劇的に診断力上がる!
診断推論×ロジックツリー

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浮腫編 ❶
これでバッチリ!全身浮腫の診断

2022年12月23日 公開

はじめに

さあ,今回からは浮腫編の始まりです.浮腫をきたす疾患は数が多く複数の専門領域にまたがるため苦手とする方は多いようです.今回はロジックツリーの構造をさらに深く理解しながら浮腫の診断推論を行っていきましょう.

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人は生まれながらに自然とロジックツリーの考え方ができる

専攻医さん

専攻医:ロジックツリーって知れば知るほど奥が深いですね.相当練習して習熟しないと私たちが扱うことは難しいのでしょうか.

指導医先生

指導医:そうでもないよ.人は生まれながらに自然とこの思考を使っているんだ.例えば最近保育園に通っているうちの娘が夜寝る前に布団の上でクッキーを食べるようになってしまってね.やめるようにと注意したところ「なんでいけないの?」と聞いてきた.「お菓子が布団にこぼれて虫が食べに来るからだよ」と伝えたところ「じゃあガムならいいの?」と聞いてきたんだよ.

研修医

研修医:ははは,娘さんやりますね.こりゃ先生も一本とられましたね.

専攻医:あっ!わかりました.それって「3STEP問診」を使ってロジックツリー診断推論をすすめていく過程と同じですよね.

図1 「お菓子」からはじまるカテゴリー分けとロジックツリー
図1 「お菓子」からはじまるカテゴリー分けとロジックツリー

指導医:そう.いきなりやみくもに「おせんべいはいいの?」とは聞いてこなかった.彼女は頭の中でお菓子を散らかりやすいものと散らかりにくいものにカテゴリー分類したんだね(図1).そして,分類をするための基準となる背景を「なぜ」という質問できちんと確認したからこそカテゴリー分けができたんだ.もしこれが仮に「寝る前に食べると虫歯になりやすいから」という理由であればお菓子全般が駄目ということになってしまうからね.このように会話内容を抽象化して出発点を設定した上で,カテゴリーの性質を理解して個別項目に具体化して応用するという考え方はロジックツリーの考え方の中でも非常に重要なんだ.彼女はそれを本能で理解していたんだね.

研修医:なるほどー.そう考えると僕たちも普段無意識でこの考え方を使っていたんですね.

慢性浮腫の患者さんが来院した

(総合内科外来にて)

症例

70歳代男性.既往歴に糖尿病,関節リウマチあり.以前より下腿の浮腫があり近医より利尿薬が処方されており,しばらく小康状態を保っていたが最近は下腿の浮腫が悪化し動くと息苦しさもでてきたため当院総合内科外来を紹介受診した.
体温 36.2℃,血圧 114/82 mmHg,脈拍数87回/分, SPO2 94 %(room air)

専攻医:慢性経過の浮腫の患者さんですね.糖尿病の既往があるので糖尿病性腎症や拡張障害や冠動脈虚血などからの心不全,NASH(non-alcoholic steatohepatitis,非アルコール性脂肪肝炎)からの肝硬変などが考えられます.カルシウム拮抗薬やNSAIDs,甘草,チアゾリジンなどの浮腫の原因になりそうな薬剤内服はないようです.念のため甲状腺機能低下症も鑑別にいれたほうがよさそうですね.SPO2がやや低めなので胸水貯留などがないかは一度確認しておきたいです.

研修医:浮腫の原因のカテゴリーといえば心臓・肝臓・腎臓・甲状腺・低栄養ですよね.とりあえず採血,胸部X線検査,心電図,超音波検査などにいってもらうことにします.

指導医:ちょっと待った.研修医君,また手抜きしようとしているね.病歴と身体所見をきちんととることが遠回りにみえても診断への一番の近道なんだ.もっと具体的に患者さんから病歴を聞いてみよう.近医から過去の画像や血液検査があれば取り寄せることも忘れずにね.

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