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最新号(4月20日発行)
2007年5-6月号
(Vol.7 No.3)
定価 2,625円(税込)
バイテクノロジージャーナル最新号詳細

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目次
特集
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特集
ゲノム創薬・疾患診断を実現する
新世代マイクロアレイ
企画/稲澤譲治(東京医科歯科大学難治疾患研究所)

・〈概論〉マイクロアレイの進歩と診断技術の発展
  稲澤譲治
マイクロアレイは一度に数千〜数万の遺伝子の変化を検出できる革新的なゲノム解析ツールとして1990年代半ばに登場した.2002年に出版されたマイクロアレイのテキストには,“all human illness can be studied by microarray analysis, and the ultimate goal of this work is to develop effective treatments or cures for every human disease by 2050”の一文が記述されている.癌はマイクロアレイ解析の中心的な対象であり,その治療や予防のブレイクスルーとなる遺伝子情報を提供してくれものと多大なる期待が寄せられた.2007年2月6日には,米国食品医薬品局(FDA)によって乳癌の予後予測を目的としたマイクロアレイの診断デバイスMammaPrint®の米国での発売が承認された.これはマイクロアレイの体外診断法としての最初の認可である.2005年からFDA主導で組織されたマイクロアレイの品質管理プロジェクト(MAQC)もフェーズ1を終了し,マイクロアレイ解析による遺伝子発現プロファイルの再現性が確認された.今後10年間で,慎重な対応のもとマイクロアレイは,乳癌だけでなく他の癌においても予後に加え薬剤応答性や副作用を予測する癌のテーラーメイド医療の診断法として臨床現場で活用されるのは疑いのないところである.

【1 ゲノムアレイ解析の新展開】

・高密度ゲノムアレイにより急速に進化する癌ゲノム解析
  柴田龍弘
癌は多様な遺伝的多型を背景として,後天的なゲノム異常(ジェネティックあるいはエピジェネティックな異常)が蓄積した結果,発生・進展していくことが知られている.どういった遺伝的背景が癌の発症や罹患性と相関し,また個々の癌細胞でどういったゲノム異常が起こっているのかを明らかにすることは,癌の予防・診断・治療のために必要不可欠な情報であるが,その全貌を明らかにするためには膨大な解析が必要であり,癌の実体を理解したいと考える癌研究者の夢であった.
(中略)
本稿では,最近のゲノムアレイの開発動向と癌研究への応用について概説し,今後の展望について論じたい.
・〈協賛記事〉クロマチン免疫沈降−DNAチップ(ChIP-on-chip)法を用いたTh2細胞分化機構の解析
  山下政克
ChIP-on-chip法は,クロマチン免疫沈降(ChIP)とDNAチップ(chip)の2つの解析法を組合わせることで,クロマチン修飾の変化や転写因子の結合を網羅的に検出することを可能にした新しい手法である.本稿では,アレルギーの病態に深く関与するT細胞サブセット,Th2細胞の分化機構の解析を例にし,ChIP-on-chip法の有用性を概説する.

【2 マイクロアレイ発現解析の新展開】

・網羅的発現情報解析を利用した癌の新規治療薬開発への戦略
  片桐豊雅,中村祐輔
DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現情報解析は,癌関連遺伝子の探索にきわめて有用である.同一臓器由来の多数の癌症例の発現解析を行うことで,多くの症例で共通に発現変動する遺伝子を同定することができ,さらにこれらの遺伝子産物を機能解析することで,新規抗癌剤の開発のための標的分子の同定が可能になる.このような癌特異的な分子を標的とした治療薬は,既存の抗癌剤とは異なり,より少ない副作用でより大きな効果を得る治療法を確立していくものと考えられる.本稿では,遺伝子発現情報解析による癌治療標的分子同定のための戦略を中心に述べる.
・エキソンアレイを用いた癌特異的スプライシングバリアントの探索
  佐藤礼子,山田哲司
Affymetrix社が開発したエキソンアレイでは,1枚のチップ上に全ゲノムのほぼすべてのエキソンに対応するプローブが配置されており,エキソンレベルでの発現変化をゲノム規模で解析できる.本稿ではエキソンアレイの概要とわれわれがこのアレイを用いて行った肝細胞癌での解析例を紹介する.

【3 医療での実用化を目指した応用】

・神経芽腫診断用発現チップの開発と実用化
  大平美紀,中川原 章
マイクロアレイ技術が開発されてから早くも10年以上が経過し,マイクロアレイは今や癌の遺伝子解析に不可欠な手法となった.ゲノム創薬につながる癌関連遺伝子の探索などスクリーニング的な用途もさることながら,近年は診断,個別化診療への応用までその可能性が広がりつつある.
(中略)
本稿では,マイクロアレイを用いた診断法開発におけるさまざまな課題を取りあげながら,代表的な小児癌である神経芽腫の予後診断チップの開発についてわれわれの取り組みをご紹介する.
・食道癌化学放射線感受性予測チップの開発と実用化に向けた取り組み
  嶋田 裕,辻本豪三,信正 均,藤元治朗
われわれは,治療モダリティーに大きな差がある治療法(化学放射線療法と手術)の治療前選択を可能とするために,マイクロアレイの臨床導入を目指している.そのために,遺伝子増幅なしに治療前生検標本での解析を可能とする高感度チップの開発を行った.このチップが完成したことから,現在は多施設共同研究により治療効果を予測する標的遺伝子の同定を行っている.本稿では,なぜマイクロアレイ解析を食道癌で導入する必要があるのかを明らかにし,その解決のためにこれまでに行ってきた実用化への取り組みについて概説する.

【4 アレイプラットフォームで展開する新技術】

・マイクロRNAのハイスループット解析
  間野博行
マイクロRNA(microRNA: miRNA)は20〜24塩基からなる低分子量RNAであり,標的メッセンジャーRNAの3′非翻訳領域に結合し,その翻訳を抑制すると考えられている.数多くのヒトの疾患発症にmiRNA異常が関与すると予想されており,ハイスループットにmiRNAの発現プロファイルを決定する手法が現在数多く開発されつつある.
・〈協賛記事〉新世代のフォーカストアレイ「Genopal®(ジェノパール®)」
  三菱レイヨン株式会社
「フォーカストアレイ」とは,絞り込まれた遺伝子を高精度に解析できるマイクロアレイのことであり,診断用途や,それを目指した実用化研究に不可欠である.三菱レイヨンが独自に開発した“ジェノパール®”は,キャプチャープローブが高含水ゲル中に3次元的に広がった状態で固定された新しいタイプのDNAチップであり,「フォーカストアレイ」としての優れた特徴を備えている.ジェノパール®の特徴を中心に,マイクロRNA解析への応用例を併せて概説する.
・〈協賛記事〉高分子多孔質メンブレンを用いた核酸抽出技術の開発とマイクロアレイ解析への活用
  富士フイルム株式会社
近年のマイクロアレイ技術の進歩と創薬,診断技術の発展に伴い,検体の前処理工程として必要不可欠である核酸抽出工程の迅速化,簡便化,自動化に対する要求もますます高まっております.本稿では,富士フイルム株式会社が開発いたしました核酸抽出技術についてご紹介させていただきます.本技術には独自の高分子多孔質メンブレンを用いており,生体試料から目的の核酸を迅速,簡便かつ高純度・高収量で抽出することが可能です.

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