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応募種目の選択とともに,審査区分(応募分野)の選択は非常に重要だ.平成30年度の公募からこれまでの審査で使われていた「系・分野・分科・細目名」といった審査分野の分け方ではなく,「小区分・中区分・大区分」で構成される新しい審査区分で審査が行われることになった.審査区分表は9月に公開される科研費の公募要領に含まれていると思うが,現時点(平成29年6月)では,文部科学省のサイトから科学研究費助成事業「審査区分表」をダウンロードできる.

審査区分は以下のように応募種目によって異なる.

  • 基盤研究(B, C),若手研究:306の「小区分」
  • 基盤研究(A),挑戦的研究(開拓・萌芽):65の「中区分」
  • 基盤研究(S):11の「大区分」

キーワードが記載された審査区分表を見ながら,申請書の内容にふさわしく,正確に審査してくれる領域に応募すること.自分の所属学会の領域,所属講座の分野に応募しなければいけないということはない.

区分(分野)選びの注意点

注意すべきことは,応募する研究内容に対して,いくつか異なる審査区分の候補があることだ.例えば,「ペプチド・ホルモンに関する研究」の内容で応募するときには,

  • ①小区分:43030 「機能生物化学関連」生理活性物質
  • ②小区分:54040 「代謝および内分泌学関連」内分泌学,神経内分泌学,生殖内分泌学

などの小区分が候補になるだろう.また,このペプチド・ホルモンの機能を調べる研究計画ならば,その他にも

  • ③小区分:46010 「神経科学一般関連」神経化学
  • ④小区分:46030 「神経機能学関連」神経生理,神経薬理,情報伝達
  • ⑤小区分:47010 「薬系化学および創薬科学関連」医薬品探索,生体関連物質
  • ⑥小区分:47040 「薬理学関連」薬理学,シグナル伝達
  • ⑦小区分:47050 「環境および天然医薬資源学関連」天然活性物質
  • ⑧小区分:48020 「生理学関連」一般生理学,環境生理学
  • ⑨小区分:48030 「薬理学関連」分子細胞薬理,行動薬理,創薬薬理学

など多くの小区分を候補としてあげることができる.どの小区分に応募するか迷うことが多いが,申請書の研究計画の内容をよく検討して最適な審査区分を選ぶことだ.

データベースを使って最適な審査区分を選ぼう

最適な審査区分を選ぶには,科学研究費助成事業データベースを使って,応募しようとする分野でどのような研究課題が採択されているか,また自分の研究計画のキーワードで検索したときにヒットした採択課題がどの分野に応募したものであるのかを調べて,審査区分を決定するのがよい.平成30年度の制度改革で審査区分という形になったが,キーワード自体はそれほど変わっていないので傾向をつかむことができる.科研費公募要領の審査区分表にあるキーワードで審査区分を選んでもよいが,採択課題を調べて審査区分を選ぶ方が自分の研究課題にふさわしい分野がわかる(第4回 採択課題の調査 で後述).

また応募しようとする分野の過去の審査委員を調べて参考にするのもよい(第5回 審査委員は誰? で後述).自分の研究をよく知っている審査委員のいる分野は的確な審査が期待できる.

細目で異なる採択件数,しかし採択率はほぼ同じ

平成30年度の公募から応募分野は審査区分とよばれるようになり,大区分→中区分→小区分と分かれる予定であるが,ここでは平成29年6月現在の時点で公開されている,平成28年度の細目ごとの応募件数と採択件数をみてみよう.

日本学術振興会科学研究費助成事業のページのメニュー「関連データ」→「科研費データ」→「Ⅲ.科研費の配分状況」→「(2)研究分野別配分状況」→「③細目別応募・採択件数」からデータファイルをダウンロードできる.ここに分野別,研究種目別の詳細な応募と採択状況の一覧表がある(表1には,その一部を抜粋して示した).

細目名応募件数採択件数採択率(%)
解剖学一般(含組織学・発生学)1584528.48
生理学一般1083027.78
環境生理学(含体力医学・栄養生理学)802227.50
薬理学一般882528.41
医化学一般1243326.61
病態医化学1062927.36
人類遺伝学14428.57
人体病理学1905528.95
実験病理学1754928.00
寄生虫学(含衛生動物学)391128.21
細菌学(含真菌学)1022928.43
ウイルス学832327.71
免疫学852327.06
食生活学44112829.02
科学教育35110830.77
教育工学3299829.79
リハビリテーション科学・福祉工学47014029.79
スポーツ科学3309930.00
応用健康科学34210029.24
外国語教育47015532.98
経営学36811932.34
社会学32810632.32
社会福祉学35411632.77
教育学44414632.88
教科教育学46215232.90
消化器内科学47113328.24
循環器内科学37710928.91
小児科学42712328.81
放射線科学50614929.45
消化器外科学44912828.51
脳神経外科学3359829.25
整形外科学41311928.81
泌尿器科学3108527.42
産婦人科学3129028.85
外科系歯学35910428.97
基礎看護学34510831.30
生涯発達看護学3079731.60
高齢看護学3089831.82
表1●平成28年度新規採択課題の採択率
基盤研究(C)の基礎医学分科と消化器・循環器内科およびその他の応募件数の多い分野.日本学術振興会「平成28年度科学研究費助成事業(基盤研究等)種目・細目別 新規応募件数一覧」をもとに作成.

この一覧表を見ていくと,応募件数と採択件数は細目ごとにかなり違っていることがわかる.しかし重要なのは,採択率はどの細目においてもほぼ一定であるということだ.審査区分ごとに採択率が一定という傾向は,平成30年度以降も同様に続くと考えられる.科研費の分野別採択件数は,分野ごとの応募件数にほぼ比例して決まってくる.そのため科研費の分野別の採択件数は,必ずしもその分野の現時点での重要性によるのではない.もちろん研究分野が活発であれば研究者が多く,応募件数も多いだろうから,採択件数も多いだろう.所属の学会から,その分野への科研費応募件数を増やそうというキャンペーンを働きかけられたことはないだろうか? これは応募件数を多くして,その分野の採択件数を増やすのが目的だ.

ホットな研究分野は当然,応募件数も多いと予想されるが,平成28年度の一覧表から医歯薬学分野の種目で応募件数が多い順に並べると,

放射線科学(1,043件),消化器内科学(878件),消化器外科学(863件),外科系歯学(855件),小児科学(817件),整形外科学(784件),循環器内科学(754件),基礎看護学(722件),産婦人科学(693件),耳鼻咽喉科学(666件),高齢看護学(650件).精神神経科学(634件),生涯発達看護学(631件),脳神経科学(618件).

となる.全体のなかでもこれらの分野とリハビリテーション科学・福祉工学(1,137件),食生活学(969件),スポーツ科学(936件),応用健康科学(924件),教育学(866件),素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(843件),教科教育学(832件),外国語教育(788件),生体医工学・生体材料学(747件),社会学(732件),社会福祉学(692件),経営学(691件),教育工学(629件),科学教育(624件)が応募件数が600件を越えた上位の分野だ.もちろんこれらの分野でも,応募件数が多くなるほど,採択件数が多くなっている.

異分野への応募

ストレートに自分の研究分野で勝負するのもいいが,関連があるが少しだけ離れた分野に応募するのも1つの戦略だ.ともかく,申請内容の研究テーマを考えて最適の分野に応募するのがよい.たとえ自分には異分野で知り合いがいなくても,内容がしっかりしてさえいれば大丈夫だし,かえってその分野では新鮮なテーマに映るのか,案外採択されることが多いのだ.

例えば私は「内因性の成長ホルモン分泌促進因子グレリンはドーピングの禁止薬物の対象となるか?」という研究課題で,「スポーツ科学」分野で採択されたことがある.これは,私にとってはまったく知り合いもいない異分野であるが,内容を十分に理解してくれると考えてこの分野に応募し採択された.私のまわりにも,科研費をずっと出していたけれど採択されず,内容はほとんど同じだが応募分野を変更しただけで採択されたという例が少なからずある.

また,医学博士(MD)でない研究者でも,臨床医学分野に応募して採択されることも十分に可能だ.例としてあげると,知り合いのHくんはMDではないが,骨形成タンパク質を研究していて,当初基礎研究の分野に応募していたが採択されず,整形外科分野に応募先を変更して採択され,以後継続して循環器内科学,内分泌学などの臨床医学分野で採択されている.

くれぐれも申請内容からよく考えて審査区分を検討しよう.

審査区分(応募分野)の選び方のポイント

  • 所属講座や所属学会の分野に応募するのではなく,申請書の内容に最もふさわしい審査区分に応募しよう.

※本コーナーは『科研費獲得の方法とコツ 改訂第5版』(2017年8月発行)から抜粋したものです.記載内容は発行時点における最新の情報に基づき,正確を期するよう,最善の努力を払っております.しかし,本記事をご覧になる時点において記載内容が予告なく変更されている場合もございますのでご了承ください.