レジデントノート:血液浄化療法 1からわかりやすく教えます〜研修医が知っておくべき基本的な原理やしくみ、CHDFを軸にして理解しよう!
レジデントノート 2020年3月号 Vol.21 No.18

血液浄化療法 1からわかりやすく教えます

研修医が知っておくべき基本的な原理やしくみ、CHDFを軸にして理解しよう!

  • 中村謙介/編
  • 2020年02月10日発行
  • B5判
  • 162ページ
  • ISBN 978-4-7581-1640-4
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

中村謙介
(日立総合病院 救急集中治療科)

血液浄化療法のロマン

透析,特にICUで行われる急性血液浄化療法は,体外循環という点を含めて研修医の皆には「すごい!」治療として目に映るのではないかと思います.まさに自分も研修医の時分に,はじめて受けもちの急性腎不全患者をICUに入室させた際,回路の成り立ちや原理もよくわからず「すごい!」と感じました.救急集中治療の先生が見事に24時間持続で行う透析であるCHDF(continuous hemodiafiltration:持続血液濾過透析)を導入し適確に腎不全を管理する姿を見てさらに「すごい」と感動し,自分もそうなりたいと一生懸命勉強しました.

まさに血液浄化療法にロマンを感じ,救急集中治療の世界に飛び込んだのが自分のルーツです.このような救急集中治療医や腎臓内科医は少なからず存在しますし,同じ感覚をもつ研修医も多いのではないかと思います.そしてこのロマンは,「急性血液浄化療法で予後を改善できるのか」や「急性血液浄化療法で腎障害を軽減させることができるのか」といったテーマへと続きます.これらは,今まさに研究が行われているテーマではありますが,一方でエビデンスがはっきりしないせいで研修医の先生を悩ませてしまう原因の1つとなっています.ちなみに,ここでロマンという言葉を用いているのは夢の域を出ない点があるからです.

(すべての治療がそうですが)血液浄化療法は確固たる意義あるいはエビデンスがある運用とロマンの範疇の運用にわけることができます.

  1. 機序から確固たる意義があるもの
    • 例:高カリウム血症の患者に血液浄化を導入する
  2. エビデンスをもって推奨されるもの
    • 例:不要に濾過流量を上げない
  3. ロマンの範疇を出ないもの
    • 例:サイトカイン吸着を目的としたCHDF導入

ここで③ロマンの範疇を出ないものは切り捨てるべきかというと,急性期でも慢性期でもばっさりと切り捨てるわけにはいきません.特に急性期の救命にかかわる部分では「やらなければ患者は確実に死んでしまう(やれば助かるかもしれない)」という場合があるので,③と承知で導入する治療もあります.また慢性期でも,すべてのプラクティスがエビデンスとして検証されているわけではないので患者ごとに試行錯誤しなくてはいけない(例えばCrがいくらで維持透析導入するかや腹膜透析を行うかなど)ものがあります.結局のところ,①②③を整理し意義を理解して運用することが大切です.血液浄化療法は生死にかかわる要素が強いため③の場合が多く,研修医が「どういうときに血液浄化するのかいまいちわからない」となるのはそのためです.

ちなみに私が勤務する日立総合病院 救命救急センター・ICUは,腎障害のあるときしか血液浄化療法は導入しませんが,年間の血液浄化療法件数も多く,後述するearly initiation〔「急性血液浄化療法の適応と導入のタイミング」(pp.3227〜3233)参照〕も実施しますし,PMMA膜やAN69ST膜なども使用しています.エビデンスを勉強したうえで血液浄化の利点を最大限に活かそうとよく考えて導入することが大切で,担当医が十分に考えて導入するならそれを応援する体制をとっています.本特集も同じようにエビデンスがないものを推奨することはできませんので,③に該当するものはズバリ微妙と解説しました.

救急集中治療のCHDFから血液浄化療法全体を勉強しよう ~すべての血液浄化療法の基本はCHDFにある!~

一方で,原理や仕組みだけとっても血液浄化療法は腎臓内科医以外には非常にとっつきにくいものでした.理由はわかりやすい教科書がない(なかった)からです.私も勉強すべきことが多く,わかりやすい順序でかみ砕いて説明してくれる本に巡り会うことができなかったため苦労しました.

そのような背景で自分が若手にレクチャーするなかで,「CHDFを軸にして血液浄化を勉強する」という独自の教え方が非常に理解されやすいことがわかりました.まずは落ち着いた状況で実施する間欠透析からと考えるのが普通ですが,実はすべての血液浄化療法の基本はCHDFに集約されています.本特集も同様に救急集中治療領域のCHDFを軸にして血液浄化を解説していきたいと思います.いきなりCHDF? というのはそのためなのでだまされたと思ってお付き合いください.実際に救急集中治療医は間欠透析や維持透析も取り扱い,透析関連のsubspecialityをもっている人も多いのです.

血液浄化療法に関連する名称・用語の混乱

こちらも大変申しわけない限りですが,同じ手法や設定を指すのに言い回しが機器メーカーごと,あるいは国内外などで違うということがかなりあります.新たに勉強する人の混乱のもとにもなっているので,本特集でもなるべく統一して解説するように心がけました.学会として掲げている名称・用語の詳細は日本急性血液浄化学会ホームページ(http://jsbpcc.umin.jp/glossary/)などをご参照ください.

本特集では実臨床で使用されていることが多い用語を優先しています.例えば学術的には持続血液浄化はcontinuous renal replacement therapy(CRRT),通常の透析はintermittent replacement therapy(IRRT)とすることが多いですが,救急や集中治療の現場ではそれぞれcontinuous hemodialysis and filtration(CHDF),hemodialysis(HD)と呼ぶことが多いのでこちらで解説しています(それでも用途によって多少言い回しが変わる箇所があることをお許しください).

最後に,今回のレジデントノートの特集は私はじめ日立総合病院の救急集中治療科の面々で完成させた「レジデントノートthe HITACHI」です.本特集から血液浄化療法の理解とともに,自分が研修医のころに得た感動のように急性血液浄化療法の魅力を感じていただくことができれば幸いです.

Inspire the Next!

著者プロフィール

中村謙介 Kensuke Nakamura
日立総合病院 救急集中治療科
救急,集中治療,総合内科,栄養,リハビリ,筋肉
救急だけでなく集中治療もすごくおもしろい! ということをぜひ皆さんに知ってほしいです.人工呼吸器といい体外循環といい循環モニタリングといい,パッと見難しそうですがきっとはまっていただけると思います.

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