Gノート:おなかに漢方!〜気になるエビデンス,処方の考え方,活用方法,お教えします
Gノート 2019年2月号 Vol.6 No.1

おなかに漢方!

気になるエビデンス,処方の考え方,活用方法,お教えします

  • 吉永 亮/編
  • 2019年02月01日発行
  • B5判
  • 164ページ
  • ISBN 978-4-7581-2335-8
  • 定価:2,750円(本体2,500円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

吉永 亮
(飯塚病院東洋医学センター 漢方診療科)



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近年,消化管術後における腸閉塞の予防に大建中湯,機能性ディスペプシア・胃食道逆流症に六君子湯と,エビデンスの報告やガイドラインでの推奨があり,消化器疾患に対する漢方治療は広く周知され,活用されるようになりました.

元来,漢方治療には,「胃腸の働きを整えることがとりわけ重視される1)特徴があります.私自身の診療でも,食欲がない,胃が悪いという症状があれば,まず消化機能を高めるための漢方治療を第一に考えます.また,便秘があればその患者さんに適した漢方薬を選択して排便状態をよくすることで,便秘以外のさまざまな症状も改善することをしばしば経験します.そのような理由などから,「おなかの症状は漢方の得意分野である」と言えますし,また,大建中湯や六君子湯以外にもいくつもの漢方薬が準備されています.

もちろん,消化器疾患の診療では,悪性腫瘍や消化性潰瘍など器質的な疾患を見逃さず治療することが第一であり,これらは西洋医学的な治療が優先されます.一方で,内視鏡検査などで異常がないものの症状が存在する機能性ディスペプシア,非びらん性食道逆流症,過敏性腸症候群なども日常診療で高頻度に遭遇します.そのような疾患に対して,漢方治療では検査で異常がなくても自覚症状に応じた治療を行うことができます.また,それらの機能性消化管疾患は,ストレスや精神心理的な要因が大きいことも知られています.古代中国で著された「黄帝内経」という書物には,「消化機能が低下した患者では,さまざまな消化器系の不調だけでなく,心を含めた全身的な不調和を併発しやすい」といった内容が記載されています2).よって,漢方を用いることで,胃もたれなどの消化器症状のみに限定せず,心身のアンバランスを含めた全身的な視点からの治療が可能になります.

そのような考えから,「おなかに漢方!」と題して,漢方の得意分野であるおなかの症状・疾患に対する漢方治療をもっと活用してもらいたいと,この特集を企画しました.代表的なおなかの症候や疾患に加え,総合診療と漢方治療との共通の特色である年齢,性別,臓器を問わずに患者さんに対応する点も考慮して,消化器の内科疾患に限定せず,消化管の手術後の不調,小児科,婦人科(月経痛)の項目も含めました.また,本特集は,Gノート2017年増刊「メジャー漢方薬」で執筆をお願いした漢方専門医の先生方を中心に書いていただきました.そのため「メジャー漢方薬」と互換性が高いものになっています.おなかの症候や疾患から学ぶ場合は本特集から,さらに詳しく大建中湯,六君子湯,半夏瀉心湯などの漢方薬を学ぶ場合は「メジャー漢方薬」からと,症候・疾患別から学ぶ,漢方薬自体を学ぶといった具合に,両方向から勉強をしていただき,さらに理解を深めていただければと思います.さらに,今回は実際の漢方医による診療を体感していただけるように,私の先輩と上司にあたる漢方医による漢方医学的な診察(脈診,舌診,腹診),さらに生活指導までを含めた漢方診療の進め方を掲載しました.実際の漢方医の診療がどのようなものか知っていただき,読者の先生方が漢方薬の有効率を高めるための漢方医学的診察を学ぶきっかけにしていただけたらと思います.

本特集を読んで,総合診療医の先生方が「おなかに関するプロブレム」に対する治療の幅を広げ,患者さんと一緒に漢方薬の効果を実感していただけたら幸甚です.

文献

  • 「漢方診療のレッスン 増補版」(花輪壽彦/著),p91,金原出版,2003
  • 新井 信:消化器疾患と漢方治療.日本消化器病学会雑誌,107:1577-1585,2010

著者プロフィール

吉永 亮 Ryo Yoshinaga
飯塚病院東洋医学センター 漢方診療科
日本東洋医学会漢方専門医,指導医,学術教育委員
日本内科学会認定内科医,総合内科専門医
日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医,家庭医療指導医
総合病院のなかで,入院治療や煎じ薬による漢方治療が行える環境で漢方を勉強する毎日です.他科での治療に難渋している症例が漢方治療で改善して,他科での診療に漢方が役立ち,患者さんと一緒に喜ぶことができるのも漢方治療の醍醐味です.今後も,漢方の可能性を広げること,プライマリ・ケアや総合診療に役立つ漢方を発信していきたいです.また,当科では期間を問わず漢方の研修を受け入れています.漢方に興味のある先生や本格的な漢方治療を学びたい先生は当科へぜひ見学にお越しください(pkanpopo@aih-net.com).漢方への熱い(熱すぎる!?)情熱をもった漢方指導医たちが大歓迎します!

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