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最新号(10月19日発行)
2007年11-12月号 (Vol.7 No.6) 定価 2,625円(税込)
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科学する物語・空想する科学瀬名秀明
第6回 ゲノムサイエンスは何に「敗北」したのか【2010年 ロスアンゼルス】第5回FANTOM国際会議の発表を終えて,希未は再会した大学院時代の親友と遊びに出掛けた.ユニバーサルスタジオを堪能し,チャイナシアターの近くで映画を観た.木を生やしたネコ,人間の子を産むニワトリ,そんな想像力のキメラたちが疾駆する,アバラットという架空の世界の物語だ. 街はクリスマスの電飾で騒がしい. 「飛行機の窓から見たら,すごくきれいだったよ」と弓子.「ゲノムの地図も,いつかあんなふうにきれいな街を描くといいのに」 ★☆★☆★☆(中略) 生命とは何か? 一般には1)膜をもち,2)エネルギー代謝し,3)子孫を残すものだといわれるが,これが定義とさえいえないことは多くの人が知っている.定義できないものを研究していると自称する生命科学者が不思議でならない,そんなものは科学ではない,とまともな数学者ならいうはずだ.アデニンとチミン,シトシンとグアニンの比率が同じであることを発見したエルヴィン・シャルガフは,結果的にワトソンとクリックに敗れた.しかし彼は晩年に何冊ものすばらしいエッセイを遺し,その1冊『不可解な秘密』(法政大学出版局)の冒頭で,やはりこの問題について論じている.シャルガフは鋭い洞察と共にこう問いかける.いったい生命は研究できるものであろうか.科学の中で生物学だけが,自分の本来の対象を定義できない.そしていま,分子生物学の研究はますます莫大な費用をかけるようになったが,知れば知るほど科学者たちは無知になっている.しかも誰もが初期の目的を忘れてしまっていると. ※これまでの掲載内容はこちらをご覧下さい |
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