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遺伝子ドーピングとその検査:リキッドバイオプシーの応用を主にその社会的側面も含めて

竹越一博
Kazuhiro Takekoshi:Laboratory/Sports medicine, Division of Clinical Medicine, Faculty of Medicine, University of Tsukuba(筑波大学 医学医療系 臨床検査/スポーツ医学研究室)
10.18958/6619-00002-0000945-00

「遺伝子ドーピング」は,遺伝子編集技術の登場により実用化が非常に懸念されている.遺伝子ドーピングとは具体的には治療を目的としない競技力のエンハンスメント目的の「体細胞変異の導入」である.したがって,体細胞操作を行った組織にのみ「ベクターおよび外因性遺伝子」が限局して発現し,血液や尿からは検出が不可能とされる.当然,アスリートから遺伝子検査目的で筋はじめ各種組織生検を行うことは,侵襲性が高く事実上不可能である.われわれはこの問題点を克服するいくつかの方法を提唱して研究を進めている.特に,がんゲノム研究で利用されている血中cell free DNA(cfDNA)を用いる体細胞変異の非侵襲的検出技術「リキッドバイオプシー」の応用はきわめて有用と思われる.ただし,「遺伝子ドーピングそのもの」と「その検出法の開発」は,さまざまな倫理的な問題を内包しており,社会的な側面からの理解も必須である.つまり,単に検査法を開発すればすむ問題ではなく,実装に至る前にスポーツ倫理をはじめとする学際的な議論が必要であることを強調したい.

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