実験医学 2011年12月号 Vol.29 No.19

組織・臓器を修復するStem Cell

組織幹細胞によるホメオスタシスと疾患の解明,そして再生医療へ

  • 出澤真理/企画
  • 2011年11月18日発行
  • B5判
  • 131ページ
  • ISBN 978-4-7581-0078-6
  • 定価:2,000円+税
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

医学の進歩によって治療可能となった疾患もあるが,未だに根本治療法がなく一日も早い解決が望まれている疾患はたくさんある.特に組織・臓器を構成する細胞が何らかの理由で変性・脱落し機能不全に陥ってしまった場合,根本治療をするためには失われた細胞を補充し,組織を元どおりに再建しなくてはならない.例えば肝硬変では肝細胞,心筋梗塞では心筋,神経変性疾患では神経細胞,筋変性では骨格筋,というように,機能的細胞になりうる細胞をどこからか調達することが必要である.再生医学のターゲットとなる疾患は多彩であり,そのために必要とされる細胞も多岐にわたる…

生体内に存在し,恒常性を維持する組織幹細胞。血中を遊走・組織修復するメカニズムから,GVHDの治療に応用される免疫抑制効果・糖尿病発症機構への関与まで,臨床に繋がる最新成果を紹介。

目次

特集

組織・臓器を修復するStem Cell
組織幹細胞によるホメオスタシスと疾患の解明,そして再生医療へ
企画/出澤真理
明かされつつある組織幹細胞の謎【出澤真理】
医学の進歩によって治療可能となった疾患もあるが,未だに根本治療法がなく一日も早い解決が望まれている疾患はたくさんある.特に組織・臓器を構成する細胞が何らかの理由で変性・脱落し機能不全に陥ってしまった場合,根本治療をするためには失われた細胞を補充し,組織を元どおりに再建しなくてはならない.例えば肝硬変では肝細胞,心筋梗塞では心筋,神経変性疾患では神経細胞,筋変性では骨格筋,というように,機能的細胞になりうる細胞をどこからか調達することが必要である.再生医学のターゲットとなる疾患は多彩であり,そのために必要とされる細胞も多岐にわたる…
体性幹細胞としての間葉系幹細胞を用いた治療【Darwin J. Prockop】
間葉系幹細胞は普通の細胞にはみられない特異な生物学的特性をもつため,多くの研究者をひき付け魅了し続けてきた.その研究の歴史は古く,造血幹細胞のnicheとしての役割を果たすフィーダー細胞として研究されはじめたが,その後分化転換能を有することがわかると,再生医療への応用に焦点が当てられてきた.注目に値することは,さまざまな損傷組織における微小環境に適応するだけの幅広い能力を備えているということである.さらに多様な栄養因子やサイトカインを産生する,ということも魅力の1つである.たとえ間葉系幹細胞に何かしらの副作用があるとしても,今も,そして今後も,臨床応用において最も広く使われ続ける細胞であることには間違いない.間葉系幹細胞の多様な作用のなかでも抗炎症作用は組織保護の観点から重要であり,最近その作用機序がようやく明らかになってきた.なかでもkeyとなる因子TSG-6が同定されてきたことは注目に値する.本稿では間葉系幹細胞の抗炎症作用を中心に,この細胞のもつ幅広い作用と細胞治療における大きな可能性について考察する.
生体由来の間葉系組織に内包されるMuse細胞の発見【出澤真理】
通常組織幹細胞は幹細胞自身の属する組織を構成する細胞に分化し恒常性維持にかかわっているといわれているが,間葉系幹細胞の場合,中胚葉系の骨・軟骨・脂肪だけでなく,胚葉を超えて多様な細胞に分化することがin vivoin vitro両方で報告されている.また生体に投与すると,一部の細胞は傷害を受けた部位にホーミングし,組織に応じた細胞へと分化して修復に寄与することがさまざまな臓器において報告されている.しかし,このような特異な分化能を示す間葉系幹細胞の真の姿というのは長い間不明であり,議論がくり広げられてきたのも事実である.その理由の1つとして,間葉系幹細胞が複数種の細胞から構成されているために,少ない割合で存在する特定の細胞の同定が困難であったということがある.最近,これまでみられてきた多様な分化を説明するMuse細胞という多能性幹細胞が見出された.この細胞の特異な性質と再生医療応用への可能性について考察する.
骨髄間葉系幹細胞に備わる組織損傷シグナルへの応答機構【玉井克人/金田安史】
骨髄間葉系幹細胞(MSC)の存在はよく知られているが,その生体内における役割については未だ不明な点が多い.最近われわれは,生直後から連日表皮剥離を生じる遺伝性皮膚難病「表皮水疱症」の表皮再生機序において,剥離表皮が大量放出するHMGB1が骨髄内の間葉系幹細胞を剥離表皮部に集積させて表皮再生を誘導していることを,表皮水疱症マウスモデルを用いて明らかにした.HMGB1は炎症誘導性分子としてよく知られているが,広範囲組織壊死を伴う病態では,HMGB1は炎症反応により損傷組織を除去した後,骨髄から間葉系幹細胞を動員して組織再生を誘導する,いわば生体内恒常性維持分子として機能していると予想する.
高血糖状態がひき起こす骨髄幹細胞異常【藤宮峯子】
本来,骨髄にある幹細胞は,傷害された臓器を修復する目的で種々の臓器に遊走し,特定の細胞に分化するか,まれに細胞融合のメカニズムで臓器再生に向かうことが知られている.しかし高血糖状態という生体にとって異常な環境に暴露されると,骨髄幹細胞に異常が生じ,組織修復に向かうべき細胞が逆に組織傷害性に働くと考えられる.糖尿病でおこる臓器傷害を一元論的に骨髄細胞の異常で説明するという概念は,まったく新しいものであり,糖尿病の治療戦略に一石を投ずるものであると考える.
間葉系幹細胞(MSC)を用いた急性GVHDの治療【小澤敬也】
間葉系幹細胞(MSC)を投与すると炎症や組織傷害のある部位へ集積するだけでなく,免疫抑制能を有することから,移植片対宿主病(GVHD)の治療への応用が期待されている.MSCの免疫制御作用は,さまざまな分子が複雑に関与しており,細胞レベルではMSCによるTh17分化抑制が注目される.MSCの免疫抑制作用はMSCが集積したGVHD局所に主に起こり,全身性の強い免疫抑制はみられないものと想定される.この点は,感染症合併のリスクが高くなる強力な免疫抑制剤に比べて有利であると思われる.臨床試験でも有望な結果が出つつあるが,さらなる検証が必要である.
脂肪由来幹細胞による細胞治療の可能性【勝田 毅/酒井康行/落谷孝広】
近年の再生医療に対する期待が高まるなか,間葉系幹細胞が新たな細胞ソースとして注目を集めている.特に2000年代以降,「不要な組織」として疎まれてきた皮下脂肪のなかに,非常に有益な間葉系幹細胞が存在することが明らかとなり,その臨床応用への開発がさまざまな疾患領域で加速している.本稿では,脂肪由来幹細胞 (adipose-derived stem cell:ADSC)がもつメリットについて論ずるとともに,われわれの研究内容を紹介しながら脂肪由来幹細胞がもつ多彩な疾患治癒能力について概説する.
組織幹細胞と角膜再生【大家義則/西田幸二】
再生医療の実施には幹細胞に対する知識が重要である.幹細胞には組織幹細胞と胚性幹細胞の2種類があるが,現在までのところ患者への投与に用いられているのは組織幹細胞である.最初にはじまったのは培養表皮を用いた重傷熱傷に対する治療であり,良好な治療成績を収めている.角膜の領域では培養角膜,口腔粘膜上皮細胞を用いた角膜上皮幹細胞疲弊症に対する治療が報告されている.われわれは水疱性角膜症など,今まで角膜再生治療の適応となっていない疾患に対しての新規治療開発を現在進めている.

特別寄稿

2011年ノーベル生理学・医学賞
Ralph M. Steinman博士 大きな悲しみの後の喜び ―樹状細胞の父Ralph M. Steinman教授の死を悼む【稲葉カヨ】

トピックス

カレントトピックス
脊椎動物未受精卵の分裂停止因子Emi2の制御メカニズム【磯田道孝/迫 洸佑/佐方功幸】
コンデンシンとヒストンH2Aの相互作用が分裂期染色体を形づくる【多田健志/進 寛明/作野剛士/渡邊嘉典】
出芽酵母のDicerによる新しい分子定規機構をつかったsiRNA二本鎖の生成【中西孝太郎】
クロマチンリモデリング因子ISW1aの構造と機能【山田和弘/Timothy D. Frouws/Brigitte Angst/Timothy J. Richmond】
News & Hot Paper Digest
ルーキー誕生:毛の悩みは,脂肪におまかせ【妹尾 誠】
ヒト人工染色体・幹細胞移植による筋ジストロフィー治療【星谷英寿】
アラムアジュバントの効果は宿主DNAによる自然免疫活性化が鍵!?【熊ノ郷 淳】
先行き不透明なオバマのヘルスケア改革【MSA Partners】
2011年度ノーベル生理学・医学賞:自然免疫と獲得免疫の話が共同受賞した理由【河本 宏】

連載

クローズアップ実験法
顕微鏡制御ソフトウェア「μマネージャー」入門【塚田祐基】
誌上留学! ―ラボ英会話のKEY POINTS >>> Web留学編へ
遺伝子導入への挑戦―議論を深める【浦野文彦/Christine Oslowski/Marjorie Whittaker】
私のメンター ~受け継がれる研究の心~
Eric R. Kandel―記憶研究の開拓者【井ノ口 馨】
Campus & Conference探訪記
沖縄に誕生した新しい国際研究教育拠点 沖縄科学技術大学院大学【Jeffery Wickens/山本 雅】
ラボレポート ―留学編―
多様な視点,徹底した議論,そして最強のツール ―University of Washington School of Medicine【鈴木祥宏】
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サイエンスを,正しく,楽しく魅せるために【瀬尾拡史】

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