画像診断Q&A

レジデントノート 2018年5月号掲載
【解答・解説】腹痛と発熱をきたし搬送された高齢女性

Answer

気腫性膀胱炎

  • A1:膀胱壁内や膀胱内腔に限局したガス貯留を認める(図13).腹腔内には遊離ガスは認めず,腹水も認めない(図2).
  • A2 :各種培養(血液培養2セット,尿培養),検鏡(グラム染色)検体取得の後,直ちに抗菌薬治療を開始する.尿バルーン留置による排尿を行う.

解説

気腫性膀胱炎は,膀胱の細菌感染によりグルコースから産生されたガス(二酸化炭素)が膀胱壁内や膀胱内腔に貯留する比較的稀な尿路感染症である.気腫性膀胱炎の発症リスクとして,糖尿病,女性,アルコール多飲,難治性尿路感染症,神経因性膀胱,下部尿路狭窄などがあげられる.最も主要なリスク因子は糖尿病であるといわれており,気腫性膀胱炎の60~70%が糖尿病罹患患者であると報告されている.また男性:女性=1:1.8と女性に多く,ほとんどの患者が60歳以上の高齢者である.本症例は糖尿病の既往がある高齢女性であり,典型的な症例といえる.

気腫性膀胱炎の臨床症状としては腹痛が最も多く,次いで尿閉,嘔気・嘔吐,発熱,血尿,排尿障害,意識障害などが報告される.腹膜刺激兆候を認めることもあり,腹膜炎の合併や腹膜炎との鑑別が重要になる.

本症例では膀胱周囲に限局したガス像を認め(図13),腹腔内には遊離ガスを認めない(図2).消化管穿孔による腹膜炎であれば膀胱周囲以外にも遊離ガスを認めるが,本症例では膀胱内,膀胱壁に限局している.

気腫性膀胱炎の治療は,適切な抗菌薬使用と,尿バルーン留置による排尿がまず行われる.90%の症例は保存的加療で治癒しうるが,10%の症例では膀胱摘出などの外科的処置が必要となる.膀胱造影や造影CTを行い,造影剤の漏出がなければ膀胱破裂や膀胱結腸瘻は否定的である.膀胱鏡により膀胱壁の気腫性変化を鏡検するのも参考所見となる.

気腫性膀胱炎の主な起因菌はEscherichia coli(約60~70%)とKlebsiella pneumonia(約20%)である.基本的には通常の尿路感染症と同等の抗菌薬選択でよいが,敗血症などで集中治療管理が必要な場合には,緑膿菌,ESBL(extended spectrum β lactamase:基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌やMRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)をカバーできるようにカルバペネム系抗菌薬と抗MRSA薬の併用が必要となる.広域抗菌薬を使用する場合はデ・エスカレーションを行う.

糖尿病が基礎疾患にある場合は適切な血糖管理も必要である.高齢化および糖尿病罹患率が増加している近年においては,気腫性膀胱炎は注目すべき疾患の1つといえるであろう.

図1
図2
図3
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文献

  1. Grupper M, et al:Emphysematous cystitis: illustrative case report and review of the literature. Medicine (Baltimore), 86:47-53, 2007
  2. Thomas AA, et al:Emphysematous cystitis: a review of 135 cases. BJU Int, 100:17-20, 2007

プロフィール

安原大貴(Hirotaka Yasuhara)
岡山大学病院 卒後臨床研修センター
内藤宏道(Hiromichi Naito)
岡山大学病院 高度救命救急センター
中尾篤典(Atsunori Nakao)
岡山大学病院 高度救命救急センター
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