを徹底解剖し,明日からの薬物療法の実践に何かしらのヒントが得られる,そんな特集になればと願っています.

著者プロフィール

矢吹 拓 Taku Yabuki
国立病院機構 栃木医療センター 内科医長
栃木県宇都宮市で病院勤務医・診療所医師を掛けもちしています.地域のなかでさまざまな場を経験することで,見えてきた景色があります.楽しいですよ〜.

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