実験医学 2015年8月号 Vol.33 No.13

睡眠と覚醒のサイエンス

なぜ眠るのか? その分子実体は? どう制御できるのか?

  • 櫻井 武/企画
  • 2015年07月17日発行
  • B5判
  • 133ページ
  • ISBN 978-4-7581-0142-4
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

覚醒の安定性維持に決定的な役割をするオレキシンが1998年に同定され,睡眠覚醒制御機構の理解が進んだ.一方,睡眠そのものの役割の解明も進行しつつある.しかし,広く動物にみられる生理現象である睡眠—その役割がいまだ完全に明確になっていないことは生物学における大きなミステリーの1つともいえる.本特集では,睡眠に関する理解の現状をさまざまな視点からとらえながら,睡眠研究の魅力をお伝えする.

人生の1/3を占めながら謎に包まれた生体活動――睡眠.このブラックボックスが,いま開きつつあります.睡眠遺伝子の発見から,概日時計との関連,夢の解読まで,最先端の多角的な挑戦をご紹介します!

目次

特集

睡眠と覚醒のサイエンス
なぜ眠るのか? その分子実体は? どう制御できるのか?
企画/櫻井 武
概論―睡眠の「闇」に挑む【櫻井 武】
覚醒の安定性維持に決定的な役割をするオレキシンが1998年に同定され,睡眠覚醒制御機構の理解が進んだ.一方,睡眠そのものの役割の解明も進行しつつある.しかし,広く動物にみられる生理現象である睡眠—その役割がいまだ完全に明確になっていないことは生物学における大きなミステリーの1つともいえる.本特集では,睡眠に関する理解の現状をさまざまな視点からとらえながら,睡眠研究の魅力をお伝えする.
眠気の正体を求めて【船戸弘正】
覚醒時に眠気をひき起こすとともに,睡眠不足によるネガティブな影響を説明するものとして,睡眠負債が措定されている.睡眠負債は,覚醒中に増加し睡眠中に減少する.多電極細胞外記録による検討から,睡眠負債にリンクした神経細胞集団の活動性の変化が明らかになってきた.候補としてアデノシンが注目されているものの,睡眠負債の分子的実態は明らかではない.フォワード・ジェネティクス研究による,睡眠負債をはじめとした睡眠覚醒制御機構の解明が期待される.
なぜ眠り,目覚めるのか【小山純正】
本稿では,視床下部と脳幹に存在する睡眠・覚醒ニューロンの活動様式から,睡眠・覚醒の調節機構,特に睡眠−覚醒の移行期において睡眠・覚醒ステージを切り替えるしくみについて概説する.徐波睡眠から覚醒(覚醒から徐波睡眠)への推移は,視床下部前部の睡眠ニューロンと,視床下部後部/脳幹の数種の覚醒ニューロンとの相互抑制作用によって調節される.このバランスを睡眠の側に傾ける要因として,アデノシンの作用が挙げられる.徐波睡眠からレム睡眠への移行,レム睡眠から覚醒への移行には,視床下部から脳幹のレム睡眠中枢への入力が重要な役割を果たすと考えられる.これらの推移を誘発する物質があるのか,あるとしたらどんな物質なのか,については謎である.
概日時計による睡眠の調節【三枝理博】
睡眠覚醒リズムはホメオスタシス機構と概日リズム機構の2本建てで巧妙に制御されている.本稿ではまず,両者を取り込んで睡眠覚醒リズムを説明したツープロセスモデルを紹介し,続いて中枢概日時計による睡眠覚醒の調節機構,時計遺伝子と概日リズム睡眠障害,最後に中枢概日時計の神経メカニズムについて,われわれの見出した知見も含めて概説する.
夢内容のブレイン・デコーディング【堀川友慈/神谷之康】
睡眠が健康な生活を維持するうえで重要であることに疑いの余地はないが,睡眠にともなって経験される夢の機能に関しては,「脳のランダムな活性化によって生じる随伴現象で,内容に特別な意味はない」という説を含め,さまざまな説が唱えられている.いずれも間接的な証拠による議論が中心で,実証的な解明は不十分である.本稿では,前半で,夢の機能に関するいくつかの仮説を概説した後,夢の機能解明のための強力なツールとなりうる,夢の内容を睡眠中の脳活動から解読する技術に関するわれわれの研究成果を紹介する.
視知覚学習と睡眠【佐々木由香】
われわれは,視知覚学習が睡眠によって固定され向上してゆくメカニズムを研究している.特に,最新の非侵襲的ニューロイメージング技術を駆使し,これまで睡眠ポリグラフ技法のみでは調べることの難しかった睡眠中の脳の局所的な活動を調べている.その結果,視知覚学習後ノンレム睡眠中,一次視覚野 (V1) の訓練視野に網膜視野的対応する局所脳領域の活動量,特に睡眠紡錘波帯域の活動が上昇し,学習向上と密接な関連をもつことが明らかになった.今後は徐波やレム睡眠の役割を調べ,睡眠のもつ可塑性メカニズムの全体像をつかむ必要がある.
光遺伝学を用いて睡眠覚醒を制御する【山中章弘】
光遺伝学(オプトジェネティクス)は2005年に開発された新しい研究技術である.光遺伝学を用いると,すべての神経回路が保存された個体において,特定の神経の活動を光で操作することが可能となる.そして,その神経活動操作の結果として表出する行動発現を解析することによって,その神経回路が担う生理機能を明らかにすることができる.われわれはこの技術を用いて睡眠覚醒を調節する脳のメカニズムについて明らかにする研究を行っており,視床下部のメラニン凝集ホルモン(MCH)産生神経を光で操作し,MCH神経の活動がノンレム睡眠とレム睡眠の切り替えに重要な役割を担っていることを見出した.

インタビュー

日本のサイエンスを担う これからのリーダーの条件を求めて
第4回 Big Pictureを描き,新しい分野を切り拓く【インタビュー 今井眞一郎】

トピックス

カレントトピックス
代謝と共役するDnmt3aを介したエピジェネティクスは破骨細胞分化の制御にかかわる【西川恵三】
TPCsはエボラウイルスの宿主細胞侵入を制御し,治療標的となりうる【櫻井康晃/Robert Davey】
CHOPS症候群―転写伸長反応異常による新規先天異常症候群の同定【泉 幸佑/白髭克彦】
ミクログリアにおける自然免疫受容体TLR9シグナルは成体ニューロン新生の恒常性を保証する【松田泰斗/中島欽一】
ビタミンKの吸収経路の発見【高田龍平/山梨義英/鈴木洋史】
News & Hot Paper Digest

連載

クローズアップ実験法
新しい光遺伝学:CRISPR-Cas9システムを応用した簡便遺伝子発現制御法【佐藤守俊/二本垣裕太】
《新連載》テツヤ、留学生活はどうだい。
「理解」は話し手と聴き手,どちらの責任?【Kyota Ko/Simon Gillett】
教えて!エコ実験RETURNS
もちつもたれつ! 試料をリクエストしよう【今居 譲】
《最終回》DR~既存薬が新薬に生まれ変わる温故知新のサイエンス!
ビジネスとしてのDR【岩本 隆】
UJA Presents 留学のすゝめ!
自分と向き合い,留学先を選ぶ【佐々木敦朗】
ラボレポート ―留学編―
サイエンスの頂をめざして~真っ青な空の下にある美しい研究所にて ― Salk Institute for Biological Studies【松村成暢】
Opinion ―研究の現場から
広告医学(AD-MED)で医療をかえる!【清水真哉/武部貴則】

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