赤ふん坊やの「拝啓 首長さんに会ってきました☆」 〜地域志向アプローチのヒントを探すぶらり旅〜

《沖縄県 読谷村》
石嶺傳實村長

《地域の概要》沖縄県・読谷村
写真は世界遺産にも指定されている座喜味城跡
《地域の概要》沖縄県・読谷村
人 口:
39,500人(高齢化率21%)
面 積:
35 km2(人口密度1,130 人/km2
地域の特性:
沖縄本島の中央部に位置し,東シナ海に突き出た半島の村.世界遺産の「座喜味城跡」や琉球芸能には必須の「三線」の始祖「赤犬子(アカインコ)」生誕の地でもある.特産品に紅イモがあり,織物や焼き物の伝統工芸品も保有する.
沖縄県読谷村の石嶺傳實村長は,沖縄県のなかでも地域のつながりの深い自治体において,「知産地笑」と魅力ある村づくりに尽力されている村長さんです! 日本一人口の多い村で,村民みんなが誇りをもてる村をめざしているんだって!! そんな村長さんの思いはどこから出てきているのか? お話を聞いてきました!

子どもから大人まで,住み続けたいと思う村へ

赤ふん坊や石嶺村長,こんにちは! 読谷村って,沖縄本島の中央西部にある,島国の雰囲気あふれる村だね! 村の西側には青い海が広がって,沖縄に来た! !って感じ♪ リゾートホテルにリゾートビーチも……ああ! こうしちゃいられない,早速海へGO♪

石嶺おーい! 今日は取材じゃないの? ?(汗)

坊やはっ! いけないいけない,海生まれ海育ちなもので,海と聞くとつい体が……村長はやっぱり,素晴らしい読谷の海で,リゾートライフをENJOYするために,村長になったんでしょ?

石嶺村長の仕事,何だと思ってんの(^_^; 私は地元読谷村で小中高と育ち,琉球大学農学部に進学,卒業後は県内で関連の仕事をしていたんですが,読谷村役場で農業技師の募集があったことをきっかけに役場に入庁し,その後社会教育や企画関係の部署を渡り歩いてきました.商工会の村おこし塾に参加していたことも,役場や政治に前向きになるよいきっかけでした.前村長より指名を受け,副村長に就任し,前村長引退後,周囲から期待をいただき,村長として3期目になります.

坊やなるほど~,ボクも読者の皆さんからの期待をいただいてるので,大海原の長になってきます! じゃそういうことで☆ε≡≡ヘ( ´∀`)ノ

石嶺待てい(汗).まだはじまったとこ!

坊や(え~(=Д=))じゃあ,村長はこの村をどんな村にしたいと思ってるの?

石嶺この村には,そら豆をはじめとする陸のもの,ジンベエザメなどの海のもの,そして世界遺産にもなっている座喜味城跡などの歴史があります.元軍用地だった広大な敷地を有効に活用して,農業,工業,観光業,スポーツ振興にも取り組んでいます.これら,産業,教育,スポーツ,伝統を通じて,子どもから大人まで,みんな誇りをもて,ずっと住み続けたいと思う村,自慢できる村にしたいと思って,日々奮闘しているところです.

坊や(ジンベエザメかあ……背中に乗って写真撮ったら,インスタ映えしそうだな……)

石嶺坊や,今,よからぬこと考えてたでしょ.

坊やそ,そんなことないよ! さあ,次行ってみよー! !(汗)

地域一体の健康づくりが実現

坊や読谷村は,医療や健康に関して,どんなことに取り組んでるの?

石嶺読谷村は,2000年にはじまった介護保険制度ができるきっかけになったとも言われる,ゆいまーる共生事業,通称ミニデイサービスの発祥の地なんです.平成元(1989)年からはじまったこの事業は,もともと村の社会福祉協議会事務局長の呼びかけで,当時の民生児童委員らが集結し,毎週水曜日に地域の高齢者を招いてのレクレーションを中心とした活動を開始したことに遡ります.最大の特徴は,地域住民がボランティアとして多くかかわっていることです.地区の集会所に集まって行われるのは,健康チェック,健康体操,子どもとの交流,レクレーション,お茶会などさまざまで,今では全23地区で実施され,県内外にも広まりました.長年の取り組みとなり,村内では当たり前に行われているものになっています.他にも,役場と商工会,農協などの垣根が低いので,お祭りやイベントなどの際に,どの組織も違和感なく協働できていると感じています.それぞれからメンバーを出し合って協議会や実行委員会を結成して実施しています.役場職員である保健師や栄養士なども,自治会と一緒にやろうと頑張ってくれています.まさに地域一体の健康づくりが実現しています.

坊やなんと,発祥の地なんだね! それは絶対に見に行かないと! !

石嶺そっちは海だよ~,こっちだよ~! (゚Д゚)

健康づくりの機運を広く浸透

坊やでは,読谷村はこれからどんな課題に取り組んでいきますか?

石嶺そうですね,当村の位置する本島中部西海岸には,病院がないんです.なので読谷村では,日本全体で高齢化やマンパワー不足が叫ばれるなか,これまで以上に,健康であり続けられる村づくりが大切になると考えています.当村の誇る地域一体の健康づくりを継続・発展させながら,生活習慣病予防,健診受診率向上,在宅医療・看護・ケアの振興にも取り組み,読谷の海のように際限なく広く,健康づくりの機運を浸透させることが必要だと感じているところです.

坊やんも~ぅ! ! 海に行きたくなるようなこと言って! ! いけずぅ☆

石嶺話,聞いてる……?(涙)

総合診療医の仕事は,福祉の原点

取材の記念に,読谷村のマスコット・よみとんも駆けつけてくれました! ! よみとんの体はラグビーボール型ではなくて,紅イモ型だよ♪

坊やでは,村長が総合診療医にしてほしい,こうあってほしいと思うことを教えてください! !

石嶺そうですね,住民には気軽に相談できる医者が必要で,医療はコミュニケーションが肝だと考えています.総合診療医という何でも相談できる医者の存在は,イメージだけでも安心でき,総合診療医が医療の原点なのでしょう.総合診療医の皆様には,住民とコミュニケーションをどんどんとっていってほしいと思います.そのうえで,他科の専門医の先生とも密に連携をしていただき,地域全域を網羅する医療を張り巡らせてほしいですね.

沖縄の海はサイコーでしたぁ☆

坊やでは最後に,全国の読者の皆さんへ,メッセージをお願いします!

石嶺総合診療医のお仕事は,福祉の原点であり,命の源でもあります.そのような重要な仕事をしてくださる総合診療医の先生を,村では大歓迎いたします.読谷は命の源の海をはじめ,地域資源に恵まれています,ぜひ仕事でも仕事以外でも交流していただきたいと思います……って,あれ,坊やは!? さては! 海に遊びに行ったな~!! えーっと,次回は,北海道・広尾町の村瀨優町長にお話を聞いてくるそうです! お,お楽しみに~☆☆☆(汗)

地域主体の高齢者サロン活動を支援して,地域の高齢者が確実に健康に.
赤ふんウォッチ
!

実際に,読谷村のミニデイサービスにお邪魔してきました☆ 地元のボランティアさんが集まってお菓子をつくったりレクレーションの準備をしたりして,活発に動かれていました.参加者さんの血圧を測ったりレクレーションの司会をされたりして,参加者さんをもてなしていらっしゃるけど,正直,ボランティアなのか参加者なのか,ぱっと見区別がつかなかったです(^_^; それくらい,年代の近しい方同士が,とっても楽しみながら交流されていたよ.すごく自然な感じで,地域になじんだ取り組みだなあと思いました!ボクも,地域のみんなが赤ふん一丁でも自然な感じになるまで,頑張って赤ふんを普及しなきゃ☆

コラム 赤ふん坊やマネージャーの今回の地域志向アプローチのタネ 地域主体の高齢者サロン
図 サロン参加と要介護認定

近年,全国各地で高齢者の居場所づくりが進み,その代表はいわゆる「サロン」活動です.サロンとは,高齢者の方が,身近な場所で気軽に集まり,楽しくふれあいを深めて交流することができる場のことで,今回ご紹介しました読谷村のミニデイサービスは,まさにその先駆けと言え,しかも,全国の事情を拝見するに,行政主体にサロンの整備がなされてしまっている地域も少なくないなか,地域主体に運営がなされた,継続性のある(実際に長年継続されている)理想的なサロンと言えるでしょう.広がり続ける高齢者サロンの取り組みですが,はたして実際に高齢者の健康に寄与できているのでしょうか.

実はこの手のサロン参加の効果の検証は,「健康な人だからサロンに参加できたのでは?」という議論に陥りやすく,純粋なサロンの効果を判定することが容易ではありませんが,それを克服した報告があります.愛知県武豊町での地域主体の高齢者サロンを,操作変数法という高等な統計手段を用いて評価した報告では,高齢者の5年間の要介護認定のリスクが,サロン不参加だと14.0%であるのに対し,サロン参加者では7.7%と,おおよそ半減したとのことです1)).このように,地域主体の高齢者サロンは高齢者の健康に「なんとなくよさそう」なのではなく「きちんとよい」と予想されますので,地域志向の総合診療医として,ここにかかわらない手はないでしょう.地域主体の取り組みとして継続性を担保しつつ,医学的に支援できる部分で活動を支えること,また,診療現場で不参加の方へ参加を勧めることなど,われわれにできることもありそうです.

文 献
  1. Hikichi H, et al:Effect of a community intervention programme promoting social interactions on functional disability prevention for older adults: propensity score matching and instrumental variable analyses, JAGES Taketoyo study. J Epidemiol Community Health, 69:905-910, 2015
石嶺傳實(Denjitsu Ishimine)
石嶺傳實村長

沖縄県読谷村・村長
昭和30(1955)年生まれ,読谷村喜名出身.昭和53 年3 月琉球大学農学部卒業後,沖縄子どもの国,中央食品加工株式会社を経て,昭和54 年5 月読谷村役場に採用される.
平成11 年4 月読谷村役場企画分権推進課長を経て,平成14 年11 月読谷村役場助役に就任し,平成19 年4 月に副村長となる.平成22 年3 月に第19 代読谷村長に就任し,現在に至る(3 期2 年目).
読谷高校在学中よりラグビーフットボールをはじめ,大学在学中も活躍.現在,沖縄県ラグビー協会顧問.「協働・創造・感動」の村づくりをすすめ,地域が元気になる「知産地笑(ちさんちしょう)」を推進.村長業の傍ら,150 坪の畑で野菜づくりを楽しんでいる.

井階友貴(Tomoki Ikai)

福井大学医学部地域プライマリケア講座 教授(高浜町国民健康保険和田診療所/JCHO若狭高浜病院) 福井県高浜町マスコットキャラクター「赤ふん坊や」健康部門マネージャー.着ぐ○み片手に地域主体の健康まちづくりに奮闘する,マスコミも認める(!?)“まちづくり系医師”.