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最新号(8月20日発行)
2007年9-10月号 (Vol.7 No.5) 定価 2,625円(税込)
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科学する物語・空想する科学瀬名秀明
第5回 皮膚は少女の唇を憶えている【2026年,台場】光の消え失せた巨大な球体がようやく視野に入る.事故で両脚を失ってからも,勇樹は電車を乗り継ぎ何度もここへ来た.ジオコスモスが灯すLEDの光は深海の藍へ,熱帯の深紅へと色を変え,それは地球の体温のようにさえ見えたのだ.しかしいまはガラス窓も崩れ落ち,夏の強い陽射しの中に晒されている. 薄く煙が立ち上るのが見え,勇樹は驚いて歩を進めた.ジオコスモスの下でふたりの少女が焚き火をして笑い合っている.その声が鈴のような和音をつくった. ★☆★☆★☆(中略) カリフォルニア大学のデイヴィッド・ジュリアス教授らは,体性感覚にかかわる神経システムの研究で何度も学術誌の表紙を飾ってきた.彼らは表皮に伸びるc線維という末梢神経の受容体TRPV1が温感をセンシングし,唐辛子の成分にも反応することを見出している.そして今度はメントールに反応する受容体TRPM8が冷感の主センサであることも示してみせた.鎮痛効果への応用も期待できる.これらTRPファミリーはイオンチャンネルであり,温度や湿度,圧力のセンサとして働く.角質が垢として落ちてゆくごとに,私たちは新鮮なセンサを肌に蘇らせ続けているのだ. ※これまでの掲載内容はこちらをご覧下さい |
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