Smart Lab Life

〜あなたの研究生活をちょっとハッピーに〜


どのような内容で応募するか,科研費に応募すると決めた時点で多くの人は,普段行っている研究から申請書の内容を考えているだろう.しかし申請書全体の構成を考えずに,いきなり申請書の最初の部分から書いていく人も案外いるようだ.ぜひ,まずどのような内容で応募するのか,全体の構想を考えて,おおまかなアウトラインを作ってから申請書を作成していってほしい.

アウトラインを作るうえでお勧めのアイデアのまとめ方を以下にあげておく.

ノートに書く

応募内容をまとめていく方法として,アイデアを視覚的にノートに書いていくことをお勧めする(図1).

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図1 アイデアを視覚化する例
アイデアをまとめるには,頭で考えるだけでなく,文字や図表にして視覚化するとよい.何でもよいからノートに書いてみて,目で見て考えると,よいアイデアが浮かぶことが多い.

それは,ただ研究内容を頭の中で考えているのと,実際にその内容を文字や絵で視覚化してみるのとは大きく違うからだ.アイデアの断片だけでもノートに書いて目で見ていると,さらに必要な実験とか,こういった実験も可能なのでは,などのヒントを得やすい.どのようにアイデアをノートに書いていくかは各人によって異なるだろう.私の場合は研究内容で思いついたことを,形式も何も考えずに,何でもよいから書いていくようにしている.ただアイデアを書き留めておく.きれいでなくても,わかりにくくても,気にしない.ともかく文字や文章や絵にして書いていくことだ.

私個人の感想だが,アイデアを書いていくのはアナログに限る.パソコンを使ってワープロソフトやプレゼンテーションソフト,その他のソフトでアイデアをまとめていく方法もあるが,なぜかペンとノートというきわめてアナログな手法の方がアイデアが浮かびやすい(と,思っているのは私だけだろうか?).

Post-it®を使う

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図2 Post-it®を使ってアイデアを書き留め,壁に貼って構成を考えていく

Post-it®(付箋)を普段も使っていることと思う.これをアイデアをまとめるために利用する方法がある.75 mm四方の大きめのものに,キーワードや図を記入していく.記入したものを壁やボードに貼って,並べ替えたり,項目を追加したりして,全体の構成を組み立てていく(図2).

マインドマップでまとめる

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図3 マインドマップの見本
有名なマインドマップはアイデアをまとめるのに役に立つ.その奇妙な形には最初,抵抗を覚えるかもしれないが,なかなか面白い.

また「マインドマップ」という思考の整理手法を知っているだろうか? これもアイデアをまとめていくのに非常によい方法である.アイデアをどんどん出して,関連したものを視覚化していく(図3).マインドマップに関する書籍もたくさん出ているので,一度調べてみることをお勧めする.

以上のものに共通しているのは,アイデアやその断片を,目に見える形で視覚化していくこと.不思議なもので,頭で考えるだけよりも,目や耳などの五感を総動員して考える方が,はるかによいアイデアが生まれる.

申請書の内容をどのようにするかアイデアが浮かばないというときは,「その研究計画で何をやるのか」がまだ自分の中で決まっていないのだ.まず自分が行っている研究をしっかりと再検討して,申請書のアイデアをまとめていこう.

3つずつアイデアを出す―初心者におすすめの方法

科研費の申請書をみてくれる適当な指導者がまわりにいない,科研費に採択された人がまわりにいない,手元に科研費申請書の見本がない,などの環境にいる科研費申請の初心者は,どうしても内容の薄い申請書になりがちだ.科研費申請の研究テーマを決めても,経験が少ないため,どのような内容で申請書を書いていったらいいのかわからない,申請書のスペースが埋まらないと訴える人が多い.それは研究内容をはっきりと自分の中で確立していないのが本当の理由なのだが,確かに初心者には申請書に向かって書こうとしたときに,そのスペースの大きさに戸惑ってしまうことが多いようだ.

こういったときには「研究テーマに関して3つの研究項目を出してみて」とアドバイスする.アイデアを3つ出してと言えば,誰でもなんとかひねり出すものだ.そうして出された3つの研究項目について,詳しく内容を書いていくと申請書のスペースを埋められる.基盤研究(C)や若手研究では申請書のスペースに3つくらいの具体的な研究項目を中心に書いていけば,少なくとも全体の構成は整う.さらに研究計画・方法の部分では,各研究項目ごとに,それぞれさらに3つくらいの具体的な実験方法を書いていけばよい.

例をあげてみていこう(実例をもとにした架空の内容である).

申請予定の研究テーマ:
「創傷の持続洗浄療法による感染予防」
実験内容:
感染創モデルを作製して,持続洗浄療法を行った群と行っていない群とで創傷部の感染状態や治癒を比較する.

このような内容で相談を受けたとする.正直これだけでは内容が弱すぎると思う.ただ単に治療を行った群と行っていない群との比較だけだからだ.初心者にありがちなのだが,「〜を測定する」「〜と〜を比較する」「〜を調べる」といった簡単なレベルの記述で終わっている例が多い.そこをもう少し踏み込んで,そのためにどのような研究を行うのか,具体的にどういった実験を行うのかまで,詳しく書いてほしい.

相談しながら,3つの研究項目を考え出したとする.

  • ①感染創における菌の種類によって持続洗浄法の効果は異なるのか?
  • ②創傷治癒を速めるFGF(線維芽細胞増殖因子)を加えることで,創傷治癒の効果は高まるのか?
  • ③抗菌ペプチド投与による感染防止や,循環調節ペプチド投与による血流改善によって,治癒は進むのか?

③は,わたしの専門である生理活性ペプチドの分野に無理矢理もっていった感があるが,許してほしい.

こうやって3つの研究項目をあげると,その後の内容が非常に書きやすくなる.菌の種類はどのようなものがあるか? 投与するFGFの濃度は? 他の増殖因子は創傷治癒に使えないか? ペプチドは何を使うのがよいのか? このように次々に関連項目が浮かんで書く内容が広がり,内容が充実したものにできるだろう.このように1つの研究テーマに関して,大きな枠組みで書いていくよりも,3つくらいの研究項目をつくって,いくつかの部分に分けていくと初心者には書きやすい.

アイデアのまとめ方

  • 応募内容の全体構想を考えてから,細部の項目を仕上げていこう.
  • 科研費申請に関するアイデアは常日頃からノートに記録しておこう.
  • Post-it®,マインドマップ,3つずつアイデアを出す手法を使って考えよう.

※本コーナーは『科研費獲得の方法とコツ 改訂第5版』(2017年8月発行)から抜粋したものです.記載内容は発行時点における最新の情報に基づき,正確を期するよう,最善の努力を払っております.しかし,本記事をご覧になる時点において記載内容が予告なく変更されている場合もございますのでご了承ください.