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最新号(8月18日発行)
2006年9-10月号
(Vol.6 No.5)
定価 2,625円(税込)
バイテクノロジージャーナル最新号詳細

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目次
特集
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■ コラム&レポート
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特集
研究・診断・治療・ヘルスケアに展開するDDS
遺伝子導入・薬剤キャリアの基盤技術
企画/田畑泰彦(京都大学再生医科学研究所)

・<概論>DDSは生物医学研究,医療,ヘルスケアのための基盤テクノロジー
  田畑泰彦
私たちは病気の治療を目的として,薬を服用する.しかしながら,実際には,体内に入った治療薬のほんの一部しかその作用部位に到達していない.ほとんどは何もしないままに排泄されたり,悪いことには,しばしば正常細胞に作用して副作用の原因となる.そこで,理想的な薬の投与方法は,その薬分子を必要な細胞にのみ必要な量だけ必要な時に送り込むことである.
(中略)
DDSとは,生物活性をもつ物質の動きをコントロールすることによって,その作用部位に望ましい濃度−時間パターンのもとに選択的に送り込み,結果として,最高の生物効果を得ることを目的とした,物質の送達に関する一般概念である.体外,体内に関係なく,不安定かつ作用部位の特異性もないdrug(物質)の動きをコントロールし,生物医学効果を発揮させるための材料・技術・方法論がDDSであると考えれば,DDSが生物医学研究と医療の基盤テクノロジーであることがわかるであろう.
・ウイルス機能を基盤とするDDSキャリアーの開発と応用
  吉川友章,岡田直貴,中川晋作
近年,遺伝子やタンパク質を医薬品として投与することにより,癌やウイルス感染症といった難治性疾患を治療しようとする先端医療が注目されている.これらの治療法を,副作用が少なく,有効性の高い理想的な治療法として確立するためには,遺伝子やタンパク質を「必要な時に,必要な部位へ,必要な量だけ送達する」ための革新的DDS技術の開発が必須である.本稿では,われわれが展開するウイルスの細胞内侵入機構を巧みに利用した遺伝子・タンパク質用DDSキャリアー(ベクター)の創出と疾病治療への応用について紹介する.
・遺伝子導入研究に役立つDDS
  山本雅哉,田畑泰彦
細胞への遺伝子導入とその発現には,細胞膜を透過させた後,遺伝子を核などの目的の細胞小器官へ送達し,機能させる必要がある.本稿では,ウイルスを用いない遺伝子導入法として,非ウイルス性遺伝子キャリアと物理刺激やバイオリアクタなどの技術とを組み合わせた,遺伝子の動態と機能制御のためのドラッグデリバリーシステムについて概説する.
・遺伝子治療に役立つDDS
  金田安史
みるみる増やすコツとPCR産物の多彩な活用法
・生体内分解吸収性マイクロスフェアの開発 〜難治性炎症性腸疾患治療に役立つDDS
  仲瀬裕志,千葉 勉
生体内分解吸収可能なマイクロスフェアは,非酵素的な加水分解を受ける高分子であり,生体内に蓄積することはなく,DDSのコンテナーとして好ましいといえる.また,マイクロスフェアの表面荷電,および大きさを変えることにより,マクロファージをはじめとする免疫担当細胞をターゲットとすることが可能である.このマイクロスフェアに,ステロイド剤の1種であるデキサメサゾンを含有させ,粘膜固有層に存在するマクロファージをはじめとする免疫担当細胞をターゲットとした治療効果を,実験大腸炎モデルマウスに投与することで検討した.デキサメサゾンの単独投与に比べて,マイクロスフェアによるDDSを用いた治療群において,腸炎の抑制効果が有意に強いことが示された.現在,ヒト潰瘍性大腸炎患者に対する臨床治験を施行中である.
・再生医療に役立つDDS〜より一層の安全性・有効性をめざして
  丸井 晃,米田正始
ドナー不足が未解決の臓器移植に代わる医療として,自己組織の機能回復を図ることにより臓器再生を促す再生医療が近年脚光を浴びている.再生医療は主として遺伝子治療および細胞移植治療にて行われているが,遺伝材料の安全性や目的臓器以外での遺伝情報の発現,また移植細胞を採取する際の患者への侵襲,移植細胞の適否などの問題が指摘されている.われわれはこれらとは別のアプローチとして,生体吸収性材料による細胞増殖因子タンパクのDDSを心臓外科領域の再生医療に応用し,すぐれた効果をあげている.
・画像診断へのDDSの利用
  佐治英郎
ポジトロンCT(PET)をはじめとする核医学画像診断法は,体外から投与された放射性化合物(放射性医薬品)の体内動態を体外検出して画像化するものであり,高い標的/非標的(S/N)比を得るため,放射性医薬品に対して特定の生体分子と特異的に相互作用して標的部位に高く集積するとともに,周辺組織への集積を低くすることが要求される.そこで,この目的に合うように化合物の体内動態を化学制御するために,DDSの考えに基づいた種々の手法などが開発されている.
・皮膚再生と経皮吸収に役立つDDS 〜バイオミメティックスによるNANOCUBE(TM) SYSTEMの開発
  山口葉子,五十嵐理慧
最近の化粧品産業において,画期的な新製品の開発が少ないという傾向が続いている.これからは研究開発のあり方を見直し,独創性に富み,消費者満足度に応えた,高機能・高品質の化粧品の開発が急務と考えられる.われわれの研究室では,新しいものを創造するコンセプト創造型テクノロジーの1つとして,バイオミメティックテクノロジーから生まれたNANOCUBE(TM)SYSTEMの研究を行っている.本稿では,このシステムによる皮膚再生と化粧品への応用,さらに従来にはなかった新しい薬物の経皮吸収法を紹介したい.

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