実験医学2022年1月号 特集「夜明けを迎えたヒト免疫学〜臨床検体からヒトの免疫応答機構の実態を知り、疾患制御に挑む」

ヒト免疫学で挑むTph細胞の関節リウマチ病態での機能解明

吉富啓之,上野英樹
特集

夜明けを迎えたヒト免疫学

ヒト免疫学で挑む Tph 細胞の関節
リウマチ病態での機能解明
吉富啓之,上野英樹
CXCL13 産生 CD4 + T 細胞はヒト関節リウマチ検体の解析から見出された分画で,一連の研究により末梢組織で
の免疫機構にかかわる新たな CD4 + T 細胞分画,Tph 細胞として提唱された.さらに,Tph 細胞はさまざまな自
己免疫疾患や悪性腫瘍での免疫機構に関与することが明らかになっている.Tph 細胞は Tfh 細胞と分化機構や機
能を一部で共有しつつも,空間的・免疫学的に異なった機能をもつと考えられている.本稿では Tph 細胞の機能
や疾患との関係を解説するとともに,Tph 細胞研究の将来的展望を述べる.
キーワード

CXCL13,ヘルパー T 細胞,Tph 細胞,関節リウマチ,ヒト免疫学

はじめに

1 関節リウマチ炎症組織に存在する
CXCL13 産生 CD4 + T 細胞

CXCL13 産生 CD4 + T 細胞はヒト関節リウマチ研究
から報告された分画で 1) 2),一連の報告により新たな

関節リウマチは全身の関節に滑膜炎を発症する全身

CD4 + T 細胞分画,peripheral helper T(Tph)細胞

性の自己免疫疾患で,進行すると関節変形により日常

として提唱された 3).この分画は ,関節リウマチだけ

生活能力の著しい低下に至る.関節リウマチには自己

でなくさまざまな自己免疫疾患や腫瘍免疫にもかかわ

抗体であるリウマチ因子(RF)や抗シトルリン化タン

ることが明らかになってきた .本稿では ,ヒト免疫

パク質抗体(ACPA)が関連することや,T 細胞標的

研究から新たな免疫機構が見出された一例として,Tph

療法である CTLA4-Ig が有効なことから T 細胞が関節

細胞が一分画として提唱されるまでの一連の流れを紹

リウマチ病態に重要な役割を果たしている 5).

4)

介するとともに,その細胞機能や分化機構,臨床的意

これまで主に行われてきたマウスモデルでの免疫研

義について述べる.また概論にもあるように,研究技

究では,炎症性サイトカインである IL-17 を産生する

術の進歩がこれまで困難であったヒト検体の解析を可

CD4 + T 細胞,Th17 細胞が自己免疫性関節炎モデルを

能にし,マウス免疫研究では得られなかった新たな知

はじめとした自己免疫病態の主要な役割を果たし,ヒ

見が見出されることが今後大いに期待される.これら

ト関節リウマチにおいても Th17 が病態にかかわる主

の技術を用いた Tph 細胞研究の将来的展望についても

要な分画と考えられていた.ところが,関節リウマチ

触れる.

患者における Th17 細胞はむしろ減少していることが
報告され 6),さらに I L - 17 中和療法は関節リウマチに
対して臨床的に有意な有効性を示さなかった 7).これ

A challenge of human immunology in the investigation of Tph cell contribution to the pathogenesis of
rheumatoid arthritis

Hiroyuki Yoshitomi 1)/Hideki Ueno1)2):Department of Immunology, Graduate School of Medicine, Kyoto University1)/
(京都大学大学院医学研究科 免疫細胞生物学 1)/ 京
Institute for the Advanced Study of Human Biology, Kyoto University 2)
2)
都大学ヒト生物学高等研究拠点 )

実験医学 Vol. 40 No. 1(1 月号)2022

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この記事の掲載号

実験医学2022年1月号
夜明けを迎えたヒト免疫学

上野英樹/企画