Smart Lab Life

〜あなたの研究生活をちょっとハッピーに〜

Script8「電子会議への誘い―会話の始め方,終わり方」

【1】全文のネイティブ音声

 

【2】全文の対訳

クリスティーンとウラノ先生は,スミス先生とスミス研のポスドクであるライアンさんと,共同研究中のプロジェクトについて話し合う予定である.両グループはともに小胞体(ER)ストレスを研究している.ERストレスが糖尿病発症過程におけるβ細胞死に関与することを示唆するデータが蓄積しつつある.最近クリスティーンは,ERストレスにより誘導されるERAPとよばれる新規遺伝子を発見した.ライアンもまたERAPを研究している.Skype会議で進捗を話し合う予定である.

ウラノ先生やあ,ベン,ライアン.調子はどうですか?

スミス先生おかげ様で上々ですよ,トーマス.あなたにも,クリスティーンにも,また会えてとても嬉しいです.

クリスティーンこんにちは,ベン,ライアン.私たちのERAPプロジェクトについての新しい発見について、詳しく話してみたいと思います.

ライアン了解です.

クリスティーンERAPがβ細胞死を引き起こすメカニズムを研究していたところ,非ストレス条件下ではERAPがER膜に結合することを見出しました.しかし激しいERストレスに曝されると,ERAPはミトコンドリア関連膜(mitochondria associated membranes:MAMs)に局在するのです.その場所でERはミトコンドリアと相互作用し,アポトーシスを含むシグナル経路を活性化します.ERAPは何らかの方法でミトコンドリアへのカルシウム漏出を増やし,結果として細胞死につながることを発見しました.

スミス先生興味深いですね…それはたしかいろいろな考えが出てくる実験結果です.ERAPがどのようにミトコンドリアへのカルシウム漏出増加に寄与しうるか,調べてみましたか?

クリスティーンちょうどいま,その部分の謎解きをしているところです.ERAPはERとミトコンドリアをつなぐ膜孔に結合しているように見えます.結合する際に,ERAPは膜孔が開くのを促進し,カルシウム漏出にいたるのです.

ウラノ先生先生方の進捗について詳しく教えてください.

ライアンわかりましたトーマス.私たちはいまin vivo研究を一生懸命行っています.Akitaマウスのβ細胞でERAPが強発現していることを発見しました.このマウスは変異型の折り畳み不全インスリンを発現するため,重度のERストレスとβ細胞死が生じて機能的なβ細胞の量が減少します.予想したように,このマウスは糖尿病を発症します.

クリスティーンそのマウスをERAPノックアウトマウスと掛け合わせましたか?

ライアンはい.掛け合わせることで,このハイブリッドマウスは糖尿病を発症しないことを見出したのです.このマウスの膵島をAkitaマウスのものと比較解析したところ,アポトーシスが減少していました.

クリスティーンすこし疑問なのですが,アポトーシスはどのように測定したのですか?

ライアンTUNEL染色を用いました.7頭のマウスの膵島を解析し,全てのサンプルでDNA断片が減っていることを確認しています.

ウラノ先生データを共有してくれてありがとうございます.私たちもWFS1ノックアウトマウスを用いたいくつかのin vivo研究を計画しているところです.このマウスのβ細胞は高いERストレスレベルを呈します.WFS1はUPRの負の制御因子の1つです.ですが,WFS1ノックアウトマウスではUPRが過剰に活性化し,細胞死を引き起こします.

クリスティーン私たちはまたWFS1ノックアウトマウス由来の膵島でERAP発現の上昇を認めており,WFS1ノックアウトマウスとERAPノックアウトマウスの交配を検討しています.

スミス先生データとこれからの計画を逐次教えてくださって感謝します.私たちは他にもERAP誘導性細胞死に関わるメカニズムの同定に取り組むつもりです.状況はお知らせし続けますね.

ウラノ先生本当にありがとう,ベン,ライアン.それではまた.

クリスティーンさようなら.

ライアンそれでは.

【3】発音のKEY POINTS「鼻音/ng/」

 

誌上留学!ラボ英会話のKEY POINTS Web留学編 目次

プロフィール

浦野 文彦(Fumihiko Urano)
1994年,慶應義塾大学医学部卒業.慶應大学医学部病理学教室にて小児病理学,分子病理学を学ぶ(秦順一教授指導,元国立成育医療センター総長).’98年からNew York University School of Medicine分子病理部門研究員(David Ron教授,現University of Cambridge教授),2002年よりUniversity of Massachusetts Medical School助教授,’08年より准教授,’11年永久教授権獲得,2012年7月よりWashington University School of Medicine, Samuel E. Schechter冠教授就任.’11年,American Society for Clinical Investigation会員に推挙される.小胞体ストレスが,老化,糖尿病,神経変性疾患に与える役割を研究しています.また,小胞体ストレス病(Wolfram syndrome)の患者,家族を支えるためのクリニックを運営しています .興味のある方は次のサイトをご覧ください(to wwwhttp://www.erstress.com , to wwwhttp://fumihikourano.blogspot.com/ & to wwwhttps://wolframsyndrome.dom.wustl.edu/).
Christine Oslowski
2007年,マサチューセッツ大学を卒業し,同大学医学部医科学博士課程に入学.2012年,浦野教授の研究室で博士号を取得し,現在はボストン大学医学部でポスドクとして研究に,また教育に励んでいる.
Marjorie Whittaker
ボストン大学でSpeech-Language Pathologyの修士号を取得後,耳の聞こえない子供達の発音を矯正する仕事に従事.その後,外国人エンジニア,医師などの発音矯正の授業,コンサルティングを行う,The Whittaker Groupを設立する.2006年には,Lynda Katz Wilner先生とともに,ESL RULESを設立し,英語の発音に関するセミナーを主宰し,『RULES』,『Medically Speaking RULES』,『RULES BY THE SOUND』,『Medically Speaking Idioms』といった本の出版をしている.詳細は,to wwwhttp://www.eslrules.comto wwwhttp://www.prospeech.comまたはまで.
プロフィールは実験医学掲載当時のものになります.

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