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(2004年12月20日発行)
2005年1-2月号(Vol.5 No.1)
定価 2,625円(税込)
バイテクノロジージャーナル最新号詳細
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目次
改題創刊記念特集
■ インタビュー
■ プロトコール
・バイオ実験なるほどQ&A
・バイオ実験プロトコール
■ ニュース
■ テクノロジーハイライト
■ ビジネス&パーソン
■ コラム
■ 製品・サービス情報

改題創刊記念特集
私はこう見る!キーパーソンが語るこれからのバイオサイエンス発展の鍵

2005年はここに注目!プロテオーム研究
 礒辺俊明
プロテオーム研究は今年で誕生から11年目を迎えたが,この10年間に累積した研究論文数は8,000を越え,さらに毎月約200報のペースで増加を続けている.
米国生化学分子生物学会(ASBMB)が発行する「Molecular and Cellular Proteomics」は,同会が発行する「Journal of Biological Chemistry」を上回るインパクトファクター(8.316)を獲得し,最近では,質量分析法によるタンパク質の解析が普及して「プロテオミクス」の言葉が論文のキーワードにも入らないほど一般的になっている.
生体イメージングと再生医学
 岡野栄之
細胞が生きた状態で,特定の分子群の動態やそれらの間の相互作用を可視化することは,生命体の発生,細胞生理学や病的状態を理解するうえで必須なものとなってきている.
私が専門としている再生医学においても,この究極目標が,個体レベルでの機能回復にあるため,当然個体が生きた状態で機能をリアルタイムで評価する,個体へ導入した細胞がどこに分布し,そのような機能を果たしているかを可視化するという計測技術を取り入れた研究展開が必須のものとなってきている.
新世紀におけるサイエンスの危機をどう乗り切るか
 落谷孝広
現代において3人に1人が亡くなる病気,それは「がん」である.がんは,1981年以来,日本人の全死因の第一位の座に居座って久しく,がんの犠牲になられた方の数は今も増え続けている.その対策として,政府は,「第三次対がん十カ年総合戦略」に乗り出した.特にその中軸となっているのはこれまで不十分だったがん予防の全国レベルでの推進や,質の高いがん医療の普及などである.これまでの研究から「がんは遺伝子の病気」とわかり,ヒトゲノムの完全解読も手伝って,がんを分子レベルから攻略するさまざまな方法も見えてきた.しかし専門医の不足や,臨床試験のシステムに関する問題などから欧米では標準的な抗がん剤の多くが,今も日本では使えないなど,臨床の現場での課題は山積している.
現実化するRNAi創薬
 多比良 和誠
11月中旬にRNAiに関する画期的な論文が発表され話題になった.目立ったのはNature誌のwebsiteに11日に掲載され,news and viewsでも大きく取り上げられた Alnylam社の論文である.Alnylam(アルナイラム)社はRNAi 研究をリードするノーベル賞受賞者であるPhillip A. Sharpを筆頭に,siRNA を開発した Thomas Tuschl,マイクロRNA分野をリードするDavid P. BartelやPhillip D. Zamore などが創設者として名を連ねる期待される RNAi 関連ベンチャー企業である.Alnylam社の報告によると,合成 siRNA に簡単な修飾を施す(コレステロール付加)だけで,マウスの内在遺伝子の制御が可能になった.DDS(ドラッグデリバリーシステム)も必要ないことから,siRNAが薬に一歩近づいたと言えよう.
生体材料(Biomaterial)もBiotechnologyの仲間入り
 田畑泰彦
私の専門は生体材料である.英語ではBiomedical material(Biomaterial)と呼ばれ,外科,内科治療に用いる材料を研究開発する分野である.このBiomaterialはBiotechnologyとは異なる領域であるというイメージをもつ人も多いであろう.その理由は,前者が臨床医学と工学との境界領域であり,核酸,糖,タンパク質,微生物などを扱う生物学,医学,あるいはそれに関連した工学,有用物質を作る工学技術などを中心に発展してきたBiotechnologyとは少し離れた領域であったからである.ところが,再生医療によって,その両者の距離はぐっと縮まった.再生医療の目的は,細胞を活用した欠生体組織の再生修復,傷害臓器の機能代替による病気の治療である.そのためには,生体材料をタンパク質,遺伝子,細胞と積極的に組み合わせてくことが必要である.
技術開発は研究にブレークスルーをもたらす
 松島綱治
私は基礎免疫学者であり,バイオテクノロジーに関する技術開発の最先端にいると言うよりも,ユーザーサイドにいるといった方が正しいであろう.しかし,新しくオリジナリティーの高い仕事を行うためには,技術開発がいかに重要であるかを,強く認識している者である.研究推進のための技術開発は,ニーズを技術者に伝えるか,みずからの研究室で行うしかない.しかし,他力本願では,多くは願望で終わり,夢が実現することは少ない.それゆえ私は,米国NIH留学時代から自分達の研究室でできることは,できる限り自分達で行ってきた.あとは,親しい仲間(共同研究者)と共同開発するというスタンスをとってきた.
科学の行方に関するアフォリズム
 宮脇敦史
科学成果の事業化,実用化が叫ばれる時世に,およそ70年前に寺田寅彦が発した名言を噛みしめてみたい.以下は,「寺田寅彦全集」の随筆「科学とあたま」から引用したくだりである.
―いわゆる頭のいい人は,いわば脚の早い旅人のようなものである.人より先に人のまだ行かないところへ行き着くこともできるかわりに,途中の道ばた,あるいはちょっとしたわき道にある肝心なものを見落とす恐れがある.頭の悪い人,脚ののろい人が,ずっと後からおくれて来てわけもなくその大事な宝物を拾って行く場合がある.
バイオテクノロジー〜バイオ(鶏)が先か テクノロジー(卵)が先か?
 村松正明
「必要は発明の母である」は有名な諺であるが,かのAurthor Kornberg 先生は「発明は必要の母である」と喝破したと言われている.
遺伝子工学の必須アイテム,DNAポリメラーゼの発見者ならではの至言であり,発明(discovery)と必要(needs)の精妙な関係を言い得ている.
バイオテクノロジーはまさにバイオロジーに関する発明と必要の狭間に生まれた,貴重な申し子である.新しいバイオテクノロジーの誕生には,些細かもしれないが確実に進歩性のある発見と,何かが欠けていて必要であるという切実な要求との邂逅がある.

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