質量分析計 MS

分析する試料をイオン化させて導入し,電気力や磁気力により質量ごとの差をつくり,イオンの質量を分析する装置が質量分析計(MSと略す)である.イオンは,純粋な質量としてではなく,質量数(イオンの質量)/電荷数(イオンの価数)=m/zに従って分離され,各イオンの相対強度として測定される.分子質量の測定精度は厳密であり,10のマイナス4〜5乗に達する.また,装置を構成するイオン化源,質量分析部,検出器の種類とその組合せから,MALDI-TOF/MS など多くの質量分析計が存在する.

イオントラップ型MS:軽量小型で比較的安価なMS.真空空間内にイオンを閉じ込めて(トラップして),高周波電圧を走査してイオンを順次追い出して検出するMS.1つのトラップでMS/MSが可能で,かつ感度が高い.欠点としては分解能が低く,定量には不向き.

Q-TOF型MS:四重極(Quadrupole)型MSと飛行時間(Time-of-flight)型MSを直列につないだMS/MS装置.最初のQ-MSで特定のイオンを選択して,それを衝突室で希ガスによって壊した後,生成したイオンをTOF/MSで分析する.分解能が高く,MS/MSでの感度も高い.

FT-ICR/MS:フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析の略で,超伝導磁石によって発生させた一様な強磁場中に置かれた励起電極に高周波数を走査することでイオンにエネルギーを与えて,検出電極に流れる誘導電流信号をフーリエ変換してイオンを測定するMS.分解能がきわめて高く精度も高い.しかし高い真空度や超伝導磁石が必要,定量性がない,積算時間を多くする必要があるなどの欠点もある.

ペアレントイオンスキャン法:1つのイオンから別のイオンが生じるときの元イオンをペアレントイオン(親イオン)と言う.最近ではプレカーサーイオン(前駆イオン)という呼び名が使われるようになってきている.ペアレント(プレカーサー)イオンスキャン法とは,特定のフラグメント(プロダクト)イオンを生じるすべての元イオンを検出する方法.

内部標準物質:測定前,あるいは前処理操作前に試料に加えられて,試料とともに測定されて,試料の質量測定や定量分析の標準(基準)となる物質のこと.一般にMSでは1回ごとの測定ばらつきが大きいので,それを補正するための内部標準物質が必要.

バイオテクノロジージャーナル 2005年11-12月号 Vol.5 No.6

参考書籍

  • [SHARE]
  • Send to Facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

バイオキーワード集:索引


A B C D E
F G H I J
K L M N O
P Q R S T
U V W X Y
Z        
数字 その他