実験医学2022年1月号 特集「夜明けを迎えたヒト免疫学〜臨床検体からヒトの免疫応答機構の実態を知り、疾患制御に挑む」

先天性免疫異常症から見えるヒト免疫と病気の成り立ち

森尾友宏
特集

夜明けを迎えたヒト免疫学

先天性免疫異常症から見える
ヒト免疫と病気の成り立ち
森尾友宏
先天性免疫異常症(IEI)は免疫現象に関与する分子の変異によって発症する疾患の総称で,500 近い責任遺伝子
が同定されている.病因・病態探索から,変異部位の機能的意義,各分子のヒト免疫系における役割や,特定の
感染症や免疫関連疾患における役割が次々と明らかになってきた .少量検体での体系的な解析手法の進化から ,
IEI 研究の知見は,今後さらに基礎免疫研究や臨床応用研究に寄与すると思われる.また,免疫異常・免疫分子の
データベース構築も重要な課題であり,今後の免疫研究に大きく寄与すると考えられる.
キーワード

疾患モデル動物,疾患特異的 iPS 細胞,イカロスファミリータンパク質,ヘテロマー干渉阻害

はじめに

1 500 近い疾患・遺伝子異常

免疫系を構成する分子の異常による遺伝疾患を原発
性免疫不全症と呼称している.大半が単一遺伝子異常

❶	明らかになった疾患(カテゴリー分類)
International Union of Immunological Societies

である.表現型としては,「免疫系の機能喪失・低下」

(IUIS)には IEI 専門家会議が設置されており,1970 年

だけではなく,過剰免疫,炎症,アレルギー,自己免

から存在するとの記録がある.1983 年には約 50 の疾患

疫,腫瘍発生傾向などを主体とする疾患も数多く報告

がリストアップされ ,その後約 2 年ごとに疾患リスト

されている .そのために近年では先天性免疫異常症

の改訂にあたっている . 2013 年には疾患数が 200 を ,

(inborn errors of immunity,IEI)という言葉が広く
用いられるようになっている.

2019 年には 400 を超えた 1)2).
I E I は古典的には ,主として影響を受ける免疫細胞

免疫系を構成する分子の数は多く,またその遺伝子

亜群および表現型を基軸に分類されてきた.複合免疫

変異(バリアント)も稀ではない.I EI 研究から,責

不全,抗体産生不全,貪食細胞の異常などがそれにあ

任遺伝子産物の機能や ,タンパク質の機能ドメイン ,

たり,現在のカテゴリー分類もそれを踏襲している(簡

タンパク質複合体としての機能が明らかになり,基礎

易版を表 1 に提示する)
.例えば「特徴的所見や症候群

免疫研究の深化にも大きく貢献している.ここではま

を呈する複合免疫不全症」では,骨異常や腫瘍発生な

ず I E I について網羅的,体系的に提示し,その後最近

ど多系統の疾患につながる疾患群を内包している.

の研究から明らかになった知見について紹介する.

カテゴリー内の亜分類では,もう少し頭が整理され
る.
「内因性あるいは自然免疫異常」に含まれる「抗酸
菌易感染性を示すメンデル型遺伝性疾患」は IFN-γ関

Dissection of basic human immunity and pathogenicity of immune mediated disorders through
research on inborn errors of immunity

Tomohiro Morio:Department of Pediatrics and Developmental Biology, Tokyo Medical and Dental University(TMDU)
Graduate School of Medical and Dental Sciences(東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野)

実験医学 Vol. 40 No. 1(1 月号)2022

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続きは本誌にて御覧ください.
この記事の掲載号

実験医学2022年1月号
夜明けを迎えたヒト免疫学

上野英樹/企画