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〜あなたの研究生活をちょっとハッピーに〜


例年9月第1週に科研費の公募が開始され,11月までの2カ月の間に申請する.公募が開始されたら,まずはその年の公募要領に一度は目を通すこと.必ずその年の変更点があって,ときにはとても重要なものがある.また申請書の書式もしばしば変更されるので,申請書上部の説明を読んでおくこと.なお,平成29年6月現在,平成30年度助成の公募から,審査のしくみと区分だけでなく,申請書の書式も変更になることが決まっている.

科研費で基本的な研究種目は「基盤研究」と「若手研究」なので,まずはこれらのどれかの種目に応募することを考えよう.年齢と実績によって基盤研究か若手研究のなかから1つと,それに加えて,もし自分の研究に適した研究領域があれば新学術領域研究の公募研究に申請することが基本的な応募方法だと思う.

基盤研究への応募

基盤研究にはS,A,B,Cの4種目がある.基盤研究(S)と基盤研究(A)は採択率がそれぞれ,14.5%,24.4%だが,応募者のレベルが非常に高く激戦である.読者には基盤研究(C)に応募する研究者が多いかと思う.基盤研究(C)が科研費の一番ベーシックなものであるし,採択数も多い.平成28年度の基盤研究(C)の新規採択率は29.9%である.また実際に審査した経験からいうと,基盤研究(B)と基盤研究(C)の間には,かなりのレベルの違いがある.両者の採択率はほとんど変わらないが,基盤研究(B)になると優れた業績(ということはインパクトファクターの高い雑誌に掲載された論文)をもっていて,これまでにも基盤研究(B)以上の研究費を獲得している研究者が多く,かなりハイレベルの競争になる.一方,基盤研究(C)になるとある程度の発表論文さえあれば十分に採択される.

本来なら必要とする研究費の額に応じて基盤研究(A),基盤研究(B),基盤研究(C)のなかのどれに応募するか選択するのがよいのだろうが,実際には自分の研究レベルを考慮して選択するのがよい.あまり実績がないのに多額の研究費が必要だからと,いきなり基盤研究(A)に応募しても採択される可能性は非常に低い.基盤研究(C)や後述する若手研究からスタートして,実績を積んで上位レベルの種目にチャレンジするのがよい.もちろん,この数年内にCNS(Cell,Nature,Science)三大誌などの業績があり,自信のある人は積極的に研究費の大きな種目にチャレンジするべきだろう.

若手研究への応募

平成30年度公募から若手研究(A)が基盤研究に統合廃止され,従来の若手研究(B)をもとにした「若手研究」1種目だけになる予定である.若手研究といっても応募要件が,これまでの39歳以下から博士号取得後8年未満の者に変更されたため,必ずしも「若手」だけの研究種目ではない.この「若手研究」に応募する読者も多いと思う.

注意点は,若手研究に関しては受給回数制限があり,交付決定を受けた場合には2回まで研究費を受給できる.つまり若手研究で2回採択されて研究費をもらったら,若手研究の年齢制限内であっても基盤研究などに種目を変更して応募しなければならない.「交付決定を受ける」とは,採択されて交付内定の通知をもらった後に研究者が交付申請を行って交付決定されることで,交付内定を受けた後に交付申請を出さずに辞退したときには受給回数に含まれない.

若手研究は研究者が科研費に最初に応募する種目であり,その採択率は30.1%〔平成28年度の若手研究(B)のデータ〕である.当然,論文などの業績はまだ十分ではないことは審査委員も承知しているから,研究計画の内容が重要である.計画している研究内容がその「若手」に実現できるのか,その点をしっかりと示さないといけない.そのために,身につけている実験テクニックや手法,研究環境などをアピールすることだ.

挑戦的研究(開拓・萌芽)への応募

挑戦的研究(開拓・萌芽)は平成29年度の公募から開始された種目である.この応募種目が従来の挑戦的萌芽研究のころから申請書には業績欄がない.このことから研究業績がない,つまり発表論文がここ数年ないので挑戦的研究に出すという人がいる.しかし挑戦的研究は業績がない人のための応募種目ではない.あくまでも「斬新な発想に基づき,これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを志向し,飛躍的に発展する潜在性を有する研究計画」が対象である.実際のところ挑戦的研究は,挑戦的研究(開拓)が基盤研究(表1参照).これらの種目に応募する研究者も重複申請することを考えると,やはり激戦である.だから研究業績がないから挑戦的研究に応募するのではなく,本当に挑戦的研究にふさわしい研究テーマだけを挑戦的研究に出すべきだと思う.このような理由から,まだ業績の少ない人は挑戦的研究は避けて,まず基盤研究や若手研究に出すべきだと思う.なんとか発表論文を増やして,基盤研究や若手研究に応募する方が,採択される確率は高い.

新学術領域研究への応募

新学術領域研究は研究費の額が大きく魅力的である.計画班に入ることができれば年間数千万円で5年間の研究費があり,これだけでゆとりをもって研究に打ち込める.また公募研究も研究期間は2年間だが研究費が年間300〜1,000万円と,基盤研究(C)や若手研究よりも金額が大きい.また,新学術領域研究の公募研究には2領域に応募できる.

私自身,新学術領域研究では計画研究と公募研究で採択された経験があるが,単に研究費の1つというだけでなく,領域メンバーとの情報交換や共同研究の実施などによって,非常に得るところが多い.自身の研究に適した領域があれば,ぜひ応募することをお勧めする.

新学術領域研究の公募研究は,平成29年度申請時には文部科学省が審査を行っていて,申請書も文部科学省のホームページから入手する.

また日本学術振興会の科学研究費助成事業のホームページからも,「メニュー」→「各種目のページ」→「新学術領域研究(研究領域提案型)」,とたどっていくと公募要領や申請書を入手できる.

研究活動スタート支援

研究活動スタート支援だけは応募期間が異なり,通常は3月から5月までなので注意しておこう.

複数の種目への応募

科研費は1つしか応募できないのではなく,複数の種目に応募することが可能である.

重複制限にならないで複数応募できる研究種目の組合わせを一覧表にしてある(表1).

応募が可能な研究種目
現在,採択されていて,
来年度も継続の研究種目 or
来年度の継続分はなく,新規で応募する研究種目
基盤研究(S) 基盤研究(A) 基盤研究(B) 基盤研究(C) 若手研究 挑戦的研究(開拓) 挑戦的研究(萌芽) 新学術領域研究の公募研究(2領域応募可能) 応募できる最大数
基盤研究(S) △(新規の応募のとき) ◯◯ 5
基盤研究(A) △(新規の応募のとき) ◯◯ 5
基盤研究(B) ◯◯ 4
基盤研究(C) ◯◯ 3
若手研究 ◯◯ 3
挑戦的研究(開拓) ◯◯ 5
挑戦的研究(萌芽) ◯◯ 4〜5
新学術領域研究の公募研究(2領域応募可能) 3〜5
研究活動スタート支援に採択された者** ◯◯ 3〜5
表1●複数応募できる研究種目の組合わせ
表は申請者が研究代表者として応募できる研究種目を示している.特別推進研究と海外学術調査については記載していない.また,「研究計画最終年度前年度の応募」の場合は除く.基盤研究(S)と基盤研究(A)は両方に応募できるが,両方採択された場合は基盤研究(S)の研究課題のみ実施する.また基盤研究(S)と(A)の応募者は挑戦的研究(開拓)と(萌芽)のどちらか1つに応募できる.挑戦的研究(開拓)の応募者は,基盤研究(S)と基盤研究(A)は両方に応募できる.挑戦的研究(萌芽)の応募者は,基盤研究(S)と基盤研究(A)の2種目か,基盤研究(B)に応募できる.
*:新学術領域研究の公募研究に応募するものは,基盤研究(C)か若手研究に応募するときには挑戦的研究(開拓・萌芽)に応募できない.
**:研究活動スタート支援に採択された者は,いずれの種目にも応募可能だが,採択が決まったら研究活動スタート支援は辞退しなければならない.文部科学省公表資料をもとに作成.

基盤研究(S)と基盤研究(A)の新規の応募者は,挑戦的研究の(開拓)か(萌芽)のどちらか,および新学術領域研究の公募研究(2領域に応募可能)と合わせて,最大5つの研究種目に応募できる.基盤研究(S)か基盤研究(A)の継続の者は,挑戦的研究の(開拓)か(萌芽)のどちらか,および新学術領域研究の公募研究(2領域に応募可能)と合わせて,最大4つの研究種目に応募できる.

基盤研究(C)と若手研究の新規の応募者は,新学術領域研究の公募研究(2領域に応募可能)と合わせて,最大3つの研究種目に応募できる(継続の者は最大2つ).

挑戦的研究(開拓)の新規の応募者は,基盤研究(S)と基盤研究(A)の両方,および新学術領域研究の公募研究(2領域に応募可能)と合わせて,最大5つの研究種目に応募できる(継続の者は最大4つ).

挑戦的研究(萌芽)の新規の応募者は,基盤研究(S)と基盤研究(A)の両方か基盤研究(B)のみ,および新学術領域研究の公募研究(2領域に応募可能)と合わせて,最大4ないし5つの研究種目に応募できる(継続の者は最大3 ないし4つ).

新学術領域研究の公募研究の継続・新規応募者のうち,基盤研究(S)か基盤研究(A)(あるいは両方の応募が可能)に応募する者は,他に挑戦的研究(開拓・萌芽)に応募できる.また新学術領域研究の公募研究の継続・新規応募者のうち,基盤研究(B)に応募する者は,挑戦的研究(萌芽)に応募できるが,基盤研究(C)か若手研究に応募する者は他には応募できない.

このように科研費は複数の種目に応募することが可能なので,できるだけチャンスを活かして応募しよう.

表2は著者がこれまでに同一年度に複数採択された種目の一覧表である.基盤研究(B)と挑戦的萌芽研究(萌芽研究),新学術領域研究(特定領域研究)などの重複可能な種目に応募していくつかは採択された.

年度 同じ年度に採択された複数の種目
平成19年度 基盤研究(B)(新規) 萌芽研究(新規)
平成20年度 基盤研究(B)(継続) 萌芽研究(継続) 特定領域研究(公募)(新規)
平成21年度 基盤研究(B)(新規) 新学術領域研究(公募)(新規)
平成22年度 基盤研究(B)(継続) 新学術領域研究(計画班)(新規)
平成23年度 基盤研究(B)(継続) 挑戦的萌芽研究(新規) 新学術領域研究(計画班)(継続)
   :継続    :新規
表2●著者が平成19〜23年度の間に重複して採択された種目

応募種目の選び方のポイント

  • 科研費の初心者は基盤研究(C)か若手研究から応募をスタートして,実績と経験によって上のレベルの種目にチャレンジしていこう.
  • 科研費は複数の種目に応募できる.

日本学術振興会特別研究員の科研費への応募

平成26年度公募から,日本学術振興会特別研究員のうちSPD・PD・RPDの者は,科研費の一部種目に応募できるようになった.PDは大学院博士課程修了者を,SPDはPDのなかの特に優れた者,RPDは出産・育児によって研究を中断していた者を対象とした特別研究員である.もちろん科研費自体の応募資格を満たしている必要がある.すなわち,1章のくり返しとなるが,①応募時点において,所属する研究機関から次の3つの要件を満たす研究者であると認められ,e-Radに研究者情報が登録されている者で,②科研費やそれ以外の競争的資金で,不正使用,不正受給または不正行為を行ったとして「その交付の対象としないこと」とされていない者は応募できる.

3つの要件とは,

  • 研究機関に,当該研究機関の研究活動を行うことを職務に含む者として,所属する者(有給・無給,常勤・非常勤,フルタイム・パートタイムの別を問わない.また,研究活動そのものを主たる職務とすることを要しない.)であること
  • 当該研究機関の研究活動に実際に従事していること(研究の補助のみに従事している場合は除く.)
  • 大学院生等の学生でないこと〔ただし,所属する研究機関において研究活動を行うことを本務とする職に就いている者(例:大学教員や企業等の研究者など)で,学生の身分も有する場合を除く.〕
(平成29年度 科研費公募要領より引用)

である.なお,応募できる種目は基盤研究(B, C),若手研究,挑戦的研究,新学術領域研究の公募に限られる.

特別研究員の方は研究活動を続けるためにいずれは科研費に応募しなければならなくなるので,経験を積む意味でもぜひともチャレンジしてほしい.

※本コーナーは『科研費獲得の方法とコツ 改訂第5版』(2017年8月発行)から抜粋したものです.記載内容は発行時点における最新の情報に基づき,正確を期するよう,最善の努力を払っております.しかし,本記事をご覧になる時点において記載内容が予告なく変更されている場合もございますのでご了承ください.