ペプチドを対象とした質量分析では,そのアミノ酸配列をより高い精度で同定するため,タンデム質量分析(MS/MS)が行われる.すなわち,一段目のMSで質量を得たプリカーサーイオンをアミノ酸レベルで部分的に分解し,生じたプロダクトイオンの質量もモニターする.この分解過程には,従来,イオンと不活性ガスとの衝突を利用したCIDという方法が用いられてきた.最近になって,よりマイルドな条件で化学的に分解させるETDという方法も開発されている.これらのプロダクトイオンの分解パターンをモニターすることで,アミノ酸の配列情報まで得られることになる.一方,アミノ酸の理論質量とプロダクトイオンの差分から,どのアミノ酸上に修飾基が導入されているかも特定できる.