画像診断Q&A

レジデントノート 2018年12月号掲載
【解答・解説】突然の心窩部痛で受診した50歳代男性

ある1年目の研修医の診断

単純CTで明らかな異常はなさそうなので,鎮痛薬を処方して帰宅していただきます.

Answer

孤立性腹腔動脈解離

  • A1 :腹部単純CTでは上腸間膜動脈(図1B)と比較して,腹腔動脈(図1A)が拡張しており,高吸収を呈している.周囲脂肪織には軽度の濃度上昇を認める.
  • A2 :腹部造影CTを行い,解離の範囲と臓器虚血の有無をチェックする.
  • A3 :治療選択肢として保存的治療,血管内治療,外科治療が考えられる.本症例では保存的治療が選択され,侵襲的治療は必要なかった.

解説

孤立性内臓動脈解離は大動脈解離を伴わない孤立性の内臓動脈の解離をいう.腹腔動脈,上腸間膜動脈に好発し,突然の激しい腹痛,背部痛で発症するが,通常は腹部診察で腹膜刺激症状を認めない.9割は男性に発症し,発症平均年齢は55歳である.高血圧,糖尿病および喫煙が危険因子とされる.大動脈解離とは異なりD-dimer上昇は孤立性内臓動脈解離の9例中2例でのみしか認められなかったと報告されており,診断的価値は乏しい1).診断および経過観察にはCTが有用であり,単純CTでは血管径拡大,血栓化された偽腔,周囲脂肪織の濃度上昇,造影CTではintimal flap(図2が認められるが,単純CTのみでは異常を捉えられないこともある.症状や診察および単純CTで本疾患を疑った際には,造影CTで診断を確定し,解離の進展範囲や臓器虚血の有無を評価する.超音波検査は簡便に施行可能な放射線被曝を伴わないモダリティであり,内臓動脈本幹のintimal flapや血栓化した偽腔を認めることもあるが,臓器虚血の評価は難しい.

稀ながら,内腔の閉鎖による臓器虚血,偽腔拡大による瘤状拡張や破裂をきたし,致死的な場合があり,ときに血管内治療や外科治療を要するが,ほとんどの孤立性内臓動脈解離において保存的治療が有効であり,2年以内に解離腔のリモデリングが認められたと報告されている2).保存的治療を選択した場合は,腹部症状や造影CTで解離血管の形態や臓器虚血の有無を注意深くフォローする必要がある.1週間程度で解離血管の進行が認められることが多いと報告されており,発症から1週間後をめどに造影CTでのフォローが勧められている1)

本症例では突然発症の強い腹痛から血管病変による痛みが疑われ,造影CTで診断が確定された.突然発症の強い腹痛において単純CTで症状を説明しうる所見を指摘できない場合は,血管病変を疑い造影CTを行う必要がある.

図1
図2

図2の腹部造影CT(動脈相)の連続画像は以下の画像をクリックするとご覧になれます.

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引用文献

  1. 水 大介,他:孤立性内臓動脈解離9症例の検討.日救急医会誌,25:710-716,2014
  2. Li S, et al:Effectiveness of the Conservative Therapy for Symptomatic Isolated Celiac Artery Dissection. Cardiovasc Intervent Radiol, 40:994-1002, 2017

プロフィール

井上明星(Akitoshi Inoue)
東近江総合医療センター 放射線科
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